
当コーナーでは、足病治療やフットケアに積極的に取り組む医療従事者からの投稿をご紹介しております。
皆さまの足への想い、忘れられないエピソードなどをご投稿ください!
東京都済生会中央病院 看護師
高梨 未央
私が足を好きになったのは、高校2年の夏休みに1日看護体験で患者さんの足浴をさせて頂き、「気持ちがいい、足がきれいになってうれしい」という患者さんの笑顔を見られた時です。看護学生の実習時、看護計画にはいつも足浴を入れていました。足浴を行うことで患者さんは笑顔になり、時に辛い胸の内を話してくれたりとコミュニケーションを図るのに有効なケアでした。
看護師5年目、院内褥瘡対策チームの一員となり、被覆材の秘めた力、看護ケアで改善してく褥瘡、予防ケアの実施で褥瘡の発生を減らせることに魅力と喜びを感じていました。
ある日の回診時、“圧迫のないところにできた足の傷”に出会いました。一緒に回診をしていた企業看護師(WOC)に、褥瘡ではなく静脈性潰瘍だと教えてもらい、「静脈性潰瘍と動脈性潰瘍」を取り上げた看護雑誌のコピーをもらいました(今もそのコピーは大切に保管しています)。それを読み、足の奥深さに取りつかれていきました。
その頃から、足の傷の依頼が増え、多くは糖尿病・透析患者でした。
今まで勉強してきた褥瘡ケアではよくならないどころか悪化していく、中には足を失う人もいました。なぜだろうという思いを抱えながら、今から10年前、透析室へ異動しました。
異動後、片足のない患者さんと出会いました。体重管理があまりよくなく、口数も少なく、透析の勉強が追い付いていない私は、なかなか話をすることができませんでしたが、帰宅時にいつも片手を挙げて「ありがと」と言うのが印象的でした。数カ月後、その患者さんは反対側の足も失いました。そして両足を失ってから数カ月後、透析に来ませんでした。自宅で亡くなっていたのです。
その後、病棟所属の時から関わりのあった透析患者さんが、足に低温火傷をしました。日に日に傷は悪化し、痛みに耐えながら透析を行い、とうとう足を切断することになりました。足を切断したことで、今まで住んでいた家で生活ができなくなり、引越しを余儀なくされ、旦那さん一人の介助では生活が困難になりました。足1本が本人の生活だけでなく、周りの生活をも変えてしまうことを目の当たりしました。その患者さんの死後、ご自宅を訪問させて頂く機会があり、旦那さんから足切断後の生活を聞きました。透析室で見ていた以上に壮絶で、改めて足の大切さを痛感しました。
そんな時、湘南鎌倉総合病院・小林修三先生の『透析患者の末梢動脈疾患とフットケア』(医薬ジャーナル社刊)という本に出会い、今では当たり前の治療になっていますが、傷が治るには十分な血流が必要であること、多くの職種がチームを組んで行うことが理想であることを知りました。
そして、日本フットケア学会を知り入会しました。フットケア指導士の資格取得を目標に、認定セミナーに応募しましたが、第1・2回共にはずれ、3度目の正直で第3回の認定セミナーに行くことができ、無事資格を取得することができました。
昨年、透析患者の足病予防に加算が新設され、フットケアに注目が集まっています。しかし、まだ十分な数の施設で行われているとは言えず、施設内でフットケアに対して温度差があるのが現状です。
一人でも多くの患者がいつまでも自分の足で透析に通院してほしい。その思いを胸に、学会中に開催される「フットケア指導士交流会」から始まった全国の指導士仲間と同じ思いや悩み共有し、明日への活力にしています。
(2017年08月)