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第3回 食後高血糖と動脈硬化。動脈硬化とグリコアルブミン
監 修:兵庫医科大学内科学糖尿病科講師 浜口 朋也 先生

も  く  じ
1. 食後高血糖と動脈硬化
  a. 食後高血糖とは
  b. 糖尿病患者さんにおける食後高血糖の重要性
    ・食後高血糖は見つかりにくい危険因子
    ・食後高血糖は糖尿病の“初期症状”
  c. 糖尿病予備群・メタボリックシンドロームの人における食後高血糖の重要性
    ・食後の血糖値が高いと、予備群でも動脈硬化が進行する
  d. 食後高血糖は動脈硬化の‘独立した’危険因子
2. 食後高血糖とグリコアルブミン
  a. アルブミンはヘモグロビンよりも素早く血中のブドウ糖と反応する
  b. グリコアルブミンと HbA1Cの比をみると、食後高血糖がさらにはっきりする
    ・食後高血糖以外にも GA/HbA1C比が高値/低値となることがある
  c. これからの「より良い血糖コントロール」には、
   「より良い‘食後血糖’コントロール」が求められる
    ・食後高血糖の対処法
     (1)生活習慣の改善(2)食物線維(3)薬物療法(4)カーボカウンティング
3. グリコアルブミンと合併症・血管障害・動脈硬化
  a. グリコアルブミンが合併症の進行そのものを表している可能性
  b. グリコアルブミンによる食後高血糖評価と合併症の抑止


1.食後高血糖と動脈硬化

a.食後高血糖とは
 糖尿病は「血糖値が高くなる」病気です。もちろん糖尿病ではない健康な方でも食事をとれば血糖値はいくらか上がります。これは自然な現象です。しかし、健康な方と比べて糖尿病の患者さんや、まだ糖尿病に至っていない予備群・メタボリックシンドロームの段階の人でも食後の血糖値の上がり方が激しい場合があり、食前(空腹時)高血糖とはまた別の問題がクローズアップされています。

 この二つのケースについて、少し詳しく解説しましょう。

b.糖尿病患者さんにおける食後高血糖の重要性
   〜空腹時血糖値や HbA1Cだけでは
     血糖コントロールの良否を正確に評価できない〜
 糖尿病の治療効果を判断する指標として、これまで、空腹時血糖値や HbA1C検査が用いられてきました。実際、空腹時血糖値や HbA1Cが基準値に近いほど合併症が起きにくいことが、数多くの研究で明らかになっています。

 ところが一方で、空腹時血糖値や HbA1Cだけに注意していても、糖尿病合併症の発症・進行が完全には抑えられないことも事実です。その原因を明らかにするための研究も行われ、いくつかの答えがわかってきました。その答えの一つが「食後高血糖」です。

・食後高血糖は見つかりにくい危険因子
 食後の血糖値とは、食事をしてから1〜2時間後ぐらいの血糖値のことですが、ふだん、絶食で採血検査を受けられている患者さんには食後の血糖値がどれくらい上がっているのかを把握できる機会は多くありません。また、このコーナーのNo.1や2ですでにお話ししたように、食後の短時間の高血糖は必ずしも HbA1C値へ敏感には反映されません。

「HbA1Cがそれほど悪くないのに合併症が発症・進行してしまう」ケースの背後には、このような理由で見逃されている食後高血糖の影響があるのではないかと考えられています。とくに、糖尿病のさまざまな合併症の中でも太い血管に起きる合併症「動脈硬化」には、食後高血糖が大変強い影響を及ぼしていることが明らかになっており、食後高血糖を積極的に治療することが推奨されています。

〔DECODE-study group:Lanset 354:617-621,1999〕
食後血糖が高いと命の危険も高い!

 空腹時血糖も糖負荷2時間後血糖(日常生活においては食後血糖に相当)もともに正常の人の死亡率を1として、血糖値が高くなることで死亡の危険度がどのように高くなるかを調べた研究の結果です。

 棒グラフの左の3列と右の3列を比べると空腹時血糖が高くなる影響がわかりますが、死亡の危険度はそれほど変化しません。しかし、手前の3列と奥の3列を比べ食後血糖が高くなる影響をみると、死亡率が約2倍に高くなることがわかります。



・食後高血糖は糖尿病の“初期症状”
 食後高血糖がこれだけ強調されるようになった原因のひとつは、それが糖尿病のいちばん最初の“症状(検査異常)”であることが多いからです。健診で早朝空腹時の血糖値が基準値を超えて糖尿病発症と初めて診断された人では、既に発症の9年前から糖負荷試験の2時間値が正常を超えていたというデータもあります。欧米人のデータですが、HbA1Cが6.5%未満の“軽症”糖尿病患者の24時間血糖値モニターでは、空腹時の血糖値はどれもそれほど高くないのに、朝食後の血糖値だけが非常に高値を示したことが報告されています。食後の高血糖に気付かないまま、“悪い”生活習慣を続けているうちに、糖尿病も動脈硬化も進行してしまうのではないか、と考えられています。

c.糖尿病予備群・メタボリックシンドロームの人における食後高血糖の重要性
   〜まだ糖尿病でないのに、動脈硬化が進行していく〜
 現在の糖尿病の診断基準は「空腹時血糖が126mg/dL以上、または、随時もしくは75gのブドウ糖を飲んだ2時間後の血糖値が200mg/dL以上」とされています。この診断基準は、糖尿病に特有の細い血管の合併症である網膜症が起きてくる血糖値から定められたものです。

 しかし、より太い血管の合併症である動脈硬化は、まだ糖尿病になっていない糖尿病予備群やメタボリックシンドロームの方でも発症・進行することがわかってきました。なんとその原因のひとつがやはり「食後高血糖」だったのです。

境界型(糖尿病予備群)とは

 糖尿病が疑われるときには、「ブドウ糖負荷試験」という検査を受けていただきます。75gのブドウ糖が溶けている水を飲み、その後の血糖値の経過を調べて、右図の判定基準から、糖尿病かそうでないかを確かめます。「糖尿病型」にも「正常型」にも該当しない場合が「境界型」で、‘糖尿病予備群’と呼ばれることもあります。

「正常型」でも空腹時の血糖値が100mg/dL以上の場合や、ブドウ糖負荷後(ブドウ糖を飲んだ後)1時間後の血糖値が180mg/dL以上の場合も、境界型(予備群)に近い状態なので、少し注意が必要です。



・食後の血糖値が高いと、予備群でも動脈硬化が進行する
 血糖値と動脈硬化の関係をみると、糖尿病の診断基準を満たさず、まだ糖尿病とは診断されない状態(境界型。糖尿病予備群)においても、すでに動脈硬化の進行が加速していることがわかっています。つまり、「動脈硬化は糖尿病予備群の段階から起こり始める合併症」だということです。

 そこでどのような人で動脈硬化が進みやすいか調査したところ、糖尿病予備群の段階において動脈硬化の進行と強い相関関係が認められるのは、空腹時(食前)の血糖値よりも食後の血糖値だということがわかりました。空腹のときの血糖値がたとえ正常でも、食後に血糖値が上昇しやすい人は、そうでない人に比べて動脈硬化が進みやすいというのです。

 実は、空腹時の血糖値はあまり高くないのに、食後の血糖値が高くなっている人は少なくありません。近年、動脈硬化の重大な危険因子として社会的に注目を集めているメタボリックシンドロームの人たちの中にも、そのような血糖変動パターンを示す方を多く見かけます。また、糖尿病予備群の方にα-グルコシダーゼ阻害薬(このコーナーの前回 No.2を参照)を服用してもらうと、糖尿病の発病率や動脈硬化による心筋梗塞などの発病が減ることも、すでに証明されています。食後高血糖の是正が、そうした良い効果をもたらすのではないかといわれています。

〔The STOP-NIDDM Trial Research group.JAMA 290:23-30,2003〕
食後高血糖を治療すると心臓血管系の病気を予防できる!

 糖尿病予備群の人を二つのグループに分け、一方には食後高血糖改善薬(α-グルコシダーゼ阻害薬)が、もう一方にはプラセボ(何の効果もない偽薬。外観からは本物の薬と区別がつきません)が処方され、経過が観察されました。その結果、食後高血糖改善薬を服用した人は、プラセボだった人に比べて、心臓血管系の病気の発病が約半分に抑えられました。



d.食後高血糖は動脈硬化の‘独立した’危険因子
 ここまでの話をまとめると、「食後高血糖は、空腹時(食前)血糖値とは別個の、動脈硬化の危険因子」だということです。しかも、糖尿病になる前の糖尿病予備群やメタボリックシンドロームの段階から、早期に食後高血糖を見つけて是正することが、心筋梗塞や脳梗塞を防いで命を守り、身体の障害のない生活を続けるための大きなポイントだといえます。

 古くから日本人は欧米人に比べて心臓血管系統の病気になりにくいと言われてきましたが、生活習慣の欧米化とともにそれは徐々に過去の話になりつつあります。これからの糖尿病治療・予防には、空腹時血糖値および空腹時血糖値と強い相関関係にある HbA1C値に加えて、食後血糖値および食後血糖値とより強い相関関係のある、何かしら別の検査を指標とする必要性が、ますます高くなると予測できます。

〔Tominaga M,et al.Diabetes Care 22:920-924,1999〕
食後高血糖は空腹時高血糖とは別の危険因子!

 左のグラフは、空腹時血糖も糖負荷2時間後血糖(日常生活においては食後血糖に相当)も、ともに正常域の人 (a) と、糖負荷2時間後血糖が境界域の人 (b)、両方とも糖尿病域の人 (c)、という三つのグループの経過を調べた結果です。糖尿病域の人は累積生存率の低下が速く、糖負荷2時間後血糖が境界域の人も、それに近いことがわかります。

 右のグラフは、同じ調査対象の人たちを、糖負荷2時間後血糖は無視し、空腹時血糖のみで三つに分けて調べた結果です。累積生存率の低下が速いのは糖尿病域の人 (f) だけで、空腹時血糖が境界域の人 (e) は正常域の人 (d) とほぼ同じです。

 この結果から、食後高血糖のほうが、生存率を脅かす危険因子となることがわかります。

    動 脈 硬 化 と は

     日本人の死亡原因の第1位は、約3割を占める「がん」です。では日本人の死亡原因の第2位はなにかというと、心臓の病気です。その大半が動脈硬化による心筋梗塞やそれによる不整脈、心不全と考えられます。そして日本人の死亡原因の第3位は脳の血管の病気です。これも動脈硬化が強く関係しています。

     第2位と第3位を合計すると、がんとほぼ同じ割合になります。つまり、日本人のおよそ3人に1人は動脈硬化という血管の病気で亡くなるということです。さらにその背景には、からだの麻痺などで不自由な生活をされていたり、介護が必要になられる方も大勢いらっしゃいます。

     このようにお話しすると、動脈硬化が非常に怖い病気だとお感じになるかもしれませんね。しかし、動脈硬化の進行を速くする原因もすでにかなり明らかになっています。具体的に挙げると、糖尿病、脂質異常症、高血圧などの生活習慣病、そして喫煙です。

     これらの危険因子はどれも治療や是正が可能です。せっかくの人生ですから、短命で終わったり身体の障害で不自由をしないよう、こういった危険因子はしっかり取り除くようにしたいものです。

2.食後高血糖とグリコアルブミン

「食後高血糖は動脈硬化の独立した危険因子」であり、それを是正することの重要性を解説してきました。さて、それでは、食後高血糖をどのようにして早期発見し、評価していけば良いのでしょうか?

 前にお話ししたように、糖尿病予備群や糖尿病の早い段階では食後高血糖が唯一の“症状(検査異常)”で、ふだん絶食で行われる血糖検査や HbA1Cといった指標では、初期の異常を敏感に検出することは困難です。

 そこで注目されるのが、このコーナーの No.1でも紹介した「グリコアルブミン(GA)」と「1,5-AG」です。グリコアルブミンは検査時点から過去1カ月(とくに直近の2週間)の血糖値と相関し、1,5-AGは検査時点から過去数日間の血糖値と相関するという特徴があり、そのほかにもいくつか違いがあります(シリーズ No.1を参照してください)。

 ここではグリコアルブミン検査による食後高血糖の評価について解説します。なお、食後血糖を最も確実にとらえる方法は、患者さん自身による血糖測定(血糖自己測定)です。しかし血糖自己測定は保険上の制約から、インスリン治療をしている患者さん以外にはあまり普及していません。
 
血糖コントロールの目安
〔日本糖尿病学会:科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 第2版.南江堂.19,2007〕
* 旭化成ファーマ(株) 社内資料

 
a.アルブミンはヘモグロビンよりも素早く血中のブドウ糖と反応する
 グリコアルブミン検査は、血液中のアルブミンという蛋白質がブドウ糖(血糖)と結合して変化したものの割合を調べる検査です。血糖値が高いとその割合(%)が高くなります。基準値は、11〜16%です(詳しくはシリーズ No.1を参照してください)。

 HbA1Cもやはり、血液中のヘモグロビンが血糖と結合して変化したものの割合を示す検査値で、グリコアルブミンと検査の原理は同じです。両者の違いは、血糖との結合反応(医学用語で「糖化」または「グリケーション」といいます)を調べる‘対象’の違いです。

 そして、同じ HbA1C値の糖尿病患者さんでも、血糖値が大きく変動している患者さんの方が、グリコアルブミンが高くなりやすいことが示されました。これは、アルブミンが血糖と結合してグリコアルブミンになるスピードが、ヘモグロビンが血糖と結合して HbA1Cになるスピードの9倍くらい速いことが推測されており、そのため、ごく短時間だけ現れる高血糖にも、グリコアルブミン値の方が HbA1C値より敏感に反応しやすいのではないかと考えられるからです。これが、「グリコアルブミン検査は食後高血糖の評価に適している」とされる理由です。

 実際に、HbA1Cは低いのにグリコアルブミンは高いという患者さんに血糖自己測定をしてもらい血糖の日内変動を調べると、食前の血糖値は良くても食後高血糖が起きていることが見つかることがあります。

グリコアルブミンは食後高血糖コントロールをより顕著に示す

 SU 薬服用中またはインスリン療法中の HbA1Cが 6.5%以上の2型糖尿病患者さん12人に、食後高血糖を改善するα-グルコシダーゼ阻害薬を服用してもらい、HbA1Cとグリコアルブミンの平均値の推移を調べた結果が、右のグラフです。グリコアルブミンは HbA1Cよりも、食後高血糖改善効果を把握しやすことがわかります。



b.グリコアルブミンと HbA1Cの比をみると、食後高血糖がさらにはっきりする
 食後高血糖の存在をよりはっきりとさせる方法として、グリコアルブミン値を HbA1C値で割って両者の比を計算する方法があります。

 血糖コントロールが良いにしろ悪いにしろ、それが安定している場合、両者の比はほぼ3:1です(グリコアルブミン値が HbA1Cの3倍。HbA1Cの基準値は4.3〜5.8%)。ところが血糖値の変動が大きい糖尿病患者さんでは、先ほど述べたようにグリコアルブミンの方が上昇しやすいため、その差が大きくなります。グリコアルブミン/HbA1Cの比率(GA/HbA1C比)が4:1に近付いたり、それ以上に差が開くこともあるようです。

 この差が大きいほど合併症が進行しやすくなることを示した研究報告が最近増えてきました。グリコアルブミン検査は今後、一層普及していくと思います。それによりグリコアルブミンと合併症の関係がさらに明確になることでしょう。

 ただし、食後高血糖以外の原因で GA/HbA1C比が高くなったり低くなったりすることもあります。
    食後高血糖以外にも GA/HbA1C比が高値/低値となることがある
       血糖コントロールの改善が続いている最中は、グリコアルブミンが HbA1Cに先行して改善するので、両者の比率は低くなります。反対に血糖コントロールが悪化している最中は、両者の比が高くなります。
       また、肝硬変ではグリコアルブミン値が高くなり HbA1Cは低くなるので、両者の比は高くなります。このほかグリコアルブミンと HbA1Cのそれぞれに、実際の血糖状態と掛け離れた結果になるケースがあります(シリーズ No.1参照)。GA/HbA1Cが意外な値を示した場合には、いろいろな病態を想定して検査が進められます。
c.これからの「より良い血糖コントロール」には、
  「より良い‘食後血糖’コントロール」が求められる
 グリコアルブミン検査や GA/HbA1C比などで食後高血糖が見つかれば、合併症の予防、とくに動脈硬化の予防のために、それを治療していくことになります。

 ここで、食後高血糖の対処法について簡単に触れておきます。これらの方法で食後高血糖を抑えてワンランク上の血糖コントロールを目指すとき、その効果の確認や維持に、やはりグリコアルブミン検査や GA/HbA1C比などの指標が役立ちます。

・食後高血糖の対処法(1):生活習慣の改善
 食べ過ぎたり早食いをしていないか振り返ってみて、思い当たるのなら改善しましょう。太り気味の場合には減量も大切です。生活の中で、からだをよく動かす(できれば運動を習慣的に続ける)努力もしてください。

・食後高血糖の対処法(2):食物線維
 食事の面では、食物線維の摂取量を増やすことが良い方法です。食物線維は、食べ物の消化吸収スピードを抑えて食後の血糖上昇を穏やかにしてくれるからです。食事の最後よりも食事の最初に野菜を食べると良いでしょう。

・食後高血糖の対処法(3):薬物療法
 薬物療法についてはα-グルコシダーゼ阻害薬や速効型インスリン分泌促進薬などの飲み薬が処方されたり、インスリン療法の場合には食事の前の超速効型や速効型インスリンの追加が検討されます(シリーズ No.2参照)。

 なお、予備群の場合は薬を用いないのが基本ですが、α-グルコシダーゼ阻害薬が予備群から糖尿病への移行や動脈硬化性の病気の発病を防ぐことが報告されているので、将来的にはこういった薬を用いるようになるかもしれません。

・食後高血糖の対処法(4):カーボカウンティング
 血糖値を上昇させる栄養素である食事中の炭水化物の量を意識した「カーボカウント」によるインスリン療法は、食後血糖上昇を極力抑えて、合併症を予防しようとする試みです。


3.グリコアルブミンと合併症・血管障害・動脈硬化

a.グリコアルブミンが合併症の進行そのものを表している可能性
 食後高血糖を放置する危険性と、それを診断・評価する手段としてのグリコアルブミン検査について、話を進めてきました。グリコアルブミン、あるいは GA/HbA1C比が食後高血糖に敏感だということは、言い換えると、HbA1Cよりも血糖値の上下動(日内変動)をよく表している検査結果だということです。

 近年、糖尿病の合併症の起きやすさは、血糖値の高さや罹病期間の長さもさることながら、血糖変動の大きさの影響も少なくないことがわかってきています。その点、食後高血糖に敏感なグリコアルブミンや、血糖変動の幅を表す指標と言える GA/HbA1C比は、「合併症の発症・進行を抑える」という糖尿病の治療目的に、よりマッチした評価方法と言って良いでしょう。


 一般的にブドウ糖が蛋白質に結合すること(糖化・グリケーション)で、蛋白質の機能が変化し、正しい働きが出来なくなることが合併症のひとつの原因となることがわかっています。グリコアルブミンはその糖化・グリケーション度の指標となる可能性があります。

 さらにグリコアルブミン自身が、糖尿病で合併症が起きる原因となっているのではないかという考え方も出始めています。グリコアルブミン値が高いことは、単に血糖コントロールが悪いことを意味するだけではなく、そのことが全身の細胞、ことに血管壁の細胞にダメージを与え、合併症を進行させている可能性があるという考え方です。これはごく最近になって言われ始めた新しい考え方なので、より多くの研究者によって科学的に検証されなければなりません。

b.グリコアルブミンによる食後高血糖評価と合併症の抑止
 繰り返しになりますが、これまで長年、糖尿病の治療は空腹時血糖と HbA1Cを頼りに続けられてきました。糖尿病の治療の発展に影響をもたらした臨床研究のほぼすべてが、この二つの検査を用いて治療効果を検討しています。そして HbA1Cが低いほど合併症が起きにくいことは疑いようのない事実です。

 しかし、HbA1Cが同じなのに合併症が進んでしまう患者さんとそうでない患者さんがいます。その違いの原因はまだ明確にはなっていません。おそらく、血圧や血清脂質(中性脂肪やコレステロール)、そして、食後血糖のコントロール状態の差が少なからず影響していると考えられます。

 空腹時血糖値だけでなく、食後血糖値をしっかりコントロールすれば合併症をより確実に抑えられるという証拠も、少しずつ蓄積され始めています。そして、食後高血糖を効率的に改善する薬もだいぶそろってきました。今後は、グリコアルブミン検査などで食後高血糖を早めに見つけ治療していくことが、糖尿病治療の新しい流れになっていくと考えられます。

 
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※2012年4月からヘモグロビンA1c(HbA1c)は以前の「JDS値」に0.4を足した「NGSP値」で表わされるようになりました。過去のコンテンツの一部にはこの変更に未対応の部分があります。