インスリンポンプ情報ファイル
インスリンポンプ療法体験談 体験者の声 PART2
80歳からのインスリンポンプ療法 「SAPを使用して」
投稿者:T.M.さん
主治医:廣田 勇士 先生
(神戸大学医学部附属病院 糖尿病内分泌内科 助教)
作品テーマ
日常生活にまつわる話題
T.M.さんのプロフィール
年 齢
84歳
性 別
男性
職 業
無職
病 態
1型糖尿病
糖尿病歴
17年
CSII療法歴
3年4カ月
使用製品
ミニメド620G

 今年で84歳という高齢患者のポンブの日々を知ってもらいたく、投稿しました。私の糖尿病がわかったのは今から16年前の2000年、68歳のときでした。その後、71歳でペンタイプでのインスリン注射療法を開始しました。それまでは勤めのため、職場の出張・接待等の時の食前測定や注射が人前でやりづらく、場所探しや低血糖に対する恐怖でこの先どうなるのかと悩んでいました。そんななか遂に、2010年7月、78歳のとき、1型糖尿病であることが判明しました。教育入院で1型糖尿病治療のことを本格的に勉強し始めましたが、内容がわかってくるほどに糖尿病が侮れない病であることが良くわかり、インスリン療法に率直に取り組み、日々のデータを取り、それを反映してきました。

 そして、2013年(81歳)の春から、インスリンポンプ「パラダイム722」 療法をスタートしました。機器の表示が英文だったため、当初少し戸惑いがありましたが、先生や看護師さんの指導を受けながら、なんとか使いこなせるようになりました。悩んでいた暁現象も無くなり カーボカウントの方法を覚えることによって食事の際に注射するインスリン量がある程度把握できるようになりました。HbA1cは、7.5%前後ですごしていました。さらに2015年には、CGM付きの新型インスリンポンプ(SAP)が日本でも使えるようになったことを知り、すぐ着用を希望。早速、3月から使用を開始しました。

 SAPは、グルコース値とグラフがいつでも見られることや、アラート機能で必要に応じて補正や補食を行えることが大きなメリットと感じています。特に就寝中の低血糖に対するアラームには助けられ、恐怖が無くなりました。高齢のためか皮下脂肪が少なく、センサーやカニューレの挿入部位の範囲が限定され少し困っています。物忘れなのか、CSIIのみのときには3日毎のカニューレの交換を忘れて慌てることがありましたが、SAPになり通知機能を使うことでそれも無くなりました。

 現在は夕食時に軽く晩酌(焼酎)のお湯割りをつまみと共にゆっくりと楽しみ、その後食事(米飯)にしているためか食後血糖値が高くなって困っていましたが、「デユアルウエーブ」でノーマル&スクエアの比率や持続時間の幅を変えながら、記録を取り、挑戦しています。このように、まだ使いこなし方を勉強している毎日で、血糖値の安定に努力していますが、今一つ思うようにはなりません。少しずつ良いコントロールになってきましたが、もう少し勉強して今は7%台のHbA1cを6%台にしたいと思っています。受診日には1か月間のデータが入手できるので、問題がどこにあるのか、なぜそのような問題が起こるのかを先生や看護師さんと振り返り、問題解決に努力しています。

 このように80歳を過ぎて、「SAP」に助けられ、充実した日々を送っています。これからも、いろんなことに挑戦して、元気で過ごしていきたいと思います。

主治医より
廣田 勇士 先生
神戸大学医学部附属病院 糖尿病内分泌内科 助教

 私とT.M.さんの出会いは約6年前になります。糖尿病のコントロールが難しいという事で、当院に来られましたが、その際にインスリン分泌が全くなくなっている1型糖尿病であると正式に診断されました。当時78歳とご高齢ではありましたが、非常にお元気で、「1型糖尿病のことをよく知りたい。コントロールをしっかり出来るようになりたい」と意欲的だったことを覚えています。その後、私の外来に通われるようになりましたが、エクセルで日々の血糖推移を表にして、毎回ご持参いただきました。

 CGMのデータをイメージしてか、線でつないだグラフにして、「お酒飲んだら、こんな風に上がるんやなあ」というように、いつも実践されたことを振り返っておられました。そんなお姿に感動しておりましたが、「今度はポンプしたい!」とポンプに興味を示されるようになりました。周りにポンプ療法をしている患者さんがたくさんおられ、患者会でも意見交換されていたので、彼にとっては、次の治療ステップとして当然の選択なのかもしれません。

 しかし、当時80歳を過ぎておられましたので、私自身、ポンプ導入に安全性も考慮して少し不安を感じていました。ただ、あまりの熱意に根負け?して、81歳で導入を決意しました。当初は少し戸惑われた様子でしたが、チーム医療でサポートさせていただいたこともあり、その後は、何のトラブルもなく、きっちりと安全にポンプを使いこなされています。そんな経験を、1型患者会「DMF KOBE」で「おじいとポンプ」というユニークな演題名で語って下さったこともありました。

 SAPがでてくれば、当然SAPへ移行するんだろうなと思っていましたが、案の定、SAPを希望され、現在に至ります。80歳を過ぎても、どんどん進化しているお姿に感服するばかりです。T.M.さんには、ポンプができるかどうかは、年齢の問題ではないのだということを教わりました。「ポンプをしたい。SAPをしたい」という気持ちがあれば、必ず使いこなせるようになると思っています。ますますチャレンジ精神旺盛な「おじい」のチャレンジのお手伝いを、今後もしていきたいと思っています。

導入医師データ
廣田 勇士 先生
神戸大学医学部附属病院 糖尿病内分泌内科 助教
CSII導入患者数(年間)
20〜30名
CSII療法導入歴
10年
どのような患者さんに導入を勧めますか? 選択のポイントを教えてください

■CSII:
CSIIを望む1型患者さん、特に暁現象がある患者さん、低血糖が多い患者さん。

■SAP:
血糖変動に興味がある患者さん、無自覚低血糖のある患者さん、低血糖不安がある患者さん、妊娠希望のある患者さん。

CSIIやSAPでメリットに感じていること、また、CSII導入手順等を教えてください

CSIIは血糖コントロールが改善したり、低血糖が減ったりというメリットがありますが、患者さんのQOLがあがることが一番のメリットだと思います。SAPになれば、血糖推移が分かることから、低血糖不安などが強い患者さんには特に有用だと思います。

CSIIの導入手順としては、導入前から資料などを用いて、ポンプの事を理解していただきます。そして、まずはポンプを装着してもらい、ボーラス手技の獲得、その後絶食試験を行いながらベーサルインスリンを適正な量に設定します。また導入当初から安全面の指導としてトラブルシューティングをしっかり行います。使用に慣れてきたら、Wizard機能など便利な機能を追加していきます。

導入に際しての課題、悩みなど
導入の課題は、知識提供をしっかりと行うためには、導入に時間がかかるということです。看護師、管理栄養士、検査技師なども含めたチームで携わり、様々な角度からサポートすることで課題は解決すると考えます。また、導入後も、慣れるのに時間がかかることもありますので、外来でのサポート体制が非常に重要だと考えています。
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神戸大学医学部附属病院 糖尿病内分泌内科学部門 ▶

2016年11月 公開

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