ニュース
2014年02月14日
冬こそ減量のチャンス 脂肪を燃焼し熱を産生する「褐色脂肪」
寒い冬の時期に、体重が増えてしまうという人は多い。その原因は、寒さによって体を動かさなくなり、運動不足におちいることだ。しかし、「寒い時期こそ運動の成果は出やすい。寒い環境では、脂肪の燃焼を促すホルモンの分泌が活発になる」という研究が発表された。
運動をすると脂肪の燃焼を促すホルモンが増える
体には大きく分けて2種類の脂肪、すなわち「白色脂肪」と「褐色脂肪」がある。白色脂肪は皮下や内臓に分布し、体内の余分なエネルギーを脂肪として蓄積する。一方、褐色脂肪は、肩から鎖骨の下や背骨の周りに分布し、脂肪を燃焼し熱を産生する働きを担っている。
褐色脂肪は、ヒトでは新生児にしか褐色脂肪がないと思われていたが、最近の研究により成人にもあることが分かり、肥満の予防や治療の観点から盛んに研究が行われるようになってきた。
褐色脂肪は、体が寒さを感じた時に、体内の栄養素を「熱」にして、体を温めてくれる働きをする。カロリーを消費してくれるので、ダイエットのためにも役立つ脂肪だ。
2012年1月に発表されたハーバード大学医学部の研究によると、運動をすることで特定のホルモンが増加し、それが脂肪を燃焼させる役割をもっている。
発見されたのは、筋肉が生成する「アイリシン」と、褐色脂肪が生成する「FGF21」というホルモンだ。これらのホルモンには、白色脂肪に対して働きかけ、褐色細胞と同じようなカロリー燃焼効果をもたせてくれたり、褐色細胞を増やす作用があることが分かってきた。
アイリシンやFGF21が作用すると、同じような食生活、同じような運動内容であっても、より効率的に燃焼が行われ、より多くのカロリーが消費されるようになる。
また、体が血糖に対してより敏感に反応するようにしてくれるため、糖尿病の予防のためにも役立つということも分かってきた。
寒さによる震えと適度な運動でカロリー燃焼が高まる
オーストラリアのガーバン医学研究所のポール リー博士ら研究チームは、寒い環境に身をおいたり、運動をすると、アイリシンとFGF21のレベルが高まることを実験で確認した。
研究チームは、健康な参加者10人を気温が12〜18度の環境において震えさせ、その震えを皮膚と筋肉の電気信号で検出するとともに、血液を採取してホルモン濃度を測定した。
アイリシンとFGF21というホルモンは、寒冷に刺激されて分泌量が増える。実験では、個人差があったが、気温が14〜16度になるとホルモンの分泌が増え、脂肪細胞が熱を産生しはじめることが確認された。
「寒さによる震えと適度な運動は、ともにカロリーを燃やす脂肪を作り出すのに効果的であることが確かめられました」と、リー博士は話す。
50gの白色脂肪細胞は300kcal以上のエネルギーを蓄えるが、褐色脂肪は1日で同量の脂肪を燃焼することができるという。そして、寒さや運動によって、大人であっても白色脂肪を褐色脂肪に変えられることも、研究で明らかになっている。
褐色脂肪の活性化を促進できれば、カロリーの燃焼がより高まり、長い間に体重を減少させることに役立つ。「冬は適度に体を寒さにさらして、褐色脂肪をきちんと働かせた方がいいのです。暖房の効いた室内にこもって、運動をしないのは逆効果です」と、リー博士は述べている。
Evidence That Shivering And Exercise May Convert White Fat To Brown(ニューサウスウェールズ大学ガーバン医学研究所 2014年2月5日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
おすすめニュースの関連記事
- 歯磨きだけでは不十分?「歯間ケア」が良好な血糖管理に関係する可能性
- 科学的データで見る「ラーメンを食べる頻度」と「健康リスク」の関係
- 糖尿病の人の熱中症を防ぐための10ヵ条 猛暑は血糖管理を悪化させる? 十分な対策を
- 糖尿病の人は「サルコペニア」にご注意 筋肉の減少にこうして対策 何歳からでも予防・改善が可能
- 全ての人に知ってほしい現代医療の必須ワード『SDMって何?』を公開
- 【1型糖尿病の最新情報】発症からインスリン枯渇までの期間を予測 より効果的な治療を期待 日本初の1型糖尿病研究
- 肥満のある人が体重を減らすと糖尿病リスクは大幅減少 中年期の体重管理は効果が高い 血糖値を下げる薬を止められる人も
- 【熱中症予防の最新情報】糖尿病のある人は暑さへの備えが必要 熱中症搬送者数を予測するサイトを公開
- 連休中は糖尿病の管理が難しい? 連休を上手に乗り切るための「8つのヒント」
- 加藤茶・綾菜夫妻が「おうち透析(腹膜透析)」について語る ヴァンティブがローンチイベントを開催

医療・健康情報グループ検索