
監修・編集
東北大学名誉教授 後藤由夫先生
- なぜ食事療法が必要なのでしょうか?
- 食事療法こそ最高の特効薬です
- どこが“療法”なのでしょうか?
- 食品交換
表 について - これは簡単!よくわかる食事療法のコツ
― マスターのための7つのステップ― - 食事療法Q&A
- 運動すれば好物のケーキを食べられますか?
- アルコールはなぜいけないのですか?
- インスリン使用の場合に、食事療法で注意することは?
- 「低インスリン食」「グリセミック・インデックス」とはどういうものですか?
ステップ1 あなたに必要なエネルギー量を知る
ステップ2 あなたに必要な栄養量を知る
ステップ3 尺度を知る
ステップ4 配分を知る
ステップ5 交換のルールを知る
ステップ6 自分の食事をチェックする
ステップ7 食べたい献立に変える
なぜ食事療法が必要なのでしょうか?
そのわけは、糖尿病が、食事と密接な関係にあるインスリンの、不足や欠乏から起こる病気だからです。インスリンが不足すると、食べ物を通して摂取したぶどう糖などの栄養分が利用されなくなり、体の各細胞が栄養不良になります。一方、利用されないぶどう糖はどんどん増え続け、血液中にあふれてきます。その状態が高血糖で、これを放置すると、合併症が起きてきます。これを防ぐには、摂取する食べ物の量を制限し、各種の栄養分も不足しないよう、食事のとり方を変えねばなりません。その人に合ったエネルギー量にすることと、栄養バランスのとれた食事に切り換えること。それが食事療法です。
食事療法は、薬を飲むわけでもなくお金もかからないため軽視されがちですが、一番効果があり、またほかの治療法の効果も助ける、もっとも基本になる重要な治療法なのです。
食事療法こそ最高の特効薬です
糖尿病を根治する治療法がみつかっていない現在、糖尿病治療の最大の目的は、合併症のしかし、食事療法を確実に実行し、血糖コントロールをよい状態に保ち続ければ、合併症と無縁の生活も可
この治療法は、頭で理解しても、実行しなければ意味がなく、また、続けてこそ効果があります。それには、コントロールのよい状態がいかに快適かを、自分で実感すること。それが治療を長続きさせる秘訣といえるでしょう。発症して30年以上たっても合併症がなく、元気で活躍している人はたくさんいます。生半可な気持ちを捨て、自分の病気は自分で治す覚悟で、毎日食事療法に取り組むことが、糖尿病を克服する強い力となります。
どこが“療法”なのでしょうか?
食事療法といっても、特別な食事があるわけではありません。1日の摂取エネルギー量が制限されるだけ。あとは、炭水化物、たんぱく質、脂質の三大栄養素の必要量を、バランスよくとり、ビタミンやミネラルなども、欠かさずにとることが、治療です。つまり、それまでの食事のかたよりを改め、健康的な食事に変えることが目的なのです。また、この食事療法は、糖尿病でない人が、生活習慣病を食品交換表 について
食事療法でむずかしさを感じるのは、食品を選ぶとき、食品のもつ栄養素やエネルギー量が、各食品よって全部違うことです。その面倒な部分をわかりやすく交換
品
身長170センチで事務職の人の場合。 ●食品の分類
群 I II III IV 医師の許可が必要な食品 炭水化物を主として
供給する食品たんぱく質を主として
供給する食品脂質を主として供給する食品 ビタミンおよびミネラルを主として供給する食品 調味料、他 食 穀類、いも類、豆類(大豆およびその製品を除く)、炭水化物の多い野菜および種実類 果実類 
魚介、獣鳥鯨肉類およびその加工品、卵、チーズ、大豆およびその製品 
乳類および乳製品(チーズを除く) 油脂類および多脂性食品 野菜類(炭水化物の多い一部の野菜を除く)、海草類、きのこ類、こんにゃく 調味料、菓子・ジャム・アルコールなどのし好品、インスタント食品、外食料理 
日本糖尿病学会編「糖尿病食事療法のための食品交換
日本糖尿病協会/文光堂 2002年発行より引用し、まとめなおしたもの
これは簡単! よくわかる食事療法のコツ
マスターのための7つのステップ 
治療法自体は少しもむずかしくないのですが、実践の段階で、慣れるまでちょっと根気が必要です。そこで、食事療法のポイントを、思いきって7段階に整理し、1段階ごとにマスターすれば、簡単に食事療法の方法が身につくプログラムをつくりました。さっそく挑戦してみてください。 ステップ1 あなたに必要なエネルギー量を知る
血糖値の上がり過ぎをおさえ、正常な状態に変えていくためには、あなたが1日に必要なエネルギー量を正確に知って、それ以上の余分なエネルギー量をとらないようにすることです。1日に必要なエネルギー量は、年齢、性、身長、体重、活動量などを考慮して医師が総合的に決め、患者さんに指示します(指示エネルギー量といいます)。算出の方法もいろいろですが、ここでは最近よく使われている、肥満指数を使った計算方法を紹介します。
(1) まず標準体重を出す。
身長 1.7 × 身長 1.7 × 22 = 標準体重 63.5kg
(2) 必要なエネルギー量(指示エネルギー量)を出す。
標準体重 × 作業強度 = 指示エネルギー量
| ●身長でみるあなたの適正エネルギー
|
作業強度の目安は、成人では 25〜30kcal〈キロカロリー〉(肥満の人と高齢者の場合は25kcal。やせている人と若い人の場合は 30kcal を目安とする)。63.5×25=1587kcal。100 以下を四捨五入すると、1600kcal が適正な指示エネルギー量となる。
ステップ2 あなたに必要な栄養量を知る
1日に必要なエネルギー量の次に大事なのが、栄養のバランスです。とくに、炭水化物、たんぱく質、脂質の三大栄養素は、指示エネルギー量ごとに、1日の最低必要量が決められています。1600kcal の場合、炭水化物が 200g、タンパク質が 60g 以上、脂質が 30g 以上が1日に最低必要な目安です。また、ビタミン、ミネラル、食物繊維などを含むステップ3 尺度を知る
‘kcal(キロカロリー)’はエネルギーの尺度ですが、交換なぜ1単位が 80kcal かというと、私たちがふだんよく食べる食品の常用量が、80kcal 前後のことが多いからで、この単位を使えばエネルギー量の計算がしやすく、覚えやすいという利点があるのです。
食品1単位は、たとえば、御飯は小さめの茶碗半杯、食パン(6枚切り)は半枚、卵は1個、魚は切り身1枚といった具合。ただ、エネルギー量と重量は食品によって全部違うため、交換
品 ●1単位に相当する各食品の重量一覧
群 I II III IV 炭水化物を主として
供給する食品たんぱく質を主として
供給する食品脂質を主として供給する食品 ビタミンおよびミネラルを主として供給する食品 食 穀類、いも類、豆類(大豆およびその製品を除く)、炭水化物の多い野菜および種実類 果実類 魚介、獣鳥鯨肉類およびその加工品、卵、チーズ、大豆およびその製品 乳類および乳製品(チーズを除く) 油脂類および多脂性食品 野菜類(炭水化物の多い一部の野菜を除く)、海草類、きのこ類、こんにゃく 1単位 80kcal
に相当する各食品の重量 御飯50g、パン30g、ゆでうどん80g、ゆでそば60g、とうもろこし(芯つき)180g、もち35g、じゃがいも110g、さつまいも60g 
りんご(皮つき180g)、みかん(皮つき270g)、ぶどう(皮つき180g)、すいか(皮つき330g)、バナナ(皮つき170g) 
たら100g(大1切れ)、あじ60g(中1尾)、さけ60g(中2/3切れ)、豚肉のロース40g、牛肉のロース30g、卵50g、チーズ(プロセス)20g、納豆40g、とうふ(絹)140g(1/2丁)、ロースハム40g(2枚) 
牛乳120g、ヨーグルト(全脂無糖)120g 
バター10g、マーガリン10g、サラダオイル10g、マヨネーズ10g(大さじ軽く1)、ドレッシング20g、ベーコン20g 
炭水化物のやや多い野菜(にんじん、玉ねぎ、ごぼうなど)、炭水化物の少ない野菜(ほうれんそう、きゅうり、なすなど)1単位=300g、エネルギーのないもの(きのこ、わかめ、こんにゃくなど) 
日本糖尿病学会編「糖尿病食事療法のための食品交換
日本糖尿病協会/文光堂 2002年発行より引用し、まとめなおしたものステップ4 配分を知る
では、何を何単位食べたらよいのでしょうか。それには、1日に必要な栄養分を、各食事にバランスよく配分する必要があります。下の
たとえば、1600kcal の場合、1日に必要なエネルギー量は、
配分で大事なことは、栄養のバランスがかたよらないようにすること、また食事の回数は3食以上にし、単位数もなるべく均等に配分することです。朝食を抜き、その分夕食をたっぷりとるような配分の仕方は、血糖のコントロールを乱し、治療上好ましいことではありません。通常は、あなたに合った単位の配分を記した「単位配分

ステップ5 交換のルールを知る
食事療法を守りながら、毎日の献立に楽しみや変化をつけるには、交換の可
交換の原則は、同じ
また、調味料や酒、菓子などのし好食品は、エネルギー量が多く、コントロールを乱す原因になりやすいので、交換の対象にならず、使用には医師の許可が必要です。たとえば、フランスパン(
ステップ6 自分の食事をチェックする
献立をつくる前段階として、まず今食べているもののチェックをしてみましょう。食べたものの量を全部書き出し、それを
ステップ7 食べたい献立に変える
さあ、いよいよ仕上げの段階です。最後は、すでにある献立
(1) 御飯(3単位)
この献立の単位数は計6.4単位。これを同単位の洋風の献立に変えたい場合、たとえばこんなふうに変えることができます。
(2) 豚のしょうが焼き、粉吹芋、トマト添(2.3単位)
(3) コールスローサラダ(1単位)
(4) わかめと野菜の酢のもの(0.1単位)
パン(3単位)、マーガリン(0.5単位)
ロースハムと粉吹芋、トマトのつけあわせ(2単位)
生野菜のサラダ(0.8単位)
コーヒーのさとう(0.1単位)
![]() |
| 昼食 ↓ |
![]() |
では、交換の内容を具体的にみてみましょう。
調味料では、しょうが焼き用のさとう0.1単位(小さじ1杯弱)を→コーヒーに(0.1単位)。
洋風にした場合の食品の単位数は、計6.4単位となり、和風の献立の単位数とぴったり一致します。これで、交換が可
こうしたやり方をすれば、朝食、夕食の交換も簡単です。また、交換に馴れるにつれて、全部の献立を自分でつくることもできるようになります。これで、7ステップは終わりです。季節の変化や、みなさんの好みを取り入れた献立づくりに挑戦して、ぜひ食事療法をバラエティーに富んだおいしく楽しいものに変えてください。
| ●糖尿病20単位(1600kcal)献立例 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
朝食 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
夕食 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
間食または各食事に配分![]() | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
食事療法の効果を高めるアドバイス
| ● | ゆっくりとよく噛めば、腹八分でも満腹感が得られます。 | ![]() |
| ● | 6つの | |
| ● | 魚の油(EPA)は動脈硬化を防ぎます。魚も食べるようにしましょう。 | |
| ● | 血糖の急速な上昇を防いでくれる食物繊維もたっぷりと。 | |
| ● | 間食のエネルギー量も忘れずに計算に入れましょう。 | |
| ● | 迷信や民間療法よりも自分の食事療法を信じましょう。 |







