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海外の糖尿病事情 3 [ アフリカ ]

2004年10月

DITN 2004年10月5日発行号掲載:「海外糖尿病事情」より

医療スタッフ向けの情報紙『DITN(DIABETES IN THE NEWS)』(発行所:メディカル・ジャーナル社)に連載された「海外糖尿病事情」よりご紹介します。
アフリカ編

 アフリカというと、経済的な発展から取り残されたアジアの国々と同様、糖尿病で苦しむ人々が存在するというイメージが湧きにくいかもしれません。糖尿病の原因と有病率・発生率について更なる疫学的な研究が必要であることは言うまでもありませんが、アフリカにおいても糖尿病に苦しむ人々は少なくありません。長く内戦が続き、独立してまだ10年というエリトリアでは、完全社会主義体制の下、住居・衣服・教育・医療など生活に必要な費用は、食費を除き国が負担するという状態であっても、糖尿病専門医はデンマークでたった2週間の研修を受けただけの医師がただ一人、インスリンは恒常的に不足しており、アニマルインスリンが主流で、地方では部族の言葉が理解できる医師も看護師もいないというレベルで、それでも、伝統的な遊牧生活から定住生活・欧米化の波が押し寄せ、人々はライフスタイルの変化に適応するために相当なストレスを抱えており、それが糖尿病を引き起こす大きな原因となり、患者は急増しているものの、治療体制は追いつけない状態で、1型糖尿病患者の5年生存率は、ゼロに等しいとの話を聞きました。

 隣国のエチオピアにおいても、都市部では、地域ごとの診療所で糖尿病との診断を受け、自治体の認定を受け、国立病院の患者として登録されると、治療費、薬代も含めて全て公費負担となるものの、全ての薬剤を輸入するにあたり、使用期限が最低1年以上なければならず、関税もかかるため、資金不足で常にインスリンは不足状態です。そのため、無駄が多く、高価なペン型注射器は使用できず、昔ながらの注射器を使用しています。地方の医療施設では、一人の医師が1日100人もの患者を診察しなけばならない状態で、人々は40〜100km離れた医療施設まで徒歩かせいぜいロバの背に乗って行かなければならず、労働人口の生産性を低下させる原因にもなっています。同国の患者の話では、以前から、糖尿病患者は多く存在したものの、医師・患者双方とも知識が不足し、診断される機会がないまま死亡するケースが多いのが実情のようです。

 ガーナでも糖尿病外来の待合室は診療時問前から満員御礼状態で、患者達の話を聞くと、合併症が出てから診察を受けるケースがほとんどで、2型であってもインスリンを使用したほうがより良いコントロールが可能と分っていても、経済的余裕がなく、必要最低限の治療に甘んじているのが実情のようです。同国では、マラリア・結核・エイズなど急性・感染症に対しては国の保険が適用されるものの、糖尿病を始め慢性疾、患は全額自己負担となります。\\n
 国際保健の立場からも急性・感染症が優先されてしまい、、患者は決して少なくないにもかかわらず糖尿病の存在が知られていないのが現状です。衛生状態、気候的な面からも、糖尿病患者が重度の感染症を起こしやすいとのデータもあります。アフリカ諸国では、印刷物が大変貴重なため、病院の待合室でさえ食品交換表を始め糖尿病治療に関する書物はおろかパンフレット類もありません。識字率や多言語社会と言う問題もあります。\\n
 因みに南アフリカ共和国では、主要言語だけでも8言語にもなり、また糖尿病患者が多い高齢者は識字率があまり高くない事情があります。そのため、就学前の児童でも理解できるレベルのイラストを多用した治療指導案内を8言語で作成しているということです。

 入手可能な資料で見ると、1型糖尿病有病率についてはGDPの高い豊かな国々で比較的高く、アフリカ諸国を中心にGDPの低い国々で比較的低く、2型糖尿病についてはGDPと有病率には全くと言ってよいほど相関はありません(詳しくはhttp://153.122.1.181/idaf/sally/thesis/06-29.pdf参照)。この結果は、糖尿病が決して“賛沢病”なのではなく、人類共通の問題であることを示しているものといえます。

 アフリカ諸国においても近年、人道援助の名の下に一時的に恩恵を受けることから、開発援助という形で将来に向けて発展・自立に繋がる交流を求める動きが出てきています。糖尿病をはじめ長期的視点で取組まなければならない慢性疾患の治療においては、患者自身の自立的取組が必要不可欠です。糖尿病を通じての“援助”が将来の長期的な発展・自立へとつながり長期的な相互交流へと発展することを祈る次第です。


©2004 森田繰織
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