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2010年12月17日

看護師が糖尿病や糖尿病腎症の患者を支援 広島大発ベンチャー設立

 看護師がかかりつけ医と連携し、糖尿病や糖尿病腎症などの慢性疾患の重症化予防や、患者の生活の質(QOL)向上などをはかる事業を行う広島大学発ベンチャー「DPPヘルスパートナーズ」が12月14日に設立された。

 事業では、広島大学大学院保健学研究科の森山美知子教授(看護開発科学)の研究成果を活用し、糖尿病患者などを対象に慢性疾患の重症化・再発予防を目的とした保健指導を開始する。
糖尿病や糖尿病腎症の重症化を予防

出典:(株)データホライゾン
 糖尿病患者とその予備群の数は約2210万人。適切な治療を行わずに放置していると重症化し、失明や人口透析の原因となる。透析療法などが必要になると、患者1人当たりの年間医療費が数百万円に増加する。糖尿病合併症の進展が医療費の高額化に拍車をかけているのが現状だ。

 同社が示した重症化予防サービス事例におけるデータを10万人規模に換算したモデルケースによると、糖尿病患者のうち、糖尿病合併症がない患者(約1万7830人)の医療費は1人1年につき約5万円。軽度の腎症のある患者(1450人)の医療費は同約25万円。中等度の腎不全に進展した患者(約420人)の医療費は同約50万円。透析が必要な重度の腎不全に進展した患者(約100人)の医療費は同約500万円となっている。

 このように、糖尿病合併症が起こり進展するにつれ、医療費は高くなっていく。早期から保健指導を行い生活習慣を改善することで進展を予防すれば、医療費の抑制や患者のQOLの向上につなげられる。

 DPPヘルスパートナーズが開始する事業は、糖尿病や高血圧などの軽度から中等度の患者への保健指導を自治体などから受注し、医療機関と連携しながら保健指導を行うというもの。

    重症化予防サービスは、以下のプロセスで行われる。
  1. かかりつけ医から保険者に出されたレセプトデータの提供を受ける。
  2. 保健指導の必要な対象者の抽出(集団の特定)を行い、症状ごとに区分する「階層化」を行う。
  3. かかりつけ医の治療方針にもとづき、保健師や看護師が食事や運動などの生活習慣改善、服薬などの療養管理などを支援・指導する。
  4. かかりつけ医に指導内容を報告するともに、患者に検査データを提供する。さらにサービスの効果を判定し、医療費の適正化、重症化予防・遅延の評価(継続的な再評価)へとつなげる。

 初年度は、糖尿病と糖尿病腎症の患者を対象に、電話や面談による指導プログラムを1年間実施する。広島大学の森山教授は「看護師などが保健指導を行うことで、行動変容(セルフマネジメント)に抵抗を示す人にも柔軟に対応できる」と説明する。6ヵ月終了時点からは、2年がかりでデータ解析に入る予定。今後は心筋梗塞、脳卒中、閉塞性肺疾患など7疾患に広げる。

レセプト(診療報酬明細書)は、薬・処置・検査など患者が受けた診療について、医療機関が医療保険の運営者(保険者)に請求する医療費の明細書。

慢性疾患疾病管理事業を行う本学発ベンチャー企業設立に関する記者会見を行いました(広島大学、2010年12月17日)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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