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2010年06月11日

糖尿病治療薬が一般薬局で買える「スイッチOTC」候補に 厚労省

キーワード
医薬品/インスリン
 厚生労働省医薬食品局審査管理課は7日、医療用医薬品を一般用医薬品(スイッチOTC)へ転用する候補19成分を公表した。リストにはα-グルコシダーゼ阻害薬の「ボグリボース」と「アカルボース」も加えられた。

 候補リストは日本薬学会がまとめたので、糖尿病治療薬の「ボグリボース」と「アカルボース」、ACE阻害薬の「キナプリル塩酸塩」、コレステロール抑制薬の「コレスチミド」など7成分が加えられた。

 厚労省は、5月28日に日本医学会と分科会108団体に対して候補成分リストを送付しており、8月30日までスイッチOTCへの転用について意見を聞く。11月の薬事・食品衛生審議会一般用医薬品部会で審議する。

 「ボグリボース(販売名:ベイスン)」および「アカルボース(販売名:グルコバイ)」については、臨床で安全性が確認されており、単独使用による低血糖のリスクが低く、少量を服用すれば副作用も軽いことや、スイッチOTCへ転用することで糖尿病の初期治療が可能となり、「セルフメディケーションによる症状発現と進展の予防はリスクを上回る」と強調している。

 定期健診などで耐糖能異常を指摘され、前糖尿病の状態にある人を対象に適応とすることを想定。2型糖尿病の境界型や初期では自覚症状が乏しく、健診などでも耐糖能異常を指摘され自覚することが少なく、食後高血糖を改善するために一部で健康食品やサプリメントが用いられている現状を指摘している。また、薬剤師の関与が進むことにより、末診断例の受診勧奨が促される効果も期待している。

 ボグリボースについては「OTCボグリボース販売実践ガイダンス」も公表、想定している用量・用法は「1回0.2mg、1日3回毎食直前」。アカルボースの用量・用法は「1回50mg、1日3回毎食直前」。効能・効果はともに「境界領域の食後過血糖の改善」となっている。

 ただし、「連切な販売を行なうため、薬剤師が以下の研修を受けられる環境整備も必要」とし、また、「症状の把握や副作用の早期発見と対処に関する販売実践ガイダンスが必要」としている。

一般用医薬品(スイッチOTC)への転用の条件:
  • 合併症を含む糖尿病全般にわたる病気や治療法に関する知識
  • 禁忌症、薬物問相互作用、副作用に関する注意を購入者に促すための知識と技能
  • 対象症状を予防し緩和するための生活指導に関すること
  • 繰り返し購入する人への対処方法や助言に関すること
  • 血(尿)糖自己測定器の使用方法や結果の解釈に関すること
  • セルフメディケーションプラン作成に関する知識と技能
  • かかりつけ医等への連絡・情報提供に関すること

初回販売時に確認すべき主なポイント:
 販売するかどうかの判断は、評価の結果と購入者との相談内容によって変わる。以下をチェックする。
  • 定期的健康診断等において血糖値が境界領域と指摘された人であるか。
     可能な限りその内容を証明する書面(例えば健康診断結果報告書)にて確認すること。
  • 過去に食事や運動などの日常生活習慣の改善に努めた上でも血糖値が境界領域から改善されない人であるか。
     可能な限り、その経過を示す健康手帳や記録書面で状態を確認すること。
  • 前記の「受診させるべき人」に該当しないか。
  • 特定健診・特定保健指導の対象者か。
  • 過去に医療機関に受診して糖尿病の治療を受けたことがあるか。(転帰/脱落)
  • 現在、医療機関にかかり治療を受けている何らかの疾病がないか。
  • 合併症としての高血圧症、脂質異常症、慢性肝炎、脂肪肝はないか。
  • 過去に血糖値が高めの人を対象とした特定保健用食品あるいは血糖降下を示唆するいいわゆる健康食品を使用したことがあるか。そしてその結果はどうだったか。
  • (1)糖尿病発病前、(2)糖尿病が改善した状態、(3)何らかの身体的ストレスで健常者の耐糖能が一時的に悪化したもののいずれに該当するのか。
  • 血縁者に糖尿病の人はいないか。

 今回、日本薬学会が選定した19成分は次の通り

候補成分の一覧

成分名 投与経路 備考
ボグリボース(経口) 内服 糖吸収抑制薬
アカルボース(経口)
カプトプリル(経口) 内服 降圧薬
エナラプリルマレイン酸塩(経口)
アラセプリル(経口)
デラプリル塩酸塩(経口)
シラザプリル水和物(経口)
リシノプリル水和物(経口)
ベナゼプリル塩酸塩(経口)
イミダプリル塩酸塩(経口)
テモカプリル塩酸塩(経口)
キナプリル塩酸塩(経口)
トランドラプリル(経口)
ペリンドプリルエルブミン(経口)
コレスチミド(経口) 内服 コレステロール吸収抑制薬
ドンペリドン(経口) 内服 消化管運動調整薬
ベポタスチンベシル酸塩(経口) 内服 抗アレルギー薬
オロパタジン塩酸塩(経口)
セチジリン塩酸塩(経口)

医療用医薬品の有効成分のうち一般用医薬品としても利用可能と考えられる候補成分について(厚生労働省)
医療用医薬品の有効成分の一般用医薬品への転用に係る候補成分検討報告書

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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