糖尿病セミナー

1. 糖尿病とは「基礎編」

2017年10月 改訂

糖尿病の治療

 糖尿病の治療は、合併症の発症・進行を予防するために高血糖を是正すること、つまり血糖コントロールがすべての基本となります。血糖コントロールの手段は、食事療法、運動療法、薬物療法の三つが柱となります。

食事療法

 糖尿病なら、食事療法は絶対に必要です。食事で余分なエネルギーをとってしまうと、それを処理するのは大変だからです。適切なエネルギー摂取量に抑えるほうが、血糖コントロールをより楽に行えます。実際、食事が乱れていれば、ほかの治療法の効果はあまり反映されません。その意味でも、食事療法は糖尿病治療の根幹となる治療法です。2型糖尿病の場合、厳格に食事療法を守るのであれば、7割以上の患者さんがそれだけでコントロールが可能です。
 具体的には病院で栄養士から指導を受けたり、講習会に参加するなどして、栄養バランスのとれた食事の仕方を覚えるようにします。「糖尿病食事療法のための食品交換表」を利用するのが標準的な方法です。
 最近では、糖尿病の治療に配慮されたレトルト食品、カロリー計算された食事・食材の宅配、栄養計算が簡単にできるPCやスマートフォンのソフトなどが出ています。

運動療法

 運動で体内に余分に溜まったエネルギーを消費すると血糖値は下がります。また、インスリンの細胞レベルでの働きが高まり(インスリン感受性が高くなり)、血糖コントロールがしやすくなります。さらに、血行がよくなる、ストレスが解消される、皮下脂肪が減る、骨格筋が増える、生活の活動度が高まるなど、多くの効果を得られます。
 運度の種類は、日常できるものならどんな運動でもかまいませんが、できるだけ全身を動かすものが勧められます。それまであまり運動をしていなかった場合には、次第に強い運動に移るようにしてください。週末だけに集中して運動するといった方法よりも、できれば毎日行できる運動を選びましょう。それには「歩くこと」が最も勧められます。

薬物療法

 食事療法と運動療法だけではコントロールがうまくできない時、薬物療法を追加します。経口血糖降下薬(飲み薬)を用いる内服療法と、インスリンなどを注射で補充する自己注射療法との、二つがあります。
 経口血糖降下薬は膵臓からのインスリン分泌を増やしたり、細胞のインスリン感受性を高めたりして、血糖値を下げます。インスリン療法は直接体外から補充したインスリンが、血糖降下を助けます。どの薬物療法をいつから始めるかは、患者さんそれぞれの糖尿病のタイプや病状、合併症の進行具合など、さまざまな要因を総合して決められます。

治療の成績を知る指標

 糖尿病は自覚症状に乏しい病気なので、治療がうまくいっているかどうかは検査を受けなければわかりません。血糖コントロールの具合を確かめるためには、次のような指標が用いられます。

血糖値

 血液中のブドウ糖濃度のことで、血液1デシリットルあたりのブドウ糖の量をミリグラムで表します。健康な人の早朝の空腹時の血糖値は100mg/dL以下で、食後でも140mg/dLを超えることはあまりありません。糖尿病の人も、なるべくこの値に近づけることを目標に治療します。

ヘモグロビンA1c(HbA1c)

 赤血球の中にあるヘモグロビン(血色素)のうち、ブドウ糖と結合している特殊なヘモグロビン(グリコヘモグロビン)の割合をパーセントで表した指標です。過去1〜2カ月間の血糖コントロールとよく関係し、ヘモグロビンA1c(HbA1c)が高ければ、その時点の血糖値が正常だとしても、1〜2カ月間は血糖値が高い状態が続いていたことになります。
 健康な人のHbA1cは4.6〜6.2%です。糖尿病でも、低血糖(血糖値の上下動と薬の効果が噛み合わず血糖値が異常に低くなる状態)を起こさずHbA1cを7%未満に維持できれば、合併症が起きにくいことがわかっています。

その他の指標

 このほかグリコアルブミンや1,5-アンヒドログルシトールといった指標があり、それぞれ多少意味あいは違います。また、糖尿病は高血圧や脂質異常症(高脂血症)も合併しやすいので、血糖コントロールの指標以外に、血圧やコレステロール、中性脂肪なども定期的にチェックしておいたほうがよいでしょう。

糖尿病は
自己管理が大切な病気です

 糖尿病では中途半端な知識や治療は、逆に怖い結果につながります。しっかりした指導を受け、正しい治療を気長に続けることが大切です。そして、糖尿病は自分をいかに強く制していけるか、克己心が必要な病気といえます。自分自身のために日々の自己管理を絶やさず、意志を強くもってがんばりましょう。

尿糖が出ていると糖尿病なのでしょうか?

糖尿病という名前から、尿に糖が出るのが糖尿病だと思い込んでいる人がいますが、これは間違いです。糖尿病でも尿糖が出ない場合もあり、尿糖が出ていても糖尿病でないこともあります。糖尿病の診断は、あくまで血糖値を中心に考えられます。
 だからといって、尿糖を測る意味がないわけではありません。血糖値を知る機会がなくても、簡単に自分でチェックできるという意味では尿糖検査は大切です。自分は大丈夫と思っている人は大食した1〜2時間後に、尿をとって試験紙につけてみてください。反応があるようなら要注意。本当に健康に近い状態ならば、食後といえども尿糖は出ません。
 なお、血糖値が正常なのに尿糖が出るのは「腎性糖尿」といいます。これは心配ありません。

薬を使い始めると糖尿病は重症なのでしょうか?

糖尿病の場合ほかの病気と違って、ひと口に重症とか軽症とかいうことはできません。一般には合併症をもつ患者さんほど重症度が高いと考えられます。薬物治療をしているからという理由だけでは重症とはいえません。飲み薬を飲んだりインスリン注射をしていても、血糖コントロールがよく、合併症がないのであれば、病気が重症だと考える必要はありません。

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