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2007年08月29日

先発薬と後発薬のどちらを選ぶ -日本医師会の発表から-

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 日本医師会は、「グランドデザイン2007―国民が安心できる最善の医療を目指して」をまとめ、29日に記者会見で発表した。

 日本では公的保険に加入し保険料を支払っていれば、窓口負担だけで医療機関を受診できる。公平で平等な医療制度が維持されており、日本人の平均寿命の向上に大きな役割を果たしたといえる。しかし、特に高齢社会を迎えた現在では、増え続ける医療費を抑えるための施策が必要とされている。

 そこで日本医師会は、今年の4月にグランドデザインの「総論」を発表し、今回は「各論」を発表した。医療費の抑制についても、より具体的な提案を含んだ内容で、後発医薬品の問題に詳しくふれている。

価格の安い後発医薬品で医療費を節減
 医療機関で処方される医薬品には、新たに開発され承認を受けた先発医薬品と、先発医薬品と成分が同じレベルで効能・効果、用法・用量も変わらないとされる後発医薬品(ジェネリック医薬品)とがある。後発医薬品の価格は先発医薬品に比べ安く、7〜4割程度が中心となっている。政府は、後発薬の利用を増やすことで医療費を節減し、患者の薬代負担を減らすことができると強調している。

 医薬品を新たに開発するためには、基礎研究、非臨床試験、第1相から3相までの臨床試験が必要で、たくさんの費用と時間が必要となる。ひとつの医薬品が治療に使われるようになるまで、数百億円の費用と、10年以上の期間が必要といわれている。後発薬の価格が安いのは、ヒトへ投与したときの安全性や有効性を調べる臨床試験が必要とされず、開発費がかからないから。後発薬は、有効成分の含有量や体内で溶け出す速度などが、先発薬と同等であることを証明すれば承認が下りる。

良質な医薬品の提供と医療費の抑制を両立したい
 しかし、現状をみると後発医薬品の利用は進んでいない。厚労省は2006年度の診療報酬改定で、処方せんに「後発医薬品への変更可」というチェック欄を設け、医師が署名や捺印をしている場合は、患者の意思を確認したうえで後発医薬品に変更できる仕組みを導入した。しかし導入後の調査によると、医師の署名などがあったのは薬局が1ヵ月に受け付けた処方せんの17.1%にすぎなかった。

 医師が後発医薬品の品質、安全性、有効性に対して不安感を抱いていることを、日本医師会は指摘している。2006年に実施した調査では、後発医薬品の「品質」について53.8%、効果について68.8%が「問題があり」と答えている。効果について問題ありとした回答の中には、「効果がないと患者さんが指摘した」、「効果がないので先発品に戻した」という意見もあった。

 日本医師会は、医師が安心して後発薬を処方するために、現在の後発薬が先発医薬品との同等性試験だけで承認されているのは不十分だとし、後発医薬品について患者自己負担の軽減につながるといった経済的メリットばかりが強調されていると指摘している。

 患者の治療に使われる医薬品は、医師が同じ成分のグループ内で、品質・効果・安全性に対する信頼がもっとも高いと判断するものを選ぶのが望ましい。そこで「各論」では、「医薬品の薬価設定(薬価収載方式)の見直し案」が提示された。見直し案では、後発薬が登場した先発薬の価格を引き下げ後発薬と同じにし、医療費の節減につなげることが提案された。

グランドデザイン2007―国民が安心できる最善の医療を目指して(日本医師会)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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