糖尿病ネットワーク

31. 痛風・高尿酸血症と糖尿病

2014年6月 改訂

他の生活習慣病もチェックし動脈硬化を

 痛風の患者さんは、さまざまな生活習慣病(高血圧、脂質異常症、耐糖障害など)の併発が多く、痛風だけを患っている人はわずか4パーセントにすぎません。これらの病気は、動脈硬化という合併症を共有しています。
 近年、こういった生活習慣病の発病には、インスリンが作用しにくくなる「インスリン抵抗性」が関係していることがわかってきて、高尿酸血症の発病にもインスリン抵抗性が関わっている可性が示されています。そしてそのインスリン抵抗性を生む大きな要因が、体質面の遺伝的要素と、文字通り「生活習慣」といえます。
 遺伝的要素は現在のところ治療手段はありません。しかし、生活習慣は患者さん次第で改善できることです。尿酸値が高いといわれた人は、痛風や腎臓障害、尿路結石に気をつけるとともに、動脈硬化の防のため、生活面を工夫して、血圧や血清脂質、血糖値も適切にコントロールしていきましょう。

痛風とは、高尿酸血症とは

▼尿酸とは
 尿酸は専門的には「プリン代謝の最終産物」と説明されます。プリン体は、細胞ひとつひとつの中の核酸、DNAやRNAの構成成分として存在しています。体内では常に細胞の新陳代謝が繰り返されていますが、そのサイクルの中で、細胞が死滅するときには核酸も分解されます。そのあと核酸を成していたプリン体は、最終的にそれ以上変化しない尿酸という物質になります。
 プリン体はまた、ATP(アデノシン三リン酸)という、高いエネルギーをもつ物質の中にも存在しています。ATP は身体活動のあらゆる場面で消費されますが、そのあと通常は再び元の状態に戻ります。しかし、無酸素運動をしたときなどは元に戻らずに尿酸になります。

尿



▼高尿酸血症とは
 尿酸値は平均で、男性 5.5mg/dL、女性 4.5mg/dLぐらいです。尿酸が血液に溶ける限度は 7.0mg/dLまでで、それ以上の濃度では、溶けきらない尿酸が結晶として、からだのいたるところに蓄積されます。このように尿酸の濃度が高い状態を、高尿酸血症と呼びます。結晶ができやすいのは腎臓や耳たぶ、手足の関節です。

 尿酸値を上昇させる要因 
 一時的な上昇 持続的な上昇 
 食事中のプリン体、
 果糖
アルコール飲用
激しい運動
脱水
ストレス
薬剤(降圧利尿薬など)
 遺伝的要因
肥満
飲酒習慣
腎機低下
ホルモンの異常  
 
▼尿酸値が高くなる理由
 尿酸値が上がる直接的な理由は、(1) 尿酸が多く作られすぎている、(2) 尿酸を排泄する力が低下している、のふたつです。
 (1) の原因としては、前に解説したプリン代謝の障害や、食物として体内に摂り入れるプリン体の量が多いといったことが該当し、(2) の原因としては尿酸を排泄する腎臓の機低下が該当します。遺伝的な体質と生活習慣的な要因が大きく関係していることがわかっています。
 高尿酸血症は圧倒的に男性が多いという(痛風では95〜99パーセント)、きわだった特徴があります。年齢別でみると、かつては50代が多かったのですが、最近では発病年齢のピークは30代と、若年化が進んでいます。
 なお、頻度としては少ないのですが、生活習慣とは全く関係なく、遺伝的なことだけで尿酸値が高くなる人もいます。また、高血圧治療薬の一種の降圧利尿薬などの服用によって尿酸値が高くなることもあります。

▼痛風とは
 高尿酸血症を放置すると、尿酸の結晶が少しずつ大きくなります。尿酸は本来からだの中ではすべて溶けていて、結晶としては存在しないものですから、それに対して白血球が貪食(細菌や異物を取り囲んで食い殺そうとする活動)を試みます。貪食された尿酸結晶は、白血球を破壊する作用があります。そのため、その箇所に炎症反応が起こり、赤く腫れて激しい痛みが自覚されます。これが痛風発作です。
 足の親指の関節に起きることが多く(最初の発作では7割)、2か所以上の関節が痛むことはあまりありません。発作が起こりやすいのは、尿酸値が急激に変動したときや生活環境に変化が生じたときです。
 発作時には、鎮痛薬やコルヒチン(白血球の動きを抑える薬)などで症状を和らげます。また、患部を冷やすと多少痛みが抑えられます。注意したいことは、発作が治まっても、それは尿酸結晶と白血球のぶつかり合いによる炎症が鎮まっただけで、尿酸値が下がったことを意味するのではないということです。痛風発作が起きる起きないにかかわらず、合併症防のため、高尿酸血症の治療継続が必要です。

▼高尿酸血症の主な合併症
腎臓障害
 尿酸の結晶が腎臓内に溜まり、腎臓の機が低下します。病気の進行とともに、尿酸を排泄する力が低下するため、ますます尿酸値が高くなるという悪循環が生じてしまいます。腎が著しく低下すると、生命維持に人工透析が必要になります。
尿路結石
 尿酸はアルカリ性で溶けやすく、酸性では溶けにくい物質です。尿酸値が高い人は尿の酸性度が強い(ph が低い)ことが多く、このため血液中のみならず、尿の中でも尿酸が結晶化しやすいのです。腎臓内や尿管・膀胱・尿道などで、尿中の尿酸結晶を核にほかの物質が集まって尿路結石が形成されます。痛風の人に尿路結石ができる率は、痛風でない人の数百倍にのぼります。
動脈硬化
 高尿酸血症の人は、高血圧や脂質異常症、糖尿病・耐糖障害を高頻度で併発しています。これらが絡み合うと動脈硬化が加速度的に進行し、心臓病や脳血管障害の危険が高くなります。最近の研究では、高尿酸血症単独でも、心臓病や脳血管障害により死亡する確率が高くなることがわかってきました。

▼治療は3ステップで
 痛風・高尿酸血症の治療は、三つに分けて考えます。
 まず第一に、痛風発作の痛みをとること。第二に高尿酸血症を治療し痛風発作を防ぎ、同時に尿路結石や腎臓障害などの合併症を防ぐこと。第三は高尿酸血症の人が併発しやすい高血圧や脂質異常症、糖尿病・耐糖障害などの生活習慣病を適切に管理・治療し、動脈硬化による心臓病や脳血管障害を防ぐことです。

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