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フレイルには運動と食事 「サルコペニア肥満」は心のケアも

 高齢者の身体機能や認知機能が低下して虚弱となった状態を「フレイル」と呼び、要介護予備群として注目されている。
 フレイルには「精神的要素」も大きく関わる。筋肉量が低下するサルコペニアと肥満が重なる「サルコペニア肥満」の人は抑うつになりやすいことが判明した。

 フレイルを早期に発見し、食事や運動など適切な対応で再び元気を取り戻し、健康寿命を延ばすことが重要だ。
フレイルの要因は3つある
「身体要素」「精神要素」「社会要素」
 「フレイル」とは、健常な状態と要介護状態(日常生活でサポートが必要な状態)の中間の状態として、日本老年医学会が2014年に提唱した。多くの高齢者は健常な状態から、筋力が衰える「サルコペニア」という状態を経て、さらに生活機能が全般に衰える「フレイル」となり、要介護状態に至る。

フレイルには3つの要因が関わっている
 東京大学高齢社会総合研究機構によると、フレイルを構成しているのは、動作が遅くなったり転倒しやすくなったりするなど「身体的要素」、認知機能の障害やうつ病などの精神や心理的な問題を含む「精神的要素」、そして独り住まいや経済的な困窮などの「社会的要素」だ。

 加齢に伴う身体機能の衰えは不可避的なものだが、適切な介入がなされれば、要介護に至ることが予防でき、健常な状態に戻すことができる。フレイルの状態を早期発見し、早期に対応することで、要介護に至るのを防ぎ、健康寿命を延ばすことができる。
社会活動に積極的に参加するとフレイルを防げる
 東京大学高齢社会総合研究機構と千葉県柏市などは、2012年から「柏スタディ」を、大規模高齢者虚弱予防研究「栄養と体の健康増進調査」として開始した。

 「柏スタディ」は14ヵ所の保健センターや近隣センターで実施されており、2,000人以上の高齢者が参加している。加齢による心身機能および社会性の低下に着目し、特にサルコペニア(筋肉減少症)の原因を解明することを目的としている。

 サルコペニアの診断基準は、(1)筋肉量の低下―両手足の筋肉量が減少する、(2)筋力の低下―握力が低下する、(3)身体能力の低下―日常の歩行速度が遅くなる、とされている。

 それに加えて、精神的にも低下している高齢者はフレイルの状態に陥りやすいことも明らかになっている

 約1,800人の高齢者を対象に食事調査を行ったところ、3度の食事を1人でとる「孤食」の人は、1日1回でも誰かと食事する人と比べ、低栄養になったり歩行速度が遅くなったりする割合も高いことが判明した。

 社会との関わりが薄れると、日々の活動量や、健康維持への意欲が低下してしまう。社会活動の低下は、体の衰弱の始まりの目安になるという。「閉じこもらない」ことが、フレイルの予防法になる。

 柏市は、地域の実情に応じて、保健センター、地域包括支援センター、訪問看護ステーション、健康づくり推進員などを活用し、課題に応じた専門職(保健師、管理栄養士、理学療法士、作業療法士など)が、対応の必要性が高い高齢者に対して相談や訪問指導などを実施することを目指している。
サルコペニアを簡単にチェックできる方法を考案
 では、サルコペニアを早期発見するにはどうしたらよいのか。高齢者の腕や脚の筋肉量、握力、歩行速度を測るのは容易ではなく、予備群を早期発見するのは難しい。そこで東京大学高齢社会総合研究機構の飯島勝矢氏らが考案したのが、「指輪っかテスト」という自己評価法だ。

 「指輪っかテスト」の方法は、両手の親指と人さし指で輪っかをつくり、ふくらはぎの最も太い部分を囲み、指のあまり具合をみるだけ。「(1)囲めない」「(2)ちょうど囲める」「(3)隙間ができる」と評価し、(3)の場合は筋肉量が少なくなっており、サルコペニアの疑いがある。

 「柏スタディ」の2,000人対象の調査から、サルコペニアを予防する上で早期発見が重要なことが示されている。「指輪っかテストは、高齢者自身が早期に気付く簡便な自己判定法として有用だ」と飯島氏は説明している。
サルコペニア 指輪っかテスト
「サルコペニア肥満」で高齢者の抑うつリスクが上昇
 サルコペニアによって、筋肉量が一定以下まで低下すると、日常生活の動作が制限されるようになり、寝たきりや転倒骨折などを起こすリスクが高まる。

 一方、肥満は糖尿病や高血圧、脂質異常症などを悪化させる原因となる。近年、サルコペニア(筋肉の減少)と、肥満(体脂肪の増加)が重なって起きる「サルコペニア肥満」が問題になっている。

 サルコペニア肥満は年齢が上がるほど増えるが、早い人は40歳代で発症するという。

 65歳以上の高齢者では、サルコペニア肥満になると抑うつをきたすリスクが高まることが、東京大学高齢社会総合研究機構の飯島勝矢氏らによる研究で明らかになった。研究の詳細は「PLOS ONE」オンライン版に発表された。

 過去の研究で、サルコペニアや肥満はそれぞれ抑うつと関連することが分かっているが、サルコペニアと肥満が合併するサルコペニア肥満についてはよく分かっていなかった。そこで、研究チームはサルコペニア肥満と抑うつリスクとの関連を横断観察研究で検討した。
フレイル予防のポイントは「運動」「栄養」「社会参加」の三位一体
 対象となったのは2012年に「柏スタディ」に参加した、自立した生活を送っている65歳以上の高齢者1,731人(男性875人、女性856人)。サルコペニアは四肢筋量、握力、歩行速度のデータをもとに判定し、肥満は体脂肪率を用いて判定した。抑うつ症状の評価には、高齢者用うつ病評価尺度(GDS)を用いた。

 その結果、対象者のうち約1割に抑うつ症状がみられた。抑うつ症状の有病率は、サルコペニアでも肥満でもない群では8.5%、サルコペニアのみの群では11.0%、肥満のみの群では11.6%だったのに比べて、サルコペニア肥満群では26.6%と大幅に高いことが判明した。

 また、サルコペニア肥満と抑うつリスクの関連は、65?74歳の高齢者で特に上昇することが分かった。

 「フレイル予防のポイントは『運動』『栄養』『社会参加』の三位一体です。加齢に伴い進むフレイルには、筋力低下など身体的な虚弱だけではなく、社会性の虚弱やこころの虚弱も大きく影響します」と、飯島氏は言う

 高齢になるにつれ若い時よりも意欲が低下し、社会と接するのがおっくうになり、社会参加が減りがちだ。ときにはうつ傾向に陥り、家に閉じこもって誰とも話をせずに暮らす高齢者も少なくない。

 そうした人は、介護予防教室だけではなく、老人会や趣味の会、働く場やボランティア活動など、さまざまな場に意識的に参加することも重要なフレイル対策になるという。
フレイルを防ぎ健康を回復するために必要なこと
 フレイルを防ぎ健康を回復するにはどうすればよいのだろうか。基本はやはり運動と食事だ。

 筋肉を増やすためには、有酸素運動が必要とされており、ウォーキングがもっとも取り入れやすい。最低でも1日5,000~6,000歩を継続すると筋力の低下を防げる。

 レジスタンス運動(筋トレ)にも筋肉量増加の効果がある。東京都健康長寿医療センター研究所によると、ジムなどでトレーナーの指導のもと筋トレを中心とした運動を行うと効果的だが、家庭でもセラバンドというゴムのバンドを用いて、安全に運動を行えるという。

 栄養状態が低下する前の食事面での早期介入も重要だ。食事では、筋肉のもととなるタンパク質の摂取がポイントとなる。高齢者では、食後に誘導される骨格筋におけるタンパク質合成が低下している。タンパク質合成を促すために、高齢者では成人以上にアミノ酸の血中濃度を上げる必要があり、十分なタンパク質を摂取する必要がある。

 日本人は平均すると、1日に70歳以上の男性は76.0g、女性は62.0gのタンパク質をとっているが、個人差が大きく、必要量を摂っていない低栄養の高齢者が少なくない。フレイルの予防を考えると、性別を問わず体重1kg当たり1gのタンパク質を毎日食事から取ることが望ましい。肉や魚、大豆、牛乳などがタンパク質を多く含む。

大規模高齢者虚弱予防研究「栄養とからだの健康増進調査」(柏スタディ)(東京大学高齢社会総合研究機構)
柏フレイル予防プロジェクト2025(柏市)
The Association between Sarcopenic Obesity and Depressive Symptoms in Older Japanese Adults(PLOS ONE 2016年9月14日)
(2016年11月)
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