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08インスリンポンプについて
内潟安子  東京女子医科大学 糖尿病センター教授
2006年04月
 インスリン治療とは、インスリンという我々の体内に持っている唯一の血糖を下げるホルモンであるインスリンによって血糖を下げようとする治療です。中途半端な血糖降下ではだめで、できるだけ正常域内に入る血糖値にすることが薦められています。なぜなら、血糖値が高めのままで10年も経つと、体の中の血管、これは大きな血管も小さな血管もですが、血管の壁が弱くなっていくのです。これが糖尿病性合併症の始まりです。

 このように大事なインスリン注射をできるだけ簡単にだれでもできるようにしようと、多くの研究や開発がなされてきました。いまみなさんが使っているペン型のインスリンや使い捨てのペン型のインスリンも昔はありませんでした。

 ペン型インスリンは主にヨーロッパで開発されて日本に入ってきましたので、日本はヨーロッパと同じくペン型インスリンが良く使用されるようになりました。一方、アメリカはアメリカ製のペン型インスリンの開発が遅れたために長らくインスリンの入ったバイヤル瓶と注射器を使って注射していて、ポンプの開発とともにペン型インスリンよりインスリンポンプがより使われるようになりました。

 インスリンポンプ法は1本の細いチューブの先の針を皮膚に刺して留置しておき、持続的に速効型ないし超速効型インスリンが体内に入るようになっています(ベ−サルインスリンといいます)。そして食事の時は食前に必要な単位数のインスリンを一度に注入します(ボーラスインスリンといいます)。

 針の付いた専用チューブは3日ほど使って交換します。これはとても便利な点です。入浴時も取り外さないでいいようにすることもできます。針の部分も一旦刺せば中の金属針を抜いてチューブ部分だけを残すということもできます。食事前のボーラスインスリンも、ポケット内に入れたリモコンスイッチで行うことも最近できるようになってきました。若い時におこる暁現象(朝方の食事前に血糖が上昇すること)も、ベ−サルインスリンを前もって増量(コンピュータで前もって入力させておく)させておけば、この血糖上昇をできるだけ押さえることができます。

 しかし、欠点もあります。チューブ内につまりがおこり、インスリン注入がストップしてしまうことがあります。血糖上昇がおこってはじめてこれがわかることがあります(これは血糖測定して早めに発見することができます。よって血糖測定の回数が増えることになります。これはとても危険な欠点です)。2つに、小さな携帯電話くらいのもの(ポンプ)を身につけることになります。すこしもっこりするかもしれません。3つに、針部分を常時皮膚に刺した状態なので、人とぶつからないように、物が当たらないように気をつけることになります。4つに、長年注射している皮膚に色素沈着することもあります(針部分を絆創膏みたいなテープで固定することを長年繰り返すことになるので)。5つに、ベ−サルインスリン量をいろいろに個々に合わせて調整することができますが、いつも同じ生活をしていないのでかえって低血糖をおこすように作用してしまうこともあります。

 最後に、どちらの方法がより良好な血糖コントロールしやすいのでしょうか。どちらのほうが低血糖になりにくいのでしょうか。私の臨床経験では、ポンプで上手に血糖コントロールできる方なら、注射方法でも十分にコントロールできます。ポンプだから楽にコントロールできるということはありません。また、低血糖、高血糖の可性は依然として存在します。

 ポンプがもっとも普及している国はアメリカで、それでもインスリン使用中の糖尿病人口の20数%といわれています。

 2006年2月になってから、超速効型インスリンを用いたインスリンポンプをおこなっているお子さんに、チューブの針がささっているところの皮下組織を中心に萎縮をおこす患者さんがいることがわかりました。いま世界中の糖尿病専門の小児科の先生の間で、調査が始まりました。

©2006 内潟安子


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