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2012年03月28日

2型糖尿病発症にかかわる遺伝子領域を発見 理研と東大

 理化学研究所と東京大学医学部附属病院は、日本人集団を対象としたゲノムワイド関連解析を行い、日本人の2型糖尿病の発症に関わる新たな遺伝子領域「ANK1」を発見したと発表した。

 この研究は、理研ゲノム医科学研究センター内分泌・代謝疾患研究チームの前田士郎氏らと、「オーダーメイド医療実現化プロジェクト メタボリック・シンドローム関連疾患における個別化医療の実現」実施機関である東京大学大学院医学系研究科・東京大学医学部附属病院の門脇孝教授らとの共同研究チームによる成果。
2型糖尿病発症の仕組み解明へ足がかり
 「オーダーメイド医療実現化プロジェクト」は、文部科学省が主導するプロジェクトとして2003年から開始された。ヒトのDNAや血清試料、臨床情報を解析し、遺伝子の違いをもとに病気や薬の副作用の原因などをあきらかにし、新しい治療法や診断法を開発することを目的としている。

 糖尿病患者のおよそ9割を占める2型糖尿病の発症には遺伝要因が関与しており、今までに国内外の研究によって約50の関連遺伝子領域がみつかっている。しかし、多くは欧米人を対象とした解析で発見されたもので、2型糖尿病の遺伝要因の全てを説明できていない。

 日本人をはじめとした東アジア人は、欧米人に比べ軽度の肥満で2型糖尿病を発症しやすいことが知られている。人種によって2型糖尿病を引き起こす仕組みは異なり、欧米人対象の解析でみつかった遺伝子領域の中には、日本人の2型糖尿病との関連がみられないものもある。

 日本人における2型糖尿病の遺伝要因を解明するために、日本人を対象とした解析を行う必要がある。

 そこで研究チームは、病気を発症している集団と、発症していない集団との間で、遺伝子多型の頻度に差があるかどうかを統計的に検定して調べる「ゲノムワイド関連解析」という方法により、約220万個の一塩基多型(SNP)の中から病気と関連する領域・遺伝子を探し当てた。

 DNA情報(ヒトゲノム)の30億にもおよぶ塩基配列の99.9%は全人類で共通だが、0.1%程度に個人差(遺伝子多型)がある。一塩基多型(SNP)は、塩基配列のうち1ヵ所だけ異なっているもので、およそ1,000万ヵ所ある中で、一部は病気にかかりやすさに関係していると考えられている。

 研究チームは、日本人の2型糖尿病に関連する約50万個の一塩基多型(SNP)の遺伝子型をもとに、専用の遺伝子型の予測ソフトと解析ソフトを用いて、対象となるSNPを約220万個に増やし調査した。

 その結果、日本人の2型糖尿病に関連する新たな遺伝子領域「ANK1」を発見した。このANK1領域にある特定の遺伝子型を1つもつ人では、もたない人に比べて2型糖尿病発症のリスクが約1.2倍、2つもつ人では1.4倍に上昇することも分かった。

 研究成果は、英国の科学誌「Human Molecular Genetics」オンライン版に3月27日付けで発表された。

文部科学省リーディングプロジェクト オーダーメイド医療実現化プロジェクト
理化学研究所
東京大学医学部附属病院

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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