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2008年10月28日

メタボリックシンドロームで大腸癌のリスクが高まる

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 メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)のある人では大腸(結腸直腸)癌の発症リスクが75%高くなるという米国の研究報告が発表された。10月にオーランドで開催された米国消化器病学会年次集会で発表された。

 研究者らは、米国立健康統計センター(NCHS)が実施した米国の地域住民を対象とした大規模調査である「国民健康面会調査(HNIS)」の2000年〜2003年のデータを基に、メタボリックシンドロームの既往がある患者 約1200人、結腸直腸癌の既往がある患者 350人について調べた。年齢、人種、性別、肥満、喫煙、飲酒などの因子の影響を調整し解析した結果、メタボリックシンドロームのある人では大腸癌の危険が有意に高いことがあきらかになった。

 メタボリックシンドロームは、高血圧、高血糖、高コレステロールといった因子が複数重なっている状態で、耐糖能異常や脂質代謝異常につながり、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まる。癌の予後が悪化する可能性は以前から指摘されているが、大腸癌に着目した大規模研究は今回が初めてだという。

 米サウスカロライナ医科大学のDonald Garrow博士らは、大腸癌は集団検診を受けることで早期発見、治療できる疾患だとしている。「メタボリックシンドロームのある人では大腸癌の危険が目立って高くなった。大腸癌の検査のためのガイドラインに沿って検診を受けることを勧める」と言っている。

糖尿病と大腸癌
 大腸癌の予防・対策は欧米では以前より高く注目されていた。日本では以前は欧米に比べ少なかったが、現在は死亡数が増え続けている。「がんの統計 2007年版」(財団法人ががん研究振興財団)によると、2005年の部位別の癌死亡数は、大腸癌(結腸と直腸)での死亡は男性で4位、女性で1位、男女全体で3位だった。今後も大腸癌による死亡数は伸び続け、10年で患者数は倍増するともいわれている。

 大腸癌が増えた要因として挙げられるのは食習慣の変化。肉や脂肪の摂取量の増加、飲酒、野菜摂取量などが影響している。運動不足や肥満の人でも、大腸癌は増加する傾向がみられる。日本で実施した研究調査で大腸癌になりやすい人となりにくい人を比較したところ、内臓脂肪の多い人では大腸癌のリスクが増えるという結果になった。

 最近の研究では、脂肪細胞から分泌される生理活性物質である「アディポネクチン」の増減が関与していると考えられている。アディポネクチンには、細胞の炎症を抑える作用や、インスリンの働きを良くする作用がある。内臓脂肪が増えすぎると、アディポネクチンを分泌する能力が衰え、動脈硬化が進みやすくなる。

 アディポネクチンの量を増やすために有効なのは、腹囲を減らし内臓脂肪を減らすこと。アディポネクチンと癌の発症については国内外で研究が進められている。

関連情報
インスリンの過剰分泌で大腸がんリスクが3.2倍に 厚労省研究班

がんを防ぐための12ヵ条(財団法人ががん研究振興財団)
がんの統計 2007年版(財団法人ががん研究振興財団)
メタボリックシンドロームで大腸癌のリスクが高まる(米国消化器病学会・英文)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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