糖尿病セミナー

28. 小児の糖尿病(2)日常生活Q&A

2002年6月 改訂
Q7朝、時間がなくて朝食抜きになってしまうことがあるのですが...
 原則的に、注射をする以上、食べなくてはいけません。しかし最近の調査では、中高生の半数以上が朝食を抜いているということです。もし、どうしても遅刻寸前の時間にしか起きられないのなら、おにぎりかなにかを作っておいてもらい、家で注射して、学校に着いたらそれを食べるようにします。ただ、超速効型インスリンを使用している場合や、速効型インスリンでも学校まで30分以上かかる場合、朝の血糖値が低い場合は、低血糖の心配があるのですすめられません。4回法(朝昼夕と就寝前に注射する方法)なら、朝のインスリンは打たずに行き、学校に着いてから注射して食べる方法もあります。

Q8誕生日やクリスマスパーティーでもケーキはがまんしないとだめですか?
 そんなことはありません。1年に1回の特別な日に、特別なことをしたいと思うのは当然なことです。ただ、ケーキを食べれば血糖値は上がりますので、あらかじめ速効型や超速効型のインスリンを少し多めに打つなどの工夫は必要です。
 最近、厳しい食事制限をしてきた思春期以降の患者さんに、摂食障害の人が多いことがクローズアップされています。これは、子供のころから「これはだめ、あれもだめ」と制限を続けていた反動のひとつです。すべてを規制するのではなく、どうしても食べたいのならインスリンを追加して食べるという、柔軟な考え方もときには必要です。ただし、その場合は主治医に相談してください。

Q9夜食は必ず食べさせたほうがよいのですか?
 過去に夜中に低血糖で痙攣を起こしたことがあれば、寝る前に血糖値を確認して、夜食を摂る必要があるか、そのまま寝かせても大丈夫か判断してください。血糖値がいくつ以上なら大丈夫という基準はありません。低血糖を起こさずに、しかも朝の血糖値が一番よくなる方法を、みなさん試行錯誤してみつけています。
 夜食には、血糖値をすぐに上昇させる糖分の多いものよりも、ゆっくり血糖値を上げる炭水化物(ごはんやもち)、たんぱく質や脂質が多いものがよいでしょう。そのほうが、血糖値を上げ過ぎることなく、明け方まで長時間維持できます。例えば小さなピザのようなものです。
 また、昼間の運動量が多いと、夜中に低血糖を起こす確率が高くなります。運動による血糖降下作用は、運動直後だけではないためです。ふだんは低血糖だと目が覚める子も、運動で疲労こんぱいしていると目が覚めないこともあるので、激しい運動をした日の夜は、注意が必要です。

Q10うちの子の場合、血糖値が突然高くなったり、逆に急に下がることがよくあります。なにが原因なんでしょうか?
 子どもは大人よりずっと体格が小さく筋肉が少ないので、血糖値は少量のインスリンやわずかな食事・運動量の変化にも敏感に反応します。また、お子さんのインスリンの分泌が全くなければ、発病後間もない時期の、インスリンが少しは分泌されている時期に比べて、血糖値は変動しやすくなります。とくに身体の小さな子どもでは、1単位刻みのペン型注射器では血糖コントロールがうまくいかないこともあります。その場合は0.5単位刻みで調節できるペン型注射器やシリンジを使用し、インスリンを微量調節する必要があります。主治医と相談してください。

Q11インスリン注射のときに、インスリンが漏れてしまったらどうすればいいですか?
 これは大人でもよくあることですが、1回のインスリン量が少ない子どもの場合は、血糖値への影響が大きいので注意が必要です。漏れた量を正確に把握することはできませんから、すぐにもう一度注射するのではなく、しばらく血糖値の変動に気をつけ、必要なら血糖測定をし、いつもより高いようであれば、追加してインスリンを注射します。

Q12塾がある日の食事・インスリンは、どう調節すればよいでしょうか?
 夕食が極端に遅くなるのはよくありません。4回法の場合は、塾の前に食べる量にあわせてインスリン(いつもの3分の2を食べるなら3分の2の量のインスリン)を注射して、帰宅後また食べる量にあわせてインスリンを打つとよいでしょう。夕食を食べるには早すぎる時間に塾が始まる場合は、インスリン注射はせずに、軽くおやつぐらいを食べて、帰ってきてから注射して食事をします。
 ただし、塾までの距離や時間帯などにより対応は千差万別ですので、必ず主治医に相談して決めてください。この質問に限らずすべてに共通していえることですが、糖尿病の治療の中の細かい部分には、「全員こうすべきだ」という一定の方法はありません。

Q13最近インスリンの使用量が急に増えてきました。糖尿病が悪化しているのでしょうか?
 小児期には身体の成長とともに、必要なインスリン量は増えていきます。インスリンは、ブドウ糖を体内に取り入れるのと同時に、身体の成長のためにも欠かせないホルモンですから、とくに思春期の子どもなら、インスリンの必要量が急速に増加しても、それは病気が悪化しているわけではありません。

Q14インスリンを増やすと太ると聞きましたが、本当ですか?
   インスリンが太らせるのではなく、インスリンを増やして食べる量を増やすから太るのです。インスリンを減らし、必要な量を注射しなければ、高血糖が続きブドウ糖は利用されないのでやせてきます。しかしそれはいうまでもなく、コントロールが悪い状態、病気でやせている状態です。健康的な成長のために、十分な栄養摂取と必要なだけのインスリンを注射することが大切です。

Q15血糖測定は1日何回すればよいのですか?
「1日何回」という規則はありません。小さい子は、お母さんが1日3〜4回測っているケースもありますが、大きくなってくると平均2回ぐらいのようです。
 血糖測定で注意することは、測定値に振り回されないことです。よく、高血糖だとわかったとたんに落ち込んだり怒り出す子がいます。それでは、せっかく良いコントロールを続けるためにしている血糖測定が、役に立ちません。大切なのは血糖値が高すぎるとわかった後の対応と、そうなった原因を探して、明日からのコントロールに役立てることです。また、血糖値を測ること自体が目的となってしまい、記録用紙にビッシリと記入するのも意味のないことです。
 逆にこまめに測らなければいけないのは、具合の悪いときや、症状がはっきりしないのに低血糖だと思ったとき。低血糖と思って補食を繰り返していて、確かに補食で具合は良くなるけど、あるときちゃんと測ってみたら、それほど低い血糖値ではなかった、というのは、血糖コントロールの悪い人にはよくあることです。

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