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2012年06月13日

次世代の糖尿病治療薬 SGLT2阻害薬

キーワード
医薬品/インスリン
第72回米国糖尿病学会(ADA)年次学術集会

 新しい糖尿病治療薬として「SGLT2阻害薬」の研究開発が活発化している。SGLT2阻害薬は、インスリンを介さない新しい作用メカニズムをもち、強い血糖低下作用に加え、低血糖リスクが低いことや、他の経口糖尿病薬ではみられていない体重減少作用が期待されている。


 「SGLT(ナトリウム依存性グルコース輸送担体)」とは、生体内のブドウ糖の取り込みメカニズムの一種で、細胞内外のナトリウムの濃度差を利用して、ブドウ糖を細胞内に取り込むことが知られている。

 SGLTのサブタイプとして、主に消化管、心臓、骨格筋、肝臓、肺、腎臓の近位尿細管にあるSGLT1、腎臓の尿細管にあるSGLT2などが確認されている。とくに腎臓の尿細管にある「SGLT2」は原尿中のブドウ糖を血液中に再吸収させる役割を担っている。

 腎臓は血液中の老廃物をろ過して尿として排泄するはたらきをもつ。腎臓に入った血液は、糸球体という毛細血管が集まっている器官でろ過され、尿細管を通って体に必要なものは血液に再吸収され、不必要なものは尿として体外に排泄される。

 腎糸球体でろ過された原尿には、血しょうと同じ濃度のブドウ糖が含まれているが、それをナトリウムとともにに尿細管細胞内に再吸収するのがSGLT2。糖尿病でない人の尿にブドウ糖がほとんど含まれないのは、SGLT2のはたらきで体に必要なブドウ糖が血液に再吸収され、体外に排出されずにすんでいるからだ。

 糖尿病の患者の場合は、高濃度のブドウ糖が近位尿細管へ流入するため、SGLT2がフル稼働してもなお再吸収できない部分が尿糖として尿中に排泄されている。このSGLT2による大量のブドウ糖再吸収が高血糖の要因となる。

 この生理メカニズムから、尿糖を増やせば血糖が減って、血糖が正常化すれば、膵でのインスリン分泌の負担が軽くなるのではないかということをコンセプトに、SGLT阻害剤の開発が進められてきた。

 SGLT2阻害薬の作用によって血液中に再吸収されるはずだったブドウ糖を、そのまま尿として排泄させるため、血糖値は上昇しないというわけだ。

 SGLT2阻害薬の開発は世界各国で進められており、糖尿病治療薬の新たなターゲットになっている。SGLT2阻害薬の作用によるさまざまな障害を改善することができ、さらに血糖値の低下によって疲弊した膵臓のβ細胞の負担を低下させ、分泌能力を回復させることも可能と考えられている。

 SGLT2阻害薬は、海外を含めてまだ発売されたものはない。現在、国内外で臨床試験(治験)が実施され、安全性、有効性についてより多くの症例の集積が進められている。

第72回米国糖尿病学会(ADA)年次学術集会で発表されたSGLT2阻害薬の関連情報
・ New data demonstrate sustained glucose reduction and weight loss up to 90 weeks with investigational SGLT-2 inhibitor, empagliflozin
・ New Data Show Investigational Compound Dapagliflozin Demonstrated Significant Reductions in Blood Sugar Levels When Added to Sitagliptin in Adults with Type 2 Diabetes at 24 Weeks, with Results Maintained Over 48 Weeks

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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