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51髪の毛が抜けるんです
内潟安子  東京女子医科大学 糖尿病センター教授
2009年12月
当センターには、発症してすぐに当センターで初診され、その後も引きつづき通院される方とともに、発症したときは近くの病院で、その後は仕事先に近い当センターに通院したい、という方が受診されています。
退院後から髪の毛が抜けやすく・・・
1型糖尿病の女性が糖尿病を発症して近くの病院に入院し、退院後、当センターに初診されたとします。
「先生、髪の毛がごそっと抜けるんのです。大丈夫でしょうか?」
たいてい、診察の最後になってお聞きになられます。心配そうに、お聞きになられます。もちろん、全員、女性です。

女性にとって、髪の毛は、大昔から、命と同じなのですね。命と同じで、とても大切なものなのです。ごそっと抜けるようになった、ブラシに長いものが付いてくる、髪を洗っていると、長いものが何本も抜けていく・・・、それも毎日・・・。これを見てびっくりされるのは、至極当然なことです。

インスリン注射を欠かせなくいことになった、ことに対して、ある意味、ショックであったろうと思いますが、退院後は、それはそれで仕方のないことと自分の中なかで理解はできるようになってきてはいても、そのころになって、ごそっと髪の毛が抜け始めるわけですから、気持ちが悪い、また別の病気になったのか、私の体はどうかなったのか、と疑心暗鬼(疑診案擬)になって、不安になって、自分に対して自信が持てなくなり始めるのは、とても、当然なことでしょう。

 たいてい、微笑んで、私は言います。

「大丈夫ですよ、ちゃんと生えてきますからね」
 心配ないことには、心配ないのだと医療者がきちんとお話する、これはとても、大事なことですね。
「6ヵ月くらいしたら、もとに戻っていますからね」
1型糖尿病になったということは体にとっても大事だったのです
1型糖尿病以外でも他の大きな病気にかかると、このように髪の毛が抜けやすくなることがは、よくあります。高熱が長引いたとか、重症の薬疹になったとか、1型糖尿病も高血糖状態が長く続いていたとか。たいへんな時期があって、そこをから体がくぐり抜けてきたときに、よく起こります。

1型糖尿病を例にとれば、発症したときには1個1個の体の細胞も、重症の糖分欠乏状態であったあることが想像されます。欠乏状態で死に絶える細胞もあるでしょう。我々の体の細胞は、毎日、古くなった細胞は死んで新しい細胞に置き換わることを行っています。お風呂に入ると垢がでますが、これは古くなった皮膚の細胞ですね。かぜをひいて直りかけのころの黄色い鼻漏もそうですね。

1型糖尿病が発症したとき、髪の毛を作る細胞、つまり毛根細胞が障害を受け、死に絶えたために、、多くの髪の毛が一度にごそっと抜けてしまうことが起きた、と考えられます。これから、新しい毛根細胞に置き換わっていくわけですね。

インスリン治療が開始されて血糖値が落ち着いてくると、新しい毛根細胞が細胞分裂してできあがってきますので、新しい髪の毛を作り始めます。よって、しばらくすれば、もとに戻るというわけです。

他にどんなことが起きてきますか?
よくあるのは、女性で、これまできちんと来ていた生理がなくなることです。これも、インスリン治療開始後に血糖値が落ち着いてくれば、たいていは戻ってきます。が、たまに、戻ってきにくいことがあります。

私は6ヵ月くらい様子をみます。6ヵ月くらい様子をみていても、生理が戻ってこなければ、婦人科の先生にご紹介します。婦人科的治療が始まると、生理がまた再開されます。体が元の生理の周期を思い出したような、そんな感じですね。

1型糖尿病発症する前から、きちんと生理がきていなかった方は、生理がきちんと来るまでに、いろいろ婦人科的治療が必要になることもあります。
©2009 内潟安子


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