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2011年08月19日

膵臓β細胞の糖鎖異常が糖尿病発症につながる 理研と米大の共同研究

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 理化学研究所と米カリフォルニア大学の共同研究チームは、インスリンを分泌する膵臓のβ細胞で起こっている「多分岐型糖鎖修飾」が、血糖に応じたインスリン分泌機能を保つために重要な働きをすることを解明したと発表した。

 インスリンを分泌するβ細胞表面には、血糖値を認識する蛋白質(グルコーストランスポーター)があるが、正常に機能するには細胞表面の糖鎖のグルコーストランスポーターにくっつかなければならない。

 糖鎖は糖分子が鎖状につながりあっていて、どんな細胞であるのかを周囲の細胞に伝えたり、蛋白質の機能を補ったりなど、多様な役割をもつと考えられている。この糖類が蛋白質などにくっつく反応を「糖鎖修飾」という。

 糖鎖修飾を行う酵素が欠損すると、グルコーストランスポーターが安定して働くことができず、血糖値を認識するメカニズムが損なわれる。その結果、糖尿病が引き起こされる。

 高脂肪・高エネルギーの不健康な食生活は、グルコーストランスポーターの異常につながりやすい。研究チームが脂肪を多く摂取させたマウスを調べたところ、膵臓の細胞にストレスが加わり、糖鎖が異常を起こしていた。

 こうした現象はヒトにもあてはまる。研究チームは、2型糖尿病患者の膵臓β細胞を調べ、肝臓、膵臓などの発生に必要な転写因子や、遺伝子発現調節を行う転写因子による糖鎖修飾が、β細胞の機能維持に不可欠であることも確かめた。

 さらに、マウス膵臓β細胞で、糖鎖の分岐鎖合成を決定する糖転移酵素のひとつである「GnT-IVa」を強制的に発現させると、2型糖尿病を予防できることも実証した。

 研究チームは今回の発見について、「2型糖尿病の発症の仕組みの理解や糖尿病治療につながる」と評価している。「膵臓β細胞の糖鎖修飾機能を維持することで糖尿病を予防できる」、「2型糖尿病患者のβ細胞でも、糖鎖修飾機能が低下している」と強調している。

グルコーストランスポーターの糖鎖修飾とインスリン分泌
膵臓β細胞の糖鎖異常が糖尿病発症につながる−糖鎖がインスリン分泌を決めることを初めて発見−(理化学研究所)
理研Navi
Pathway to diabetes through attenuation of pancreatic beta cell glycosylation and glucose transport
Nature Medicine, 2011, doi:10.1038/nm.2414
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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