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ベトナム・ハノイへの旅

2010年11月
 2010年のゴールデンウィークに、ベトナムの首都であるハノイへ行きました。昨年のゴールデンウィークは新型インフルエンザが拡がり、海外旅行のキャンセルが相次いでいましたね。

 ハノイでは、GHPトレーディング社代表 ダン キム アインさんにお世話になり、彼女のはからいで、ハノイ医科大学病院の糖尿病専門医であるビン先生とお会いし、ベトナムの糖尿病事情についてお話していただきました。

 日本人の感覚では、ベトナムのような途上国には、糖尿病はほとんどないというイメージが強いかもしれませんが、近年の食生活や交通手段を始めとする生活スタイルの変化の影響で、すごい勢いで糖尿病患者は増加しているそうです。

 ベトナムでは、医師を始め、医療従事者でさえも、糖尿病に対する知識が無く、適切に診断されず、また、たとえ糖尿病と診断されても、適切な治療を施すことができないケースが多いそうです。そのため、眼・腎臓・足に合併症が出てしまうケースが多く、また、合併症が出て、初めて糖尿病に気づく医師や患者も非常に多いということです。

 社会全体においても、糖尿病に対する認識も理解もされておらず、患者は差別や偏見に苦しむケースも多いと聞きました。

 ビン先生のお話では、「資金や薬剤といった物質的な支援よりも、医師を始めとする医療従事者だけではなく、患者や家族、学校や職場、そして社会全体に、糖尿病に関する正しい知識と理解を広めるための知恵や取組みが大切」とのことで、そのための協力を日本に期待しているとのことでした。

 ビン先生からベトナムの糖尿病治療について、お話を伺いました。

ベトナムの糖尿病有病率 全人口約500万人
・1999年ホーチミンとハノイで0.9%〜2.5% フエで0.5%
・2002年全ベトナムでは2.2% 都市部では4.4% 地方では 2.5%
ハノイだけで7%(大阪大学の協力により実施)
・2008年全ベトナムでは5.7% 都市部では7〜10%
* 1型患者は全糖尿病患者中5〜10%で全人口の1%以下(推定)

ベトナムの医療保険
  • 2009年10月に健康保険法が施行され、新たな健康保険証が発行され6ヵ月が経過しているものの、自治体との連携が上手く機能しないなどの問題もあり、保険者の手に渡っていないのが現状
  • 本法律により人口の約85%が保健医療を受ける事が可能とされる
  • ビン先生の話では、勤務者は保険加入がスムーズに行われているものの、ベトナムの人口の大半は農民であり、なかなか普及しない可能性が懸念があるとのこと

 キム アインさんとハロン湾のクルージングを楽しんでいる時、船の中の売店の女性と話をしました。彼女の14歳の甥っ子さんが、3ヵ月前に1型糖尿病と診断され、経済的な理由で治療も困難ということでしたが、それ以上に本人が非常にショックを受け、落ち込んでしまい、部屋に閉じこもりがちになってしまったとのことでした。

 私も15歳で発病し、その後、落ち込んだり、悩んだりしたことがあったものの、無事に学校を卒業し、就職し、30年近く合併症も無く、普通に生活ができていること、糖尿病になったおかげで、多くの良き友人に恵まれてきたことを話しました。

 私だけではなく、日本を始め、世界中に苦しいながらも糖尿病をもちながら、普通に生きている人たちが沢山いることも話したところ、甥本人だけでなく、姉夫婦にも話してみるという話でした。

 もし、糖尿病に関する情報が必要なら、キム アインさんに連絡してくだされば、必要に応じて日本の情報も提供できると話したところ、非常にありがたいと言ってました。

 今回は、キム アインさんの御主人のお知り合いで、ボランティアとしてハノイを中心に活動しておられる日本人の眼科医師である服部匡史先生とお話させていただく機会に恵まれました。

 服部先生のお話では、ベトナムの患者さんでは、失明寸前または失明してしまってから服部先生のもとを訪れ、糖尿病であることが発覚するケースが非常に多いということです。また、先生が手術も含め、眼科治療を施してきた患者さんの多くは、糖尿病が原因であるとのことでした。

 当基金で何かお役に立つことができれば、微力ながら協力させていただきたいと申し出たところ、ベトナムの患者さんの現状について情報交換をしながら、できることを考えていきましょうというお返事をいただきました。


©2010 森田繰織
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