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救急隊員は低血糖に対応できない?−米調査
2018年01月
 救急車を呼んだら適切な対応をされることが期待されるが、糖尿病患者が低血糖エピソードで救急車を呼んでもグルカゴン注射による救急処置を受けられない可能性のあることが「Annals of Internal Medicine」2017年12月26日オンライン版に掲載されたレター論文で報告された。

 グルカゴンは主に肝臓でグリコーゲンとして蓄えられたグルコースを血液中に放出させるホルモンで、注射製剤として用いられる。研究を主導した米ジョスリン糖尿病センターのRobert Gabbay氏は「ほとんどの州で救急救命士によるグルカゴン注射が許可されていないことが分かった」と述べている。

 一方で、米国救命士協会(NAEMT)の医療部門長を務めるCraig Manifold氏は「高度な救命処置技術を備えるパラメディックであれば対応できる」と指摘している。同氏によると、パラメディックの訓練時間は750〜1,500時間と救急救命士の100〜150時間を大きく上回るという。

 低血糖は一般的にインスリンや血糖降下薬を服用する1型または2型糖尿病患者で起こるもので、重篤な低血糖エピソードの発生件数は年間10万例以上と推定されている。米国糖尿病学会(ADA)によると、低血糖になると手指の震えや集中困難、発汗といった症状が現れるが、治療を受けずに放置するとけいれんや昏睡を引き起こし死に至るケースもみられる。

 低血糖を感じたら、まずはブドウ糖や糖分を含む加糖飲料の摂取で対処するが、重篤な場合にはグルカゴン注射が必要となる。低血糖リスクが高い糖尿病患者の中には、普段から緊急用のグルカゴンキットを持ち歩いている人もいるが、約1100万人のメディケアを受給する糖尿病患者を対象とした今回の研究では、たったの0.2%しかこのキットを携帯していないことも分かった。なお、Gabbay氏らは患者だけでなく家族もキットを使いこなせるように訓練を受けることが理想的だとしている。

 今回の研究では、米国では救急救命士がグルカゴンを扱えるのは8つの州(アラスカ、イリノイ、カンザス、ミネソタ、モンタナ、ロードアイランド、バージニア、ウイスコンシン)とワシントン特別区のみであることが分かった。これら以外の州では救急救命士によるグルカゴン注射は許可されておらず、テキサス州には明確な規定がないという。

 「これは、全米にいる19万8,000人の救急救命士と6万1,000人のパラメディックの75%が救急現場でグルカゴン注射ができないことを意味する」とGabbay氏らは指摘している。一方で、ノースカロライナ州にある大規模な医療機関のCarolinas HealthCareに所属するBryan Edwards氏は「ノースカロライナ州では州が救急車の出動を管理しており、電話口で2〜3の質問をして必要があればパラメディックを送るようにしている」とコメントしている。

 また、今回の研究では、病院に搬送される前にグルコガンを注射された9万例近くのうち、救急派遣センターの担当者が「糖尿病関連の問題」と正しく伝えていたのは45%に過ぎないことも分かった。さらに、グルカゴン注射による有害事象は約4,000例に認められ、その多くは悪心や嘔吐であった。

 グルカゴンキットの価格は約212ドル(約2万3,300円)であり、Gabbay氏らによると救急外来への受診(平均コストは約1,500ドル、日本円で約16万5,000円)や入院(平均コストは1万9,000ドル、日本円で約208万9,000円)に比べるとはるかに費用対効果が高いという。しかし、救急車で常備している薬剤の種類は郡や地区によって異なるため、同氏らは低血糖リスクがある人は誰であってもグルカゴンキットを持ち歩くように推奨している。

Emergency Services Crews Often Unprepared for Diabetic Crises
Abstract/Full Text
http://annals.org/aim/article-abstract/2667621/underutilization-glucagon-prehospital-setting

[2018年1月24日/HealthDayNews] Copyright© 2018 HealthDay. All rights reserved.

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