糖尿病ネットワーク

当コーナーでは、足病治療やフットケアに積極的に取り組む医療従事者からの投稿をご紹介しております。
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リレーコラム「つなごう、足への想い。」 ▶

10. 看護師人生をかけて取り組みたいフットケア

社会医療法人愛仁会 高槻病院 看護師
西山 育美

フットケアをはじめたきっかけ

私がフットケアを自分のこれからの看護師人生をかけて取り組んでいきたいと思ったのは、長男を出産し産休明けで透析室に入職した13年前のことです。

それは入職してすぐに出会った患者Sさんがきっかけとなりました。Sさんは糖尿病性腎症で神経障害のため感覚鈍麻があり、靴擦れから潰瘍を形成しましたが発見が遅れ、気づいたときには「医師から切断になるかもしれない」と告知されました。「母趾の先端に発生した1円玉大の壊死から切断?」、「本当にそんなことになるのだろうか?大げさに言っているだけではないか?」と私は思いました。でも、糖尿病があり維持透析を行うSさんの足潰瘍はなかなか治りませんでした。

糖尿病を合併した透析患者さんは、足病変に対して最もハイリスクであり、膝下〜末梢の動脈疾患を伴うことが多く治療に難渋します。実際、経皮的血管拡張術後経過観察中に骨髄炎を発症し、2度目の切断宣告を受けました。しかし、Sさんは切断を拒否し、感染を起こしたら切断するという約束で、自宅でのセルフケアを続けることになりました。その後、私は透析中にフットケアを続け、医師は何度か経皮的血管拡張術を施し、1年半かけて潰瘍は治癒。切断を回避することができたのです。

この事例をきっかけに、自分にできることを勉強して、私が関わっている高リスク患者さんの足を守りたいという思いが大きくなり、フットケアに関する多くの勉強会に参加するようになりました。

そこで最初に聴講した医師の講演に衝撃を受けました。欧米には“足病医”という足の治療に関する専門家がおり、適切な治療を行うシステムが整っているというのに、日本では足に傷ができても、どの診療科に受診すればよいかわからない状況で、確立された治療もないため、適切な治療がなされないまま切断に至ってしまう事例があると知りました。この問題を解決するためにその医師が取り組んでおられる治療や院内の協力体制に感銘を受け、なによりその熱い思いに感動しました。そこから私のフットケアへの思いはますます強くなったのです。

運命の出会いとフットケア活動の広がり

足病変は予防することでかなりの確率で防ぐことができる――看護師の私にもできることがあるのを知り、興味を持ってフットケアを深く学ぶようになりました。以前の自分では考えられませんが、フットケア(勉強)のために時間とお金を使いたいと思いました。全国に同じ思いでフットケアに携わっている医療従事者がおり、皆、誰かにやらされているのではなく本当に熱心に足を救うために学会に参加し、地域での取り組みを行っています。

そんな中、私の視野がさらに大きくなるきっかけをくれたMさんとの貴重な出会いがありました。一緒にフットケア指導士の会を結成しないかと誘ってくれたのです。Mさんはとても魅力的で、誰もがその行動力と話に引き込まれました。そして同じ志を持った仲間の輪が広がり一緒に取り組む場は、私にとって心地の良い空間となり、これまでフットケアを邁進してこられた原動力となっています。地域でのボランティアや市民公開講座、近隣クリニックへの勉強会開催など活動の場も広がっています。

チーム医療への課題

足を守り続けるためにはタイミングよく治療を行うことと、傷が治った後の再発予防がとても重要です。これを実現するためには多職種が同じ思いで協力をしていかなければなりませんが、現実はそんなにうまくはいきません。困った時、抱え込まずに他部門へ相談するためには、できないことを認めることも必要です。

そして成果を出すには、各分野の専門家がコミュニケーションをとりながら問題解決していくことや、自施設だけでなく他施設や他部門とのスムーズな連携体制を整えることも重要です。一人に負担がかからないシステムを作ることが、引いてはチームが良い関係を作り適切な治療を提供できることにもつながると思います。

私は、足病変リスクの高い方がしっかり予防できる環境作りと、足に治らない傷ができた時、どこを受診しても適切な治療が受けられるシステム作りに尽力したいと思っています。まだまだ険しい道のりですが。。

重要な事例

“足を守ること”と“人生で大事にしていることを守ること”、どちらも同時にできない時があります。

重症虚血肢で長期に渡り治療を続けていたFさんは自営業をされており、地域のコミュニティーの中で中心的な役割を持ち、人との付き合いを大切にされていました。「西山さんの説明が一番よくわかるわ」と話してくれましたが、「頑張ってくるわ」と言った翌透析日には意思の弱さから自己管理ができず、後悔の念をいつも口にされていました。わかってはいるけどできない、でもその結果起こるであろう悪影響が心配で仕方がない方でした。潰瘍の管理が上手くいかず、感染をおこした足のためには安静が必要で、すぐに入院加療をするよう勧めましたが、Fさんは仲間との約束を果たすために自分の役割を誰かに託すことはしませんでした。自身で企画されたイベントに出席した後、再入院されました。

最後まで自分のやりたいことを貫き人生を全うされたFさんを救うことはできなかったけれど、悔いのない人生だったのではないかと感じました。私は、足を守るためにできることをいつも全力で行いたいと思っています。一方で、看護師としてその方の望む人生を考えることを忘れてはならないとも思います。

教科書に書いてある予防対策を実行するには、さらにその方に合わせた工夫を施し、できない理由を理解して対策を一緒に考えることが大切です。足病変の原因は本当に幅広く予防対策は単独ではできません。困っているその人を含め、一緒に考えていける仲間を増やし、相談できる良い関係を築けるチーム作りをしたい。これからもこれらの目標を達成するために頑張っていきたいと思います。真面目に楽しく、同じ目標を持つ仲間が全国で頑張っているから、私も頑張れるのです。

著者プロフィール

西山 育美 社会医療法人愛仁会 高槻病院 看護師
写真右から3番目が西山さん

氏 名
西山 育美
職 業
看護師
所 属
社会医療法人愛仁会 高槻病院 血液浄化センター
略 歴
平成22年:日本フットケア指導士資格取得
        日本糖尿病療養指導士資格取得
平成24年:慢性腎臓病療養指導看護師(DLN)資格取得
平成24年6月:「大阪フットケア指導士の会」結成 代表
       南大阪フットケア研究会世話人
平成24年4月:大阪DLNの会 幹事
平成27年4月:北摂フットケアカンファレンス世話人
平成29年6月:高槻市 足を学ぶ会 世話人
平成30年3月:特定行為研修(透析管理 創傷管理)修了
趣味
フルート ダイビング
座右の銘
「どうせやるなら楽しんで」

(2018年04月)

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