インスリンポンプSAP・CGM情報ファイル

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インスリン依存型糖尿病に対する強化療法の長期的な合併症の発症および進展に対する効果
ORIGINAL

The effect of intensive treatment of diabetes on the development and progression of long-term complications in insulin-dependent diabetes mellitus.

The Diabetes Control and Complications Trial Research Group.

N Engl J Med 1993;329(14):977-86.

論文の要点
  • 研究のタイプ:ランダム化比較試験
  • 患者:インスリン依存型糖尿病(IDDM)患者 1441人
    内訳:一次予防群(726人)、二次予防群(715人)
  • 介入:強化療法(頻繁な血糖測定により誘導されたインスリンポンプの使用または1日3回以上のインスリン頻回注射)
  • 対照:従来療法(1日1-2回のインスリン注射)
  • 結果:平均6.5年間の観察期間後、強化療法では従来療法と比べて以下のように糖尿病合併症が減少した。
    • 一次予防群で糖尿病網膜症の新規発症を76%抑制(95%信頼区間: 62-85%)。
    • 二次予防群で糖尿病網膜症の悪化を54%抑制(95%信頼区間: 39-66%)。
    • 全体で微量アルブミン尿の新規発症を39%抑制(95%信頼区間: 21-52%)。
    • 全体で神経障害の新規発症を60%抑制(95%信頼区間: 38-74%)。
    • 強化療法に関連した主な有害事象は、重症低血糖の増加(2-3倍)であった。
解 説

 DCCTにおける強化療法は3つの要素から構成されていた(表1)。

表1 DCCTにおける強化療法の構成要素
  • (1) 1日3回以上のインスリン頻回注射またはインスリンポンプの使用
  • (2) 1日4回以上の血糖自己測定
  • (3) 血糖自己測定結果、食事内容、予測される運動量にもとづくインスリン自己調節

 強化療法における血糖コントロール目標は、血糖値の正常化を目指した厳格なものであった(表2)。

表2 強化療法における血糖コントロール目標
  • (1) 食前血糖値:70-120mg/dl
  • (2) 食後血糖値:180mg/dl未満
  • (3) 午前3時の血糖値(週1回測定) :65mg/dl以上
  • (4) HbA1c(NGSP) (毎月測定) :正常範囲内(6.05%未満)

 頻回注射法とインスリンポンプの使い分けにおいては、患者の自己決定権が尊重された(表3)。

表3 頻回注射法とインスリンポンプの使い分け
  • (1) 強化療法開始時に患者が頻回注射法とインスリンポンプのいずれかを選択
  • (2) 当初に選択した方法で血糖コントロール目標が達成できない場合、または患者から治療方法変更の希望があった場合、頻回注射法からインスリンポンプ、あるいはインスリンポンプから頻回注射法に切り替えた

 このようにインスリンポンプは、頻回注射法で治療目標を達成できなかった場合のオプションとしても位置づけられていたのである。DCCTは頻回注射法とインスリンポンプの治療成績を比較するようにデザインされていなかったが、関連文献においてインスリンポンプを用いた患者の方が頻回注射法を用いた患者よりわずかに血糖コントロールが良かったことが報告されている(文献1)。

 DCCTの強化療法については、表1の(1)頻回注射またはインスリンポンプの使用と(2)血糖自己測定の二要素を強調した解 説が多い。しかし、1型糖尿病患者の自己管理教育の観点からすると、DCCTの強化療法の本質は血糖値・食事・運動に応じて患者本人がインスリンの単位数を自己調節するよう、チーム医療で指導した点にあったとの見方もできる。カーボカウントはDCCTの強化療法で用いられた4種類の食事療法のうちのひとつであった(文献2)。

 強化療法における主な有害事象は、重症低血糖の増加であった(強化療法:62/100患者・年、従来療法:19/100患者・年)。DCCTにおいて、重症低血糖は「他人の助けを要する低血糖」と定義された。重症低血糖は睡眠中に多かったことが報告されている(文献3)。

 DCCTの結果については20本以上の論文が発表されており、そのすべてを紹介することはできないが、なかでも臨床的な意義が大きいのは、DCCT終了後にフォローアップスタディとして行われたEDICに関する報告であろう(文献4-5)。

関連文献
インスリンポンプ情報.jp
1型ライフ

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