糖尿病ネットワーク

当コーナーでは、足病治療やフットケアに積極的に取り組む医療従事者からの投稿をご紹介しております。
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リレーコラム「つなごう、足への想い。」 ▶

7. 私のフットケア人生を支えてくれた患者さんへ

朋優会 三木山陽病院 看護師
白石 夕起子

 私がフットケアを始めたのは2000年の4月に透析室に配属された時からでした。当時、フットケアという言葉はまだ広く認識されておらず、私も初めて聞く言葉でした。先輩から「最近、透析患者さんが足を切断することが結構あるから、フットケアチームというのを作ってん。今、メンバー募集中やねん。」という言葉を聞き一緒に活動することになったのが始まりでした。

 しかし、フットケアといってもフットケアや足病変についての知識はほどんどなく、また詳しく指導してくれる人も周りにおらず、分からないながらも先輩と本を見ながら足の動脈触知や観察、爪切りを行っていました。そんな時、70歳代の糖尿病の男性患者Aさんが「白石さん、最近、巻き爪が痛いんやけどちょっと見てくれへん?」と言われました。Aさんの足をみると、左の第1趾の爪が、指に食い込み赤くなっていました。「爪のことやったら皮膚科で診てもらったほうがいいですよ。」と伝えるとAさんは皮膚科を受診し、爪が食い込んでいる部分を爪母から切除するという手術をしてこられました。

 術後、しばらくは透析室で爪の傷の処置を続けていましたが、一向に良くなる気配はなく、とうとうMRSAを検出し傷は悪化、左下腿を切断することになってしまいました。その後、右足趾も暗赤色になり、壊疽になって切断。Aさんは両足を失ってしまいました。

 これが、私にとって初めて下肢切断を目の当たりにした経験でした。私は「(足病変についての)十分な知識もないまま安易な気持ちで皮膚科受診を勧めてしまった。私のせいで切断した、何もできなかった、、」と自分を責めました。私自身、足を切断するということは、まだどこか遠い話のように思っており、まさか自分の目の前の患者さんに、こんなにも簡単に起こってしまうものだとは思いもしていなかったのです。

 Aさんは両足を失ってからも明るく振舞い、車椅子で元気に透析に通院されていました。Aさんに私は「Aさんが足を切ったんは私のせいです。本当に申し訳ないです・・・。」と言うと、Aさんは「いやいや、あんたのせい違う。ワシが悪いんや。今まで好き勝手にしてきたせいや。」と仰ってくださいましたが、私はAさんの切断を絶対に無駄にはしてはいけないと強く思いました。

 それからというもの、『Aさんの切断を無駄にしてはいけない、もう二度と切断させてはいけない』とうい強い思いで、フットケアの啓蒙活動に励みました。専門書を何冊か買い、熟読し、そして患者さんに説明したり、指導したりしました。しかし、当時フットケアがまだまだ浸透されていない時代の中では、患者さんには、なかなか自分のこととして捉えてもらうことが難しく、足を見せてもらえない患者さんに「水虫かも?」と伝えると、怒りだす患者さんもおられました。知識的にも人としてもまだまだ未熟であった私は、伝えることの難しさも痛感しました。

 患者さんだけでなく看護師に対してもフットケアを浸透させるのは難しく、協力してもらえる仲間もだんだんと減り、私一人で患者さんの足観察する時もありました。当時、フットケアを透析業務の中に入れてもらうことが難しく、“時間があったらする仕事”という扱いで、ルーチン業務が終わってからでないとさせてもらうことは難しかったです。

 また血液透析(HD)の担当であった私は腹膜透析(CAPD)の患者さんにもフットケアを啓蒙したいと思い、CAPD外来がある日は早めに透析室に来て、自分の担当分のHD患者さんのプライミング作業を終えてから、一人でCAPD外来へ出向き、フットケア指導をしていました。そのような環境が長く続きましたが、やがて協力してくれる仲間が少しずつ増え、数人でもフットケアを継続させることができました。その施設には2006年までいたのですが、長年の啓蒙活動の結果、少しずつ患者さんの理解も得られるようになり、それまで足を見せてくれなかった患者さんも足を見せてくれるようになりました。

 そして現在勤めさせていただいている透析室でもフットケアを立ち上げることになり、ここでもフットケアが定着するまでには時間がかかりましたが、今では仲間に恵まれ、フットケアの啓蒙や毎月の観察、爪切りだけでなく、胼胝削りや下肢の血流管理、足病変の早期発見、早期処置、そして専門病院への迅速な紹介によって、いくつもの足を救うことができるようになりました。

 また昨年より、フットケアの知識や技術の向上、またフットケアの仲間づくりや連携施設のスタッフとの情報交換の場となればと思い、近隣の透析看護認定看護師さんや皮膚排泄認定看護師さんたちと共に「Hyogo透析フットケアカンファレンス」という会を立ち上げ、透析スタッフを対象にした勉強会やグループディスカッションによる事例検討会を年に2回開催しています。

 フットケアを始めて約18年、何度もくじけそうになり、断念してしまいそうになることもありましたが、私に下肢切断の重大さを身をもって教えてくださったAさんに報いたいという一心で、ここまで来ることができました。

 Aさんのおかげで、本当に多くの方の足を救うことができました。Aさんは、今はこの世にはおられませんが、私のこれまでの活動やその成果をきっとどこかで見守ってくれていると信じています。今の私があるのはAさんのおかげです。Aさん、本当にありがとうございました。そして、これからも多くの足を救えるよう、精進し頑張っていきたいと思います。

著者プロフィール

白石 夕起子 朋優会三木山陽病院看護師 ◀写真左側が白石さん

氏 名
白石 夕起子
職 業
看護師
所 属
朋優会 三木山陽病院
略 歴
1995年:神戸大学医療技術短期大学部卒業
2008年:神戸大学大学院 保健学研究科博士課程前期課程(療養支援看護学)入学
2010年:神戸大学大学院 保健学研究科博士課程前期課程(療養支援看護学)修了
透析技術認定士、フットケア指導士取得
座右の銘
今日から何かを変えよう
趣味
競馬・占い・ピアノ・カラオケ

(2018年03月)

Act Against Amputation
-なくそう、下肢切断-

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