インスリンポンプ情報ファイル
インスリンポンプ療法体験談 体験者の声 PART2
SAPで得られた「自信と安心」
投稿者:F. Y さん
主治医:廣田 勇士 先生
(神戸大学医学部附属病院 糖尿病内分泌内科 助教)
作品テーマ
日常生活にまつわる話題
F. Y さんのプロフィール
年 齢
33歳
性 別
男性
職 業
会社員
病 態
1型糖尿病
糖尿病歴
10年
CSII療法歴
1年2カ月
使用製品
ミニメド620G

 1型糖尿病歴10年になります。10年間ペンでの加療を続けてきましたが、この5〜6年はHbA1cが8%を下回ったことがありませんでした。

 その頃の生活は、常に血糖値が気になり、四六時中落ち着かない気持ちでした。高血糖でいる方がまだ安心なので、インスリン量を必要よりわざと少なめに打ったり、恒常的に微糖コーヒを飲んでいたり。その生活にだんだん慣れてくると「今も高いはず」と勝手に予測して測定もせずインスリンを打ったりもしていました。

 2013年、甲状腺に異常が見つかり神戸大学病院の糖尿病内分泌内科に入院しました。その際にカーボカウントを教わったのをきっかけに、だんだんとおもしろいくらいに血糖コントロールができるようになりました。また、頻回測定の習慣も取り戻せました。それだけできるのなら、インスリンポンプ療法を行えばもっとよくなるだろうし、私に向いていると主治医に提案してもらったのですが、当時、私はポンプに対してあまりいいイメージを持っていなかったので断りました。費用、トラブル、メンテナンスの煩わしさ…患者仲間にポンプユーザーがいなかったことも要因かもしれません。

 しかしその後の2014年11月、診察中に主治医が「CGM付きポンプが出たよ!」と教えてくれました。その際に、SAP教育入院中の患者さんを紹介していただき、「もし将来、合併症を発症してしまったときに支払う高い治療費には納得はできないが、いま合併症を予防するために支払う治療費はとても値打ちがある」というその方からの一言で、私はポンプでの加療に踏み切る決意ができました。そして、その1週間後、私はSAP加療を開始するための教育入院をしていました。

 SAP導入後、私の生活は激変しました。毎日血糖値にビクビクしながら生活していましたが、日々の何気ない行動が自信をもって行えるようになりました。挑戦してみたかった仕事にも転職することができ、公私ともに以前より活動的なったように感じています。

 SAPに移行してからのいちばんのメリットは、血糖値の近似値が確認できるということです。また、自宅や職場では、アラームが鳴ると家族や同僚が「大丈夫?」と心配してくれるのも、うれしい点です。 まだまだSAPのパフォーマンスをフル活用できていませんので、それを最大限発揮させられるように主治医をはじめ、新しく出会えたポンプユーザー仲間と試行錯誤していきたいと思っています。

 現在、主治医とSAPをすすめてくださった患者さんに感謝しています。 SAPというありがたいものを得たこともそうですが、もっと大きなものは、少し前のじぶんより「自信と安心」得たことです。これは、これからの1型糖尿病ロードを歩んでいくことにおいて、何よりも強い見方だと思います。

主治医より
廣田 勇士 先生
神戸大学医学部附属病院 糖尿病内分泌内科 助教

 私とF. Yさんの出会いは、3年ほど前になります。はじめは1型糖尿病以外のことで当院に入院されたのですが、入院中に「1型糖尿病についても一緒に勉強しましょう」ということになり、1型糖尿病の治療を担当させていただくようになりました。

 彼の第一印象は、シャイだけど、まじめで、理論だって話が出来る好青年だなという印象でした。絶対にカーボカウントやポンプをうまく使えるだろうなと思ったことを覚えています。カーボカウントをお勧めしたところ、案の定すぐに実践され、血糖コントロールにも前向きになられて、ご自分の血糖値に興味を持って治療されるようになられました。その後、ポンプもお勧めしたところ、意外にも「ポンプは、やらない」とのことでした。そのとき、「ポンプにしたら絶対うまく使えるのになー」と思いましたが、それもご自身の決めることですから、ペンで出来るところまでやっていきましょうということで、どんどん工夫をしていったという経緯でした。

 F. Yさんはお酒を飲んだり食べたりするのが好きなので、いろいろ工夫して、いろんなものを食べたい、飲みたいという気持ちだったと思いますが、なかなか思う通りには行かないこともあったようです。

 そんな中、当院でのSAP治療が始まるときに、「断られるかも」と思いながらも思い切ってSAPを勧めてみました。その時には、患者仲間からの一言もあって、導入することとなりました。導入の決断がついた後は、「すぐ導入したい」と言うアクティブな言葉に少しびっくりしましたが、私の第一印象通り、あっという間にSAPを使いこなされるようになりました。

 その後は、血糖の推移を見ながら色々なチャレンジを行い、その結果を私に教えてくれるという、まさにSAPを使いこなす生活です。低血糖への不安が解消したこと、かつ自分のチャレンジしたことがすぐに画面で血糖推移として出てくるということで、シャイだった性格が前向きになって、今回の体験談の応募にもつながりました。

 SAPは血糖コントロールをうまくするための道具というだけでなく“1型糖尿病ライフ”を前向きに送ることが出来る可能性をもった素晴らしい道具だと思っています。そして、F. Yさんに「断られるかも」と思いながらも、勧めてみて良かったと実感しています。そんな彼の色々なチャレンジのお手伝いを、今後もしていきたいと思っています。

導入医師データ
廣田 勇士 先生
神戸大学医学部附属病院 糖尿病内分泌内科 助教
CSII導入患者数(年間)
20〜30名
CSII療法導入歴
10年
どのような患者さんに導入を勧めますか? 選択のポイントを教えてください

■CSII:
CSIIを望む1型患者さん、特に暁現象がある患者さん、低血糖が多い患者さん。

■SAP:
血糖変動に興味がある患者さん、無自覚低血糖のある患者さん、低血糖不安がある患者さん、妊娠希望のある患者さん。

CSIIやSAPでメリットに感じていること、また、CSII導入手順等を教えてください

CSIIは血糖コントロールが改善したり、低血糖が減ったりというメリットがあるが、患者さんのQOLがあがることが一番のメリットだと思います。SAPになれば、血糖推移が分かることから、低血糖不安などが強い患者さんには特に有用だと思います。

CSIIの導入手順としては、導入前から資料などを用いて、ポンプの事を理解していただきます。そして、まずはポンプを装着してもらい、ボーラス手技の獲得、その後絶食試験を行いながらベーサルインスリンを適正な量に設定します。また導入当初から安全面の指導としてトラブルシューティングをしっかり行います。使用に慣れてきたら、Wizard機能など便利な機能を追加していきます。

導入に際しての課題、悩みなど
導入の課題としては、導入に時間がかかること、および知識提供をしっかりと行うということです。チーム医療により、様々な角度からサポートすることで課題は解決すると考えます。
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神戸大学医学部附属病院 糖尿病内分泌内科学部門 ▶

2016年05月 公開

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