会の歩み
糖尿病治療研究会30年の歩み
糖尿病治療研究会代表幹事 池田 義雄糖尿病治療研究会は、1980年(昭和55年)にスタートした。当時、日本糖尿病学会は既に20年余の歴史を有し、そこでの学術発表は年毎に高度なものとなっていた。しかし、学会活動が臨床の現場のニーズに対応し得る範囲は、極めて限られていることが第一線を預かる臨床医にとっては不満の残るところであった。このような背景において、「糖尿病の治療に関する理論と実際について、基礎ならびに臨床の双方からこれを追求し、適正な糖尿病治療の確立と普及を目指す」という必要性が、新たな研究活動を胎動させた。
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第一目標は運動療法に
研究会をスタートするに際して、8名の幹事が置かれた。そして当初の目的を「糖尿病の運動療法」におき、運動生理学の専門家2名を含めた8名が、この新たな研究会活動に参画した。なぜ運動療法だったのかというと、糖尿病学会の学術発表の中でも運動療法はマイナー中のマイナーであったという実情、そして食事療法と並び称せられる運動療法も、臨床の現場における指導体制は貧弱を極めていたという実態があったからにほかならなかった。そこで、研究会としては運動療法の理論と実際が正しく理解され、且つ適正に指導されることを目的に「てびき書」の作成を意図した。これには、第1回から第3回までの研究会における発表内容を盛り込む形で、それぞれの幹事による分担執筆がなされ、発足から4年目の1983年(昭和58年)5月に「糖尿病運動療法のてびき」が刊行される運びとなった。この内容はメディカル、コメディカルを対象としたものであり、1988年(昭和63年)2月の改定第2版の分を含め4万部の販売実績を残している。
そして、患者向けとしては1988年(昭和63年)5月に「糖尿病の運動療法ガイド」が編纂され、これによってわが国における糖尿病運動療法指導基盤が出来上がった。これは研究会の当初の業績として高く評価されるところである。
図2 糖尿病運動療法のてびき 医歯薬出版, 1983. |
図3 わかりやすい糖尿病の運動療法ガイド 医歯薬出版, 1988. |
時宜を得て開催された3つのジョイントシンポジウム
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こうして振り返ってみると糖尿病治療研究会活動は、当初の目的通り、正しい糖尿病治療の確立と普及に向けて、国の内外の力を結集した形で展開されてきたことがよく理解出来る。
成果の全容はプロシーディングと「プラクティス」に
第1回研究会への参加者は68名であった。そして米国からHorton を招いての1989年(昭和63年)12月開催の第10回研究会の「糖尿病運動療法記念シンポジウム」には、304名の参加者を数えた。研究会における発表内容は漏れなくプロシーディングに原著として取りまとめられ、これは第9巻まで刊行された。一方、ジョイントシンポジウムや研究会におけるパネルディスカッションについては、1984年(昭和59年)4月、本研究会によって企画され、医歯薬出版より刊行された「プラクティス」に掲載してきた。プラクティス刊行の経緯と流れ
プラクティス創刊の言葉は「今、なぜプラクティスなのか」であった。目指したところは「糖尿病の診断、治療、管理並びに患者教育、生活指導などについて、その名の如くプラクティカルな内容に徹した研究や情報の提供を目指します。同時にメディカル、コメディカルスタッフのための経験交流の広場となることも願っています。」であった。糖尿病治療研究会が、この「プラクティス」(1984年・昭和59年)を創刊するに至ったのは次のような理由によった。即ち、トップレベルの研究発表集会を持つことの意義も極めて大であるが、更に重要なことはグラスルートともいえるコメディカルを含めた医療スタッフの糖尿病診療における、レベルアップを図るための新しい情報誌を持つことの必要性を認めたからにほかならない。このような情報誌の提供こそは、患者サイドに立った医療の充実に欠かせないところであり、この信念において糖尿病治療の正しい理論と実際についての理解を容易にし、且つこれを実践に供し得る糖尿病の臨床総合誌ということで、医歯薬出版KKより、正に生まれるべくしてうまれたのが、この「プラクティス」であった。季刊でスタートした「プラクティス」も、10年目からは隔月刊となり、これに加えて年2回の別冊号もスタートした。第10回記念シンポジウムの全容もプラクティス別冊号に特集されている。
なお「プラクティス」は1994年(平成6年)の第11巻1号からは(社)日本糖尿病協会にこれの編集が移譲され今日に至っている。
「糖尿病インスリン療法のてびき」と「糖尿病運動療法のてびき」(新版)の出版
第10回研究会の後、研究会はインスリン発見70周年を踏まえて、進歩の目覚ましいインスリン療法の更なる普及を目指して、「糖尿病インスリン療法のてびき」を編集しこれを出版している。そしてこれの出版と連動するかたちで1990年(平成2年)4月、北米からZinman, Lebovits, Nathanを招き、平田、繁田の参加をも得て「Tokyo Insulin Symposium」を関東インスリン懇話会との共催で開催している。この内容については別冊プラクティス(1991年)にて取りまとめている。以上のような研究会活動をもって、当初に掲げた目標の達成が得られたということで、このあと研究会活動はしばらく休止をすることとしたが、発足から20年目に入った1999年(平成11年)7月、研究会幹事に新たなメンバーを加えて、次に述べる「医療スタッフのための糖尿病セミナー」の開催と運動療法の進歩を踏まえての「糖尿病運動療法のてびき」改版のための編集作業に取り組むこととした。そして新たな執筆陣のもと2001年(平成13年)4月、新版「糖尿病運動療法のてびき」の出版に至っている。
図5 糖尿病インスリン療法のてびき 医歯薬出版, 1990. |
図6 糖尿病運動療法のてびき 医歯薬出版, 2002. |
「医療スタッフのための糖尿病セミナー」の開催と「We are up for Self Care Award」の制定
1999年(平成11年)5月に日本糖尿病療養指導士認定機構がスタートした時点、既にわが国における糖尿病患者の増加は、大きな社会問題でもあった。このような中で求められるところは、糖尿病医療の充実とともに糖尿病患者の1人1人が、より良いセルフケアの実践で合併症の発症を防ぐことである。そして、医療スタッフとしては、数多くの糖尿病予備軍に対して「医療スタッフのための糖尿病セミナー」は、医療スタッフ1人1人の知識や技能の向上、更にはその効果が患者やその
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- 医療スタッフ(看護師、薬剤師、臨床検査技師、管理栄養士・栄養士)によって行なわれた糖尿病患者のセルフケアを支援する活動業績を評価の対象とする。
- 贈呈は毎年5件以内とし、その受賞者からMVP(最優秀者)を1名決定する。
Awardは賞状および賞脾とし、MVPには副賞を添える。 - Awardは日本糖尿病学会年次学術集会最終日において贈呈される。そして、医療スタッフのための糖尿病セミナーにおいても紹介される。
「糖尿病情報Box&Net」刊行への協力とウェブサイトの開設
今やインターネットは誰にとっても非常に身近な存在である。そして糖尿病医療に関連した情報の収集にもこの手段は年ごとにその有用性を増している。また、糖尿病医療の進歩とこれに関連した情報の多さには目をみはらされるものがある。このような世界に身を置くものにとって新しい情報の入手ルートの確保と、学習のための手段としてのインターネットの活用は今や欠かすことができない。インターネットの特徴は、自分の都合のいい時間に、最新の情報が、また専門的な詳しい情報や関連情報が海外情報も含め、居ながらにして入手できることにある。しかしその一方で、従来からの印刷物(紙媒体)による情報入手もおろそかにできない。誰もが特別な機器を必要とすることなく手軽に手にとって読める点や情報の一覧性、そして持ち運びが容易な点などで優れている。本研究会が発足から25年を迎えた2004年(平成16年)、「糖尿病情報BOX&Net.」(提供:(株)三和化学研究所)が刊行されることとなった。糖尿病治療研究会としては、進歩を続ける糖尿病医療の世界に働くスタッフにとって、医療情報の入手や学習のための手段として有益なものになるという考えに立ってこれの刊行に向けて「監修・企画協力」をすることにした。そしてこれと連動する形で糖尿病治療研究会としてのウェブサイト(http://211.16.227.160/rgtd/)を開設した。
「糖尿病情報BOX&Net.」には紙面の都合上掲載できる情報量は限られている。紙面上では、できるだけ多くの情報項目をダイジェストした形で掲載しているところから、更に詳しい情報、或いは関連情報を知りたい際には、糖尿病ネットワークの該当コーナー(http://211.16.227.160/box/)のチェックが勧められる。
又、ネットの双方向性を生かし、糖尿病ネットワーク上に登録している糖尿病患者さん(約11,000名)と医療スタッフ(約8,500名)にアンケートを実施し、その結果を「糖尿病情報BOX&Net.」と本研究会のウェブサイトの双方に発表するという、新しい試みも実施される。糖尿病医療の発展とインターネットの普及といった環境変化のなかで、このようなネットと連動した新しいタイプのニュースレターが誕生するにあたり、医療スタッフには「糖尿病情報BOX&Net.」刊行の趣旨をよく理解され、上手に活用されることを願うものである。
「シーズナルポスト」刊行への協力
2009年(平成21年)8月より「糖尿病合併症 最前線「シーズナルポスト(http://211.16.227.160/seasonalpost/pdf.html)」(提供:科研製薬(株))が「糖尿病ネットワーク」によって年4回発行されることになった。これは医師向け冊子であり、糖尿病合併症に関する最新情報を取り上げるということを踏まえて、これの監修・企画に関する協力を糖尿病治療研究会として引き受けることとした。発足30周年記念事業としての「糖尿病リソースガイド」(web版)の創設
2009年(平成21年9月)糖尿病治療研究会は発足30周年記念事業として、(財)日本糖尿病財団(理事長 金澤康徳)、並びに日本医療・健康情報研究所による協力のもと、医療スタッフ向けの情報サイト「糖尿病リソースガイド(http://www.dm-rg.net/)」を開設した。本サイトは、糖尿病医療に携わる医師ほか医療スタッフ並びに企業人向けに、関連する薬剤、医療機器、食事や運動などの療養指導に役立つ製品やサービスの情報を収集、編集し提供することを目的にしたものである。これのコンテンツは3部構成で、第1部の「医薬品・医療機器・検査機器・試薬」のコーナーでは、新薬からジェネリック医薬品まですべての関連医薬品を分類・紹介することで、薬価までを含め各製品が比較検討できるようになっている。より詳しく知りたい場合には、添付文書も閲覧できるようになっている。
第2部は「食事療法・運動療法・生活サポート」のコーナー。そして第3部の「関連情報・資料」のコーナーでは、糖尿病に関するさまざまな資料・情報にリンクしていることで利用者への便宜が図られている。
以上、本研究会の流れを概略した。今後とも糖尿病医療の向上に役立つことを目指して行きたい。皆様方のご支援とご協力を願うものである。(2010年・平成22年5月)
糖尿病治療研究会構成者名 / 発足時(1980年・昭和55年)
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2010年05月更新



