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〔このコーナーは医療スタッフ対象です〕
グリコアルブミン・トピックス - dpp-4阻害薬とグリコアルブミン


破線 『糖尿病治療におけるdpp-4阻害薬の位置付け』

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§1 はじめに
 経口血糖降下薬として6番目のカテゴリーにあたるDPP-4阻害薬が2009年末からこれまでに3種・4製品、国内で発売され、開発の最終段階に差し掛かっているものも複数あります。DPP-4阻害薬とともに「インクレチン関連薬」と称されるGLP-1受容体作動薬も同様の状況で、しばらくはインクレチン関連薬の発売ラッシュが続きそうです。
 インクレチン関連薬について、その概要を簡単にまとめてみます。

インクレチンとDPP-4阻害薬
国内で販売・開発中の主なインクレチン関連薬
〔「糖尿病リソースガイド」(http://www.dm-rg.net/)より抜粋〕
(2010.8月現在)
 
 ブドウ糖を経口または経静脈的に投与すると、経口投与のほうがインスリンが数倍多く分泌されることから、消化管からインスリン分泌を促すホルモンが分泌されていると予測されていました。そのホルモンはインクレチンと名付けられ、それが小腸上部から分泌されるGIPと、小腸下部から分泌されるGLP-1であることがわかり、糖尿病治療への応用が図られてきました。
 製剤化へのハードルとなったのは、インクレチンの半減期がわずか数分であることでした。これに対し、GLP-1のアミノ酸配列を変更するなどの修飾により、半減期を延長したアナログ製剤「GLP-1受容体作動薬」と、GIP、GLP-1双方の分解酵素であるDPP-4を阻害する「DPP-4阻害薬」の開発が進められ、昨年末から相次いで国内で発売されるに至ったというわけです。
 なお、GIPとGLP-1では、後者がインスリン分泌促進のみならず、グルカゴン分泌抑制作用をもつこと、一方で前者には脂肪蓄積を増やす作用もあることなどから、GLP-1のほうが糖尿病治療により適していると考えられます。


§2 DPP-4阻害薬の血糖降下作用
 現在のところ、DPP-4阻害薬は経口薬で、GLP-1受容体作動薬は注射薬のみが製品化されています。本稿では、一般臨床により馴染みやすいDPP-4阻害薬を中心に話を進めていきます。

血糖依存性のインスリン分泌促進作用
 インクレチンの血糖降下作用は従来の血糖降下薬と異なり、血糖依存性であることが大きな特徴です。α-グルコシダーゼ阻害薬やグリニド薬といった食後高血糖改善薬は、食事のタイミングにあわせて服用しなければ効果がありませんが(グリニド薬では低血糖が起こり得る)、DPP-4阻害薬は1日1〜2回の服用で、高血糖時にのみインスリン分泌を刺激します。食間に血糖値が低下してくればインスリン分泌を刺激しなくなるので、本薬単剤なら低血糖は起こりにくいと考えられています。

グルカゴン分泌抑制
 また、グルカゴン分泌を抑制することも、従来の血糖降下薬にない作用です。これにより、より生理的に自然なかたちで血糖を下げることができます。DPP-4阻害薬が食後血糖だけでなく空腹時血糖も下げるのは、主に糖毒性解除とグルカゴン分泌抑制によるものと解されます。

インスリンの過剰分泌を来さずに血糖値を制御
 DPP-4阻害薬のインスリン分泌刺激作用には血糖応答性があることから、医原性の高インスリン血症になりにくいと言えます。血糖を下げるために体重が増え、それがさらなる血糖管理不良、大血管障害リスク増大につながるというジレンマから解放される期待がもてます。

§3 血糖降下以外の抗糖尿病作用
 インクレチン関連薬が注目される理由は、新しい作用既序で血糖を下げるというだけでなく、糖尿病治療に有用な多面的作用を有することです。

期待される膵β細胞保護・増殖作用
 最も期待を集めているのは、インクレチンの膵β細胞増殖促進作用です。これは従来の治療薬では全く期待できなかった作用です。ただ、この作用はいまだ動物実験レベルで認められたものであり、ヒトでもその効果を期待し得るか否かについては(とくにGLP-1受容体作動薬より作用が若干弱いDPP-4阻害薬では)、今しばらく検証が必要な段階です。
 しかし、これまでの治療薬が高血糖に対する対症療法「血糖降下薬」であったのに対して、インクレチン関連薬は原因療法「糖尿病治療薬」となり得る可能性を秘めています。

多彩な膵外作用も特徴
 さらに、インクレチン関連薬には糖尿病治療に有利な多彩な膵外作用があります。例えば、胃排出能や胃酸分泌の抑制は食後高血糖の緩和や食間の空腹感・低血糖惹起を抑止する方向に働きます。中枢に働きかけ食欲を抑制する作用もあります。肝臓や筋肉への糖取り込み促進作用は血糖上昇を抑制します。さらに、腎臓からのナトリウム排泄促進、虚血時の心筋・脳保護作用、骨代謝改善作用なども報告されています。
 ただし、これらは主にGLP-1受容体作動薬で確認されている作用であり、DPP-4阻害薬がこれらの作用を発揮するか否かについては、今後、より長期的な検討が必要です。

§4 いつ、どんな患者さんに用いるか
 SU薬には体重増加、チアゾリジン薬には浮腫や骨量減少、α-グルコシダーゼ阻害薬には腹部膨満・放屁、BG薬には吐気や乳酸アシドーシスの発生を完全には否定しきれないことなど、既存の血糖降下薬には、なにかしら薬剤特異的な副作用があります。しかしインクレチン関連薬、とくにDPP-4阻害薬はそのような有害事象が少ないことも特徴です(GLP-1受容体作動薬では使用開始から2カ月ほど消化器症状がやや高頻度に現れます)。インスリン分泌が枯渇していない限り使用すべき対象を選ばず、ほぼ全例に処方可能です。
 このため、初期治療に用いたり、より厳格な血糖管理を目指すために他剤に上乗せしたり、SU薬二次無効例に用いてインスリン導入を先延ばしするといった、広範な用途に使えます。日本人糖尿病患者さんは欧米人に比べて糖尿病発症初期からインスリン分泌が低下しているため、インスリン分泌を適度に刺激するインクレチン関連薬は日本人向きの薬であるとの考え方もあります。また、より早期から使うほど、インクレチンの膵β細胞保護・増殖作用を活かせるとも言えます。
 ただし、インスリン抵抗性が強い症例には、それを適切に対処したうえで用いることが、より理に適った使い方だと言えるでしょう。

他剤との併用時の注意
 インクレチンはSU薬とは別の経路でインスリン分泌を促します。だからこそSU薬への上乗せ効果もあるのですが、反面このことは、インクレチン関連薬の上乗せに際して低血糖予防に一層の配慮が求められるということでもあります。SU薬をいったん半量またはそれ以下へ減量した上で、経過をみながら調節する必要があるでしょう。
 このほか、現時点では、製品ごとに保険診療で併用可能な既存薬の組み合わせが異なる点に、注意が必要です。

§5 DPP-4阻害薬の効果確認

DPP-4阻害薬は食後血糖をより強く改善する
 インクレチン関連薬は血糖依存的にインスリン分泌を刺激することから、空腹時血糖よりも食後血糖を強力に下げます。食後の一過性の高血糖「グルコーススパイク」が動脈硬化進展の危険因子である点については既に多くのエビデンスがあり、糖尿病発症後の早期、あるいは耐糖能異常の段階から、その管理が求められるようになりつつあります。
 インクレチン関連薬はインスリンの過剰分泌を来さず、適度なインスリン刺激とグルカゴン分泌抑制によって、グルコーススパイクを改善します。これは、動脈硬化進展に抑制的な作用と言ってよいでしょう。

DPP-4阻害薬は、血糖日内変動を把握し得る検査で効果判定
 現在の血糖管理指標のゴールデンスタンダードはHbA1cです。これは、今日の糖尿病診療指針の確立に多大なエビデンスを提供したDCCTの影響が大きく、DCCT以降、HbA1cをもって糖尿病治療の質が評価されるようになりました。
 しかし、ご存じのとおりHbA1cが良好であっても合併症が進行する症例は少なくありません。当然それには血圧や脂質などの影響も考えられますが、血糖が血管障害へ及ぼす影響をHbA1cでは十分とらえきれていない可能性があります。
 DCCTから20年近くたち、今では、より厳格な血糖コントロールがなされるようになりました。それにより糖尿病特有の細小血管合併症はようやくプラトーに達したように見受けられます。しかし、もちろん完璧と言うにはまだほど遠く、大血管障害合併症については生活習慣の欧米化とあいまって、恐らく今後も増加していくことでしょう。
 このような状況下では、食後高血糖の催動脈硬化作用をより敏感に把握しうる、HbA1cに変わる検査法が検討され、大規模臨床研究等に用いられて、臨床に普及することが望まれます。その候補の一つとして、グリコアルブミン(GA)の有用性もより積極的に検証する必要があるのではないかと考えます。

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※2012年4月からヘモグロビンA1c(HbA1c)は以前の「JDS値」に0.4を足した「NGSP値」で表わされるようになりました。過去のコンテンツの一部にはこの変更に未対応の部分があります。