糖尿病からの危険信号「神経障害」


足に出る障害が最も多い

 では、どんな自覚症状に気をつけたらよいのか。詳しくは次のコーナーを参照していただきたいが、最も多い自覚症状は、しびれや痛みなどが中心の足の感覚異常だ。なぜ足に神経障害が出やすいのかというと、たくさんの神経の中で足の神経が最も長く、その分高血糖の影響をもろに受けるからだ。
 ただ、神経障害が怖いのは、初期の痛みは軽くても、病状の悪化とともに菊池さんのように激痛になり、最悪の場合、神経そのものが壊死することがあることだ。そうなると激痛はなくなるが、その部分の感覚もゼロになる。
 感覚がなくなると、日常のささいなことで怪我をしやすく、また感染症を併発したりすると、局所の壊死にとどまらず、その組織全部を切断しなければならない事態に発展することもあるのだ。

こんなとき、神経障害が始まっている
―自覚症状でみつける発症の可能性

  • 知覚神経系
  • 【足】 しびれ、痛み、冷え、こむらがえり
     ―注意点 両足とも同じ症状になる

    【手】 しびれ、痛み、冷え、など
     ―注意点 両手とも同じ症状になる

  • 自律神経系
  • 【心臓】 胸部圧迫感、胸やけ、吐き気
     ―注意点 無自覚性心筋梗塞の可能性がある

    【血圧】 立ちくらみ
     ―注意点 起立性低血圧の可能性がある。
           低血糖、脳貧血の可能性も確認する

    【胃腸】 胃もたれ、下痢と便秘を交互に繰り返す
    【膀胱】 膀胱炎を繰り返す。尿が溜まっても尿意を感じない
    【生殖器】 インポテンス

    からだの警報器が壊されてしまう怖さ

    「痛みがなくなったとき、本当に治って痛みがないのか、神経が破壊されて痛みがないのか、ここを正確に見極める必要があります。患者さんの中には、神経が死んで痛みがないのに、治ったと思ってしまう方もいて、神経障害の怖さを思い知らされます。
     神経障害というのは、神経という情報を知らせる機能が壊されるわけですから、自分のからだの本当の状態を、本人ですらつかめないところがこわいですね」。
     例えば心臓の知覚神経系が障害を起こすと、心筋梗塞を起こしても痛みを感じない。そのため、ふつうなら激痛で動けないところを、救急車に乗らずに歩いて病院にきてしまい、急速に予後を悪くしてしまう無痛性心筋梗塞などはよくあるケース。
     また、胃腸に障害が出ると、機能も鈍化して、消化器吸収が不規則になり、コントロールをますます悪化させる原因になる。

    予防と治療のポイント

      (1)一次予防としては、血糖コントロールをよくして、神経障害が出ないようにする。とくに足に出やすいため、毎日1回は観察する

      (2)強く神経障害が出てきた場合、血糖コントロールに全力投球し、主治医の指導のもとに障害に応じた対応をする
       また、神経障害を悪化させる酒、たばこはやめ、生活を改善し、健康的な生活を心掛ける


    時期を逃すと血糖コントロールも効かない

    「神経障害は、糖尿病からの警告です。自覚症状などの警報が鳴ったら、病状がどの程度なのかを、主治医と相談して把握して、まず、基本の血糖コントロールに全力投球してください。また、必要に応じて病状にあった注意も守ってください」。
     ただ、残念ながら、血糖コントロールにも限界があり、ある時期を逃すとコントロールしても回復しないことが多い。透析をしたり、網膜症が進んだり、壊疽で足を切ってしまったりした場合などは、コントロールをよくしても効果は望めない。
    「今コントロールをよくすれば間に合うというときには、医者は一生懸命忠告しているものですが、それを患者さんは『またオーバーにいって…』と軽視することがあります。チャンスを逃してしまって、後でブレーキをかけようとしても、後戻りはできないことを、ぜひ知っていただきたいですね」。
     渥美先生はこう忠告している。

    神経障害と診断されたら、怪我や事故に気をつけよう

    • たちくらみ 急に立ち上がらず、杖を使ったり、何かにつかまってから立つ習慣をつける
    • 入浴 いきなり湯船に入らず、手で湯加減を確認する
    • 暖房器具 カイロ、湯たんぽは使用不可。電気毛布、ホットカーぺットは使用注意。
    • トイレ 排尿を我慢しない。時間を決めて排尿する
    • 足のチェック 傷や炎症がないか、1日1回確認。乾燥させないようクリームで手入れ。軽石でこすらない
    (企画・構成 岩村有佑子)

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