血糖自己測定30年
血糖自己測定30年
 今から30年前、私達は若年発症の1型糖尿病を主たる対象として、インスリン注射療法によるコントロールの質を高め、長期的に血糖を良好にコントロールすることで、当時の1型糖尿病における極めて悲惨な予後の改善を目指して、血糖自己測定のトライアルを開始しました。その成果は、1977年第13回欧州糖尿病学会における「糖尿病患者教育に関するシンポジウム」の指定演題として発表することが出来、これを論文として発表した1978年以降、SMBGは世界中の糖尿病関係者の認知するところとなりました。

1型糖尿病では必須のコントロール手段
 昭和30年代から40年代、当時の1型糖尿病のインスリン注射療法は、中間型インスリン1日1回注射というのが主流であり、在宅ケアでのセルフチェックは尿糖検査に依存していました。まだHbA1Cのない時代で、血糖コントロール状態の把握は唯一受診時の空腹時血糖値でした。その結果は、罹病歴が10年を経るころから糖尿病合併症の進展がみられ、1型糖尿病の予後には暗雲が垂れ込めていました。この暗雲を取り払う手段として簡易血糖測定器(デキスター)による血糖自己測定が導入されたという訳です。

 それ以後、今日までインスリン注射療法を絶対的適応とする1型糖尿病を中心に、インスリン注射療法が必要な2型糖尿病についても、血糖自己測定は必須のコントロール手段とされてきています。この間、血糖自己測定をスタートさせて10年目の1986年、大方の予想を上回るスピードで血糖自己測定はインスリン自己注射指導料に加算する形で、健保適用を得て本年は満20年を迎えています。
インスリン非使用者における有用性と健保適用
図 インスリン非使用者にとってもSMBGは有用

Welschen LMC et al.Diabetes Care.2005;28:1510-7.
 現在、わが国の糖尿病患者は定期的に通院・加療をしている者が300万人弱と推定されています。しかし疫学調査の示すところは糖尿病の診断基準を満たす者の数は、これの2倍以上で、かつ予備軍と目される者も700万人を超えています。これらの多くがメタボリックシンドロームの中核的な存在となっていることから、これに対する適切な管理が強く求められています。

 このような中で、本年の健康保険医療の大改正に向けて日本糖尿病学会はインスリン非使用者に対する「在宅血糖自己管理指導料」の算定を第1位の要望事項として取り上げてきました。すなわち長期的に糖尿病合併症の進展阻止を達成するためには、在宅でのセルフチェックを血糖自己測定によることに優位性があるとし、その根拠となる成績の1つとして、に示すようなインスリン非使用者においても血糖と自己測定の実施は、非実施に比べて指標としたHbA1cが有意に改善(0.39%減)されていることを示しています。この0.39%減は、薬物療法による有意な効果の証拠とされる範囲に近似するもので、臨床的に意義のあるものであることは間違いないところです。

 しかし今回、厚生労働省はこのことに対して確かな理解を示したものの、インスリン非使用者への血糖自己測定健保適用は見送るという結論に至ったのは誠に残念なことと言わねばなりません。

 以上、血糖自己測定のパイロットスタディがスタートして満30年、そして血糖自己測定の健保適用から満20年という節目の年に当たり、インスリン非使用者への健保適用は見送られたとはいえ、わが国の糖尿病の大多数を占める2型糖尿病における血糖コントロール不良者への対応はより積極的になされねばなりません。これには早期のインスリン注射療法導入が、外来診療レベルで広く行なわれることが望まれ、これらの症例の血糖コントロールをより安全に、そしてより精緻に行なっていく上で、血糖自己測定は極めて有用性の高いものであることを再確認し、これのさらなる普及を強く望むものです。

2006年03月


※2012年4月からヘモグロビンA1c(HbA1c)は以前の「JDS値」に0.4を足した「NGSP値」で表わされるようになりました。過去のコンテンツの一部にはこの変更に未対応の部分があります。

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