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2007年06月26日

子供と若者のメタボリックシンドローム IDFの新しい診断基準

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 世界150カ国以上の加盟協会で構成される国際糖尿病連合(IDF)は、子供と未成年者のメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)を早期発見するための新しい基準について発表した。世界共通の基準が打ち出すのは初めてで、25日発行の医学誌「Lancet」に掲載された。

 メタボリックシンドロームがあると、将来に2型糖尿病や心疾患を発症するリスクが高くなる。IDFの疫学・予防タスクフォースの議長で、この基準の共同作成者であるポール・ジメット教授は「糖尿病と心疾患は死亡率を高め、深刻な障害をもたらします」と警告している。
子供と未成年者のメタボリックシンドローム診断基準

 新しい基準は、質的には成人向けの基準と変わらない。主に腹囲径(ウエスト径)を測定するので、検査が簡単で行いやすい。子供の発育の差や民族によって数値が異なるので、腹囲の実測値よりも百分位数が重視される。

  • 子供を年齢層(6歳-10歳、10歳-16歳、16歳以上)で分け診断する。
  • 10歳以上の子供では、ウエスト径(腹囲を絶対値ではなく百分位*を用いる)と、2つ以上の臨床的な特徴(高中性脂肪、低HDLコレステロール、高血圧、高血糖)の有無で診断する。
  • 10歳以下の子供ではメタボリックシンドロームについての診断は必ずしも必要ないが、内臓脂肪の蓄積のある子供や親には減量を勧めたほうがよい。
 臨床的な特徴やからだの大きさは、年齢や発育、民族によって変わっていく。決定的なデータがないため、基準はIDFの成人向け基準の実際値と同じにする。HDLコレステロールは例外で、(性別ではなく)カットオフが使われる。16歳以上の子供には、IDFの成人用の基準を使うことができる。

*百分位数(パーセンタイル)は、計測値の分布を小さい方から並べパーセントで示した数値。IDF基準では、10歳以上16歳未満の肥満を、腹囲周囲径の90パーセンタイル(90th percentile)以上(より低い場合は成人のカットオフ値)で判定する。


 「毎年約400万人が糖尿病に関連し亡くなっています。糖尿病患者数は1世代のあいだに3億8,000万人に達する見込みです。このままでは、子供たちが両親より先に亡くなるかもしれない最初の世代になります」。

 子供にとって、胎内での出来事や、発育初期の数年間の環境により、肥満、前糖尿病(predispose)、メタボリックシンドロームなどを発症しやすくなっているとう。さらに、世界中で都市化が進んでいること、食事、運動量の少ない生活習慣が、子供の発症リスクを高めている。

 IDFの前会長で基準の共同作成者であるジョージ・アルバーティ教授は「メタボリックシンドロームを早期発見し適切に対策すること、特に生活習慣の改善に向けた教育を行うことが、子供と未成年者の将来の健康を守るために重要です」と話している。

 「生活習慣を改善しやすい環境づくりを各国に呼びかけます。そのために、保健、教育、スポーツ、農業などのあらゆる分野にわたって調整していくことが望まれます。これこそが2型糖尿病と心疾患の負担を減らす唯一の方法です」。

●詳しくは国際糖尿病連合(IDF)のサイトへ(英文リリース)
 IDF definition of metabolic syndrome in children and adolescents

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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