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2006年11月21日

卵を食べてもコレステロール値は変わらない?

キーワード
食事療法
 「卵はコレステロールの多い食品」とよく聞くが、糖尿病患者は卵の摂取を避けたほうがいいのだろうか。
卵のコレステロール
卵のコレステロール  卵(鶏卵)は、コレステロールが多い食品の代表で、卵1個(Mサイズ:重量 58g〜64g)にコレステロールが250から270mg含まれる。

 卵は主に蛋白質を含む食品で、カルシウム、鉄分、ビタミンB群、アミノ酸など多くの栄養素も含まれている。必要な栄養素をまんべんなく摂れる優れた食品だが、コレステロールが多いので「卵は1日に1個しか食べてはいけない」などと言われることも多い。

 コレステロールは脂質の一種。血液中のコレステロールが多すぎると、動脈硬化の進行が速くなり、血管障害、心筋梗塞の原因になる。しかし、脳や神経、血管壁の細胞膜を作ったり、ホルモンの材料となる必要な栄養素なので、少なすぎてもよくない。

 日本の治療ガイドラインでは、高脂血症の患者では、コレステロールを多く含む食品を控える(1日300mg以下)ことが勧められている。悪玉コレステロールと呼ばれるLDL(低比重リポ蛋白)の値が高い高コレステロール血症の患者であると、1日の摂取量は200mg以下に制限される。

 ということは、卵1個を食べると、1日に必要なコレステロールをほぼ摂ってしまうことになる。卵以外の食品からもコレステロールを摂ることが多いので、卵を「1日1個」食べると、それだけでコレステロールの取りすぎになってしまう可能性が高い

 やはり、卵はなるべく控えた方がいいのだろうか。
 「必ずしもそうではない」という研究結果も公表されている。

卵を食べてもコレステロール値は変わらない?
 卵をほぼ毎日食べる人と、週に1〜2日しか食べない人とでは、心筋梗塞の危険性はあまり変わらないという、厚生労働省研究班による調査結果が発表された

 この調査は1990年と1993年に、岩手県、秋田県、長野県、沖縄県、茨城県、新潟県、高知県、長崎県、沖縄県、大阪府の10保健所で、40歳から69歳の男女約9万人を対象に、2001年末まで追跡して行われた。

 研究班は、食事調査を含む生活習慣に関するアンケート調査(初回調査)の結果を用いて、卵摂取頻度(ほとんど食べない、週1〜2日、週3〜4日、ほとんど毎日)によるグループ分けを行い、その後約10年間に発症した心筋梗塞のリスクを比較した。

 卵を「ほとんど毎日食べる」グループに比べ、食べる頻度の少ないグループで、心筋梗塞の発症リスクが低くなっているかどうかを調べたところ、卵を食べる回数が少なくても心筋梗塞リスクはさほど低くなかった。血液中のコレステロール値の平均もそれほど変わらなかった。

 一方で、総コレステロール値が高ければ高いほど、心筋梗塞の発症リスクが高くなることも明らかになった。心筋梗塞の予防という観点からは、総コレステロールを低く保つことが重要なことが、あらためて示された。

食事全体で調整することが重要
 コレステロールはほとんどが体内で合成されるもので、食品から直接とり入れられる量は実はそれほど多くない。しかも、コレステロール値を上昇させるのは、肉などの飽和脂肪であることが多く、卵の摂取を極端に制限することはそれほど重要ではない。

 糖尿病患者にとって卵は、特にコレステロール値が高い人では摂取を控えるよう医師に指導されることが多く、実際に卵をたくさん食べればコレステロール値が高くなることが多い。しかし卵だけが血中のコレステロールに影響するわけではない。他の食品にも気を配る必要があるようだ。

 卵以外にもコレステロールの多い食品は多く、お菓子などの加工食品ではそのことが分かりにくくなっているものがあるで、注意が必要だ。

国立がんセンターがん予防・検診研究センター 予防研究部
厚生労働省研究班による多目的コホート研究「JPHC Stydy」

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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