糖尿病ネットワーク
「足病変と闘う現場から」
足病変との闘い——。そこには患者さんのパートナーとなる足病変治療や療養指導の達人たちの熱いサポートが欠かせません。彼らはなぜ“救肢”を志したのでしょうか。このコーナーでは、それぞれの専門分野から足に挑んでいるエキスパート達によるコラムを紹介します。
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「足病変と闘う現場から」 ▶

10. 東京西徳洲会病院と訪問診療所との連携で救命・救肢

東京西徳洲会病院 形成外科
寺部雄太

 “足病変”と聞くと、外反母趾や偏平足、凹足などの足部変形を主に思い浮かべる方が多いのではないかと思います。一般的にはそれが通常ですが、我々が診療しているのは、近年増加の一途を辿っている糖尿病や下肢末梢動脈疾患などによる足病変(糖尿病足潰瘍や重症下肢虚血)です。

 私は埼玉医科大学病院形成外科で、糖尿病足病変や重症下肢虚血による足病変を担当し、形成外科医として働き始めてからほとんどの研鑽をこの病変に費やしたこともあり、この分野の専門的な経験を積むことができました。この経験を活かし、縁あって2017年より東京西徳洲会病院への勤務と相成りました。

 当院は、徳洲会の理念のもと24時間体制で患者さんを受け入れており、足病変の患者さんの緊急も多数対応しております。これ自体は素晴らしいことでありますが、やはり早期発見に至らず足切断を行うことにより、救命をしている方が多いのも実情です。

 実際、足病変がある方は比較的高齢の方も多く、通院が困難な方が多いのが現実です。早期発見しても病院に来られず、ようやく来院した際には救急車で運ばれてくることも少なくありません。これではいくら専門的に治療をすることができても、切断がやむを得ない場合もあります。

 さて、当院は本コーナーにもご執筆されている木下幹雄先生が勤務していた病院ですが、先生は現状の足病変の治療を変革させたいと、2017年4月よりTOWN訪問診療所を開設しました。訪問診療により早期発見および在宅での創傷治療を行い、当院を含め多くの病院と連携をとることで、足の切断を防ぐ新たな救肢活動に挑戦されているのです。

 今回、当院とTOWN訪問診療所との連携で救命および救肢できたAcute on chronic arterial thrombus(慢性動脈閉塞が急に閉塞した病態)の一例を紹介します。

 頚椎損傷で両上肢の不全麻痺、両下肢の完全麻痺の患者さん。前医に入院中、足部に点滴を入れており、そこが漏れてしまい潰瘍が出現しました。その際にそのまま自宅退院となり、TOWN訪問診療所が往診で診察しておりました。血流は保たれていましたが(皮膚灌流圧で十分な値)、足部は深い組織損傷で感染を伴っていたため、最小限のデブリードマンを訪問診療で施行。その結果、感染は治りました。しかしその数週間後デブリードマン施行部の周囲組織の治癒が止まり、再度皮膚灌流圧を測定すると低値が出ました。血管閉塞が起こったと判断し、即時に当方に連絡をもらい緊急入院となりました。

 入院後の検査で、腰の部分から大腿部分の血管(腸骨動脈から大腿動脈)に閉塞があり、わき道(側副血行路)から足部に血流がなんとか流れている状態でした。一方で血液検査では肝機能や腎機能がかなり増悪していました。つまり、急性動脈閉塞ではなく、慢性動脈閉塞中に急に動脈が閉塞した病態と考えられました。このような症例ではよくありますが、症状が緩徐に進行するぶん自覚症状が乏しく、発見が遅れることが多くなります。本例も同様で患者さん本人は比較的元気でしたので、訪問診療で早期に発見できたことで事なきを得ました。まさに救肢および救命を図れた状態でした。

 一般的に、下肢急性動脈閉塞の場合であれば緊急な処置が迫られますが、最近の急性動脈閉塞と言われる病態には、今回のようなAcute on chronic arterial thrombus が多く見受けられます。我々のところに急性動脈閉塞と言われて受診もしくは紹介された時点で、発症から数週間、場合によっては数カ月経過している場合も珍しくありません。これはAcute on chronic arterial thrombusだろうと判断され、一体これまでどうしていたのかという思いと、もう少し早く来てくれれば!という思いが交差します。

 Acute on chronic arterial thrombusの場合は、閉塞する前に高度の動脈硬化により血管狭窄が起こっています。そのため側副血行路の発達が促されます。その後急に閉塞するため、血行は微量ながら保たれます。症状が緩徐に増悪するため、一見重症度が低い印象に見えますが、実際は壊死の進行と毒素が徐々に回り、全身状態が悪化していきます。全身状態の悪化した状態で発見された際には、救肢より救命を選択せざるを得なくなることも多くなります。

本例を含め、動けない患者さんや足を痛めたことで動くことができない患者さんは数多くいると予想されます。訪問診療医の早急な判断で救命どころか救肢も得られることを経験し、今後、この新しい足病変の医療連携を発展させていくことが、新たな医療体制の構築につながると感じました。

 多くの足病変の患者さんを年間外来で診ておりますが、まだまだ足りないところがあることを知り、それをここ東京西徳洲会病院で新たな医療体制を築き、全国の患者さんにその恩恵を届けられるようにできればと願っております。

(2017年08月)

Act Against Amputation
-なくそう、下肢切断-

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Faculty Member/Clinical Reporter
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