暁(あかつき)現象の改善

「インスリンポンプで暁現象による高血糖を克服しました」

墨染糖人さん(65歳・男性)
 1型糖尿病・糖尿病歴:11年・ポンプ療法歴:5年

 眠っている間に血糖値が上がる暁現象というものがあります。私の場合、CGM(皮下連続式グルコース測定)を3日間、体に取り付けて測定したところ、深夜0時から暁現象のため高血糖になっていることが判明しました。暁現象のために朝の血糖値が高く、それが夕方まで続くのが、ヘモグロビンA1cが下がらない原因の1つと思われました。そこでポンプのベーサルプログラム(基礎注入率設定)でインスリン注入量を以下のように変更しました。

00:00 - 08:30  1時間あたり1.15単位
08:30 - 12:00  1時間あたり0.05単位
12:00 - 18:30  1時間あたり0.10単位
18:30 - 24:00  1時間当たり0.15単位
 血糖値が高い時間帯は、それにあわせてインスリンの量を増やすようにしてあります。インスリンポンプの設定を調節していった結果、血糖値は改善し、重症低血糖もほとんどなくなりました。さらに①カーボカウント②修正インスリン③ボーラスウィザードの活用など、トータルな取り組みで血糖コントロールを改善することができました。

 インスリンポンプ療法を行うことで、他人の助けを必要とするような重症低血糖・高血糖に、自分で対処できるようになったことをたいへん嬉しく思っています。ここまで糖尿病をコントロールできるようになったのは、先生はもちろん、糖尿病の療養指導を担当してくれた看護師さんたちに特訓を受けたおかげです。ヘモグロビンA1cは11%から7%に改善し、一番心配だった合併症の進行も、少し遠くへ行ったように思います。これで油断せず、残った人生に立ち向かっていきたいと思います。次のステップは何だろう、と楽しみにしています。

追伸:今まで救急車に5回ほどお世話になったとき、思ったことです。重症低血糖時に指先を出して、血糖値を測ってください、と救急隊員の方にお願いしましたが、血を出す処置はダメとのことでした。仕方なく、自分の血糖測定器で測定しました。救急車にはブドウ糖も常備されておらず、これも自分のバッグから取り出してもらいました。外出時は血糖測定器とブドウ糖を忘れないようにしましょう。

 低血糖で倒れたとき、意識はあるけれども起きあがれないことがあります。このため自宅では、這って行けば取れるよう、床に近い所に分散してブドウ糖を置いています。

 共に血糖と闘っている同志。いっしょにがんばろう!合併症はいらない!

 墨染糖人さんはCGM(皮下連続式グルコース測定)の検査を通じて自分特有の血糖変動パターンを見抜き、それに合わせてインスリンポンプの基礎注入率を調節することで血糖コントロールを改善することに成功した1型糖尿病の男性です。墨染糖人さんはHbA1cがきわめて高いにも関わらず、他人の助けを要するレベルの重症低血糖を起こしやすかったため、ほとほと困っていました。

 CGMの検査で判明したのは、深夜から早朝にかけて暁現象*1)のせいで血糖値が激しく上昇するにもかかわらず、午前10時頃から午後6時頃までは低血糖を起こしやすいことでした。つまり、インスリン感受性が夜間と日中で大幅に異なる体質だったのです。

 インスリンポンプ *図1)はペン型注射器*図2)よりも暁現象をコントロールしやすい特徴があります。そこで墨染糖人さんは、インスリン感受性の良い日中の基礎注入率を少なめに、インスリン感受性の悪い深夜・早朝の基礎注入率を多めに設定しました。1型糖尿病外来でカーボカウントによる食後高血糖の予防法を学びながら、根気よくインスリンポンプの設定を微調節して行った結果、初回CGMの約1年後には、重症低血糖の予防とHbA1cの改善(7%台)を同時に実現することができたのです。

 ぜひ、みなさんも暁現象の有無をチェックしてみてください*2)

*1)暁現象とは?

  • 深夜・早朝の時間帯に、何も食べていないにもかかわらず血糖値が上昇する現象。
  • 時間帯によりインスリン感受性(インスリンの効き)が悪くなるため生じる。

*2)暁現象の評価方法

  • CGM(皮下連続式グルコース測定):皮下に埋め込んだ小型センサーにより、睡眠中の時間帯を含めて数日間にわたる連続的な血糖変動パターンを知ることができる。
  • SMBG(血糖自己測定): 深夜0時、午前6時、午前9時の血糖値を測定し、低血糖が先行しないにも関わらず1時間につき10mg/dl以上の血糖上昇を認めたら、暁現象の存在を疑う(※午前3時と正午の血糖値も測定すると、より詳しい血糖変動パターンが分かる)。
  • いずれの方法においても、食事による血糖変動の影響を避けるため、夕食をなるべく早く、また朝食を抜いて、可能な限り長い絶食時間を確保するのが正確な評価のためのコツである。
  • なお、低血糖が先行する血糖上昇はソモジー効果と呼ばれ、暁現象と区別する必要がある。

図1)インスリンポンプ
 インスリンポンプでは、インスリン感受性の変化にあわせて、時間帯ごとに異なる基礎注入率を設定することが可能。

図2)ペン型注射器
 ペン型注射器では、作用時間の長い持効型インスリンと作用時間の短い超速効型インスリンを組み合わせて注射する。確実な作用が期待できる反面、暁現象による深夜・早朝の血糖上昇を予防することは困難。

(独立行政法人国立病院機構京都医療センター糖尿病センター 村田 敬)
2010年07月更新
↩ 「インスリンポンプ情報ファイル」トップへ