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海外の糖尿病事情 1

2004年06月

DITN 2004年6月5日発行号掲載:「海外糖尿病事情」より

医療スタッフ向けの情報紙『DITN(DIABETES IN THE NEWS)』(発行所:メディカル・ジャーナル社)に連載された「海外糖尿病事情」よりご紹介します。
 海外の糖尿病事情というと、欧米諸国の状況を思い浮かべる人が多いと思います。そして、欧米諸国では、治療費の患者の自己負担が少なく、治療技術面でも日本より進んでいて、糖尿病患者に対する社会の理解も進んでいて・・・と、私が知る限り、日本の糖尿病患者から見ると羨ましく思える状況が紹介され、日本の糖尿病患者の大変な状況が強調される感があります。少し前に話題となった、世界100人村ではありませんが、世界の人口は約8割が途上国の人で占められています。糖尿病は賢沢病であり途上国には存在しないというイメージが世間一般の人たちは持っていると思います。入手可能なデータを元に推測すると世界の糖尿病患者の約75%が途上国に住んでおり、世界のインスリンの約75%は先進国の約25%の糖尿病患者によって消費されていると言われています。

 海外に旅行する際、1型糖尿病患者である私は、各国の糖尿病事情に関心を持たざるを得ない状況にあります。万が一の場合、インスリンを現地調達できるかということが最大の関心事です。数年前、フィリピン人の、1型糖尿病患者と知り合い、彼を訪ね、フィリピンの1型糖尿病患者の状況を垣間見る機会を得ました。日本のような保険システムが無く、インスリンは全額自己負担という状況で、使い勝手が良いにもかかわらず、「ペン型注射器は空打ちなど無駄が多いため、1滴たりともインスリンは無駄にできないから使わない」と言いながら、ほとんど空に近いインスリンのシリンジから私が20年ほど前に使っていた使い捨てタイプの注射器(それも使いまわしの注射器で)で吸い取ってインスリン注射をしている姿を見て、大変なショックを受けました。その友人と彼の主治医の話では、同国では、1カ月のインスリン代が平均的労働者の月収に相当するということで、治療を受けることができずに命を落とすという話を聞き、やはり大変なショックを受けました。

 その他の途上国でも長期にわたって治療が必要になる糖尿病患者の負担は大変重いことを知る機会がありました。普通に治療を受けることができ、生き延びることが可能な現在の日本にいると、その有難みを感じることができないのが実情だと思います。食糧問題や紛争などの問題を含め、個人の力では“医療格差の是正”の根本的な解決が不可能\\\であることは、周知のことです。しかしながら、糖尿病に関わる者の一人として糖尿病という“世界的な問題”の解決に、たとえ微力でも取り組むことで、日本がいかに恵まれた治療環境にあるかを認識し、また同時に日本が抱える問題もより具体的に見えてくるものと思われます。「情けは人のためならず」という諺がありますが、国際糖尿病支援基金では、金銭的な支援を通じて、特に糖尿病であることを後ろ向きに捉えがちな日本の皆さんへ、途上国の糖尿病治療状況を知る機会を提供させていただけれぱと考えています。


©2004 森田繰織
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