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海外の糖尿病事情 8 [ ボリビア ]

2005年11月
DITN 2005年11月5日発行号掲載:「海外糖尿病事情」より

医療スタッフ向けの情報紙『DITN(DIABETES IN THE NEWS)』(発行所:メディカル・ジャーナル社)に連載された「海外糖尿病事情」よりご紹介します。
 ボリビアというと、ラテンアメリカ独立の父とされるシモン・ボリーバル(彼自身は、ベネズエラ人)から名付けられ、チェ・ゲバラの臨終の地というほかは、特に有名な観光スポットがある訳でもなく、あまり日本人に馴染みが無いかもしれません。インカ帝国の支配下にあったこともあり、文化的・民族的には、チチカカ湖の対岸ペルーと似ている面が多々あると思います。スズ・亜鉛を始め豊富な地下資源に恵まれていますが、長らく政治的に不安定な状態が続いた影響で、経済的指標からすると南米諸国内で最貧国の一つと言えるでしょう。

 今回は、ラパスから400キロほど離れた、人口およそ100万人を要する都市、コチャバンバ市のThe Center to Live with DiabetesというNGO団体で糖尿病患者への教育及び支援活動をしている方々への聞き取り調査を元に得られた情報として提供させて頂きたいと思います。

 同国の成人糖尿病有病率は、1998年時点で7.4%で、多くは2型糖尿病と推定されます。同団体に登録されている会員は、1,000人を超え、うち300人は1型糖尿病の児童・青年期の若年者です。同団体の構成員は、内分泌医4人、看護師2人、栄養士兼糖尿病エデュケーター・臨床心理士兼糖尿病エデュケーター・糖尿病エデュケーター・ソーシャルワーカー・薬剤師各1人他、事務員・調理師などのスタッフです。

 内分泌医は、常勤では無く、必要に応じて来るそうです。スタッフ達は、ラパスにあるセンターで経験を積んだ後、配属されます。

 糖尿病治療費用について、例を挙げると

・インスリン10mL、U-100あたり
NPH:US$14.8、
Crtstalline:US$14.8、
Mixtard30/70:US$17、
Lantus:US$60
・注射器 8本US$1
・グルコメーター US$80〜US$100
テストチップ
50枚 US$28〜US$75
・診療費用 US$15〜US$20
・グルカゴン 1セット US$50
(慢性的に在庫切れ状態)
という回答が得られました。

 同団体は、会員の所得状況に応じて、支払いを要求するそうですが、多くの患者さん、特に1型糖尿病でインスリンが必要な場合、ほとんど無料で提供せざるを得ない状態だそうです。同国の最低賃金は、月収59.25米ドルです。もちろん、居住している地域や職業によってばらつきはあります。同国では、一部の大企業勤務者とその家族を除き、保険医療制度はありません。しかしながら、その一部の大企業勤務者たちの保険もインスリンと経口血糖降下薬まではカバーされるものの、グルコメーターやテストチップまではカバーされません。

 インスリン、注射器、グルコメーター及びテストチップなど必要器材は、オーストラリアのNGO団体「インスリン・フォー・ライフ」とドイツのNGO団体「インスリン・ツム・レーベン」からの提供に頼るしかない状態だそうです。現在では、既に市場に出回っていない、40Uのインスリンでさえ、同団体にとっては貴重であるゆえ、インスリン・フォー・ライフにある在庫を提供してもらうことで、不足分を補っているということでした。

 とにかく、資金難が深刻で、同団体のスタッフへの人件費と地代を捻出すること自体、大変困難ということです。日本も含めた外国政府からの資金援助を受けようにも、土地を所有していることが条件とされているため、なかなか援助受けることができず、悪循環に陥ってしまっているそうです。

 海の無い内陸国である同国では、入手可能な食材が豊富とは言えず、食事療法についても、必要な栄養素を全て摂取することが困難であることも問題としてあげていました。
 今回の聞き取り調査中、同団体のスタッフが、とにかく資金難ゆえに外国からの援助を頼らざるを得ないということを、繰り返し訴える口調で話してくださったことがとても印象的でした。そして、日本の皆さんにも、この状況を是非伝えて欲しいと言われました。
©2005 森田繰織
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