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2009年10月21日

世界の糖尿病人口、20年後に4億3500万人超 国際糖尿病連合

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世界糖尿病デー
 最新の国際調査によると、世界の現在の糖尿病人口は2億8500万人に増加した。2030年までに北米の人口よりも多い4億3500万人を超えると予測されている。
糖尿病とともに生きる人はいま2億8500万人
世界の糖尿病人口(2010年/2030年)
世界糖尿病アトラス-糖尿病人口は2030年までに4億3500万人を突破
IDF Diabetes Atlas 4th edition, International Diabetes Federation, 2009.
 これは160ヵ国以上の200以上の糖尿病協会などの組織が参加する国際糖尿病連合(IDF)が10月20日に発表したもので、糖尿病人口は2006年の発表から3年余りで約4000万人増加した。

 世界の成人の糖尿病有病率は7%に近づいており、もっとも高いのは米国やメキシコ、カナダなど北米地域の10.2%。次いでサウジアラビアやバーレーンなど中東地域と北アフリカ地域の9.3%と続く。糖尿病有病数のもっとも多い地域は中国や日本、韓国など西太平洋地域で、約7700万人。次いでモーリシャスやスリランカなど南東アジア地域の約5900万人と続く。

 もっとも糖尿病有病数の多い国はインド(5080万人)。以下は中国(4320万人)、米国(2680万人)、ロシア連邦(960万人)、ブラジル(760万人)、ドイツ(750万人)、パキスタン(710万人)、インドネシア(700万人)、メキシコ(680万人)と続く。

世界糖尿病アトラス-糖尿病人口は2030年までに4億3500万人を突破

IDF Diabetes Atlas 4th edition, International Diabetes Federation, 2009.

 新しい調査データによると、成人の糖尿病有病率は湾岸地域で高くなっており、ペルシャ湾岸諸国の5ヵ国が上位10ヵ国に入っている。糖尿病有病率が世界でもっとも高いのは太平洋の島国であるナウルで、成人人口のほぼ3分の1(30.9%)が糖尿病。

 IDFは糖尿病について最新の世界情勢を「糖尿病アトラス」第4版にまとめ発表する予定。「糖尿病アトラス」の専門委員長であるNigel Unwin教授は「糖尿病を診断し治療・管理・予防するための総合的な医療体制を世界的に整備することが喫急の課題となっている」と話す。

「糖尿病の教育と予防」が世界的な課題
 糖尿病は患者が自己管理を行うことが大切な病気で、治療の95%に患者自らが責任をもつ。それだけに、患者は糖尿病について練達し、適切な知識をもつことが重要となる。IDFは、世界的に糖尿病の教育プログラムを広め、糖尿病の療養指導を行う医療スタッフを増やし、糖尿病に関する教育の質を高める必要があると強調している。
  • 糖尿病が原因となり亡くなる人は世界で年間400万人に上る。
  • 糖尿病は、失明・腎不全・心臓病・脳卒中・壊疽による足切断などの主な原因となる。
  • 糖尿病は、患者だけでなく、その家族にとっても大きな負担となる。
 特に糖尿病が急増しているのは途上国で、世界の糖尿病患者の70%を占める。これらの国や地域では、糖尿病の医療体制が整備されていないだけでなく、患者と糖尿病に関する教育も十分に行われていない。

 糖尿病を管理するために、患者や家族は適切な知識にもとづき、医学的な判断を毎日行う必要がある。しかし、「世界に十分な情報を得られていない患者が数百万人いて、全く教育を受けられない患者も多い」と、IDFの糖尿病教育顧問部門(DECS)議長で上級副理事であるMarg McGill氏は話す。

 その理由は、医療費がかかる、医療機関が遠く通院できない、医療サービスがなかったりよく知らない、糖尿病の知識を得ることのメリットについて知らされていないことなどが挙げられる。

 適切な知識を得て、治療と管理を続けていれば、失明や腎臓病、心臓病、脳卒中など糖尿病合併症を予防できる。患者だけでなく、家族や地域共同体の医療負担も軽減される。McGill氏は「健康で長生きするために、健康的な食事や運動の継続、糖尿病合併症の予防、メンタルヘルス、糖尿病の検査や治療を続けることが欠かせない」と話す。

 糖尿病教育の提供は、複数の専門分野にまたがるチームで実施するのが望ましい。糖尿病患者が自分の体の状態や治療について正しい判断や対処法を知れば、可能な範囲で最善の管理をできるようになる。

 IDFはカナダのモントリオールで今年10月に開催された「第20回世界糖尿病会議」で、IDFは医療従事者と糖尿病患者向けの教育プログラムを開発し継続するガイドとなる世界規模の教育プログラムを発表した。

  • IDF糖尿病教育のための国際標準 第3版
     糖尿病患者向けの自己管理と教育を開発するための総合ガイド。世界の国や地域による保健指導や教育プログラムを作成するときの基本的な情報源となる。

  • IDF糖尿病療養指導者教育のための国際カリキュラム 第2版
     医療関係者向けに糖尿病に関する総合教育を促進し、教育プログラムの標準化を図るために作成された、科学的根拠にもとづく教育カリキュラム。臨床管理、教育、行動変容の理論と技術などをとりあげ、冊子、スライドモジュール、動画などを提供する。
 糖尿病が世界中で健康を脅かす脅威になっているのを受け、「世界糖尿病デー」が11月14日に開催される。2009年から2013年にかけての世界共通のテーマは「糖尿病の教育と予防」。IDFでは、このキャンペーンで糖尿病に対する認識を高め、世界規模で糖尿病教育を普及する必要について啓発する。

世界糖尿病連合(IDF)(英語)
IDF糖尿病教育基準(Diabetes Education Modules)(英語)

この記事は世界糖尿病連合(IDF)が10月19日、20日付で発表したプレスリリースをもとにしています。

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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