この法律は、英国糖尿病学会(Diabetes UK)などの医療関連のチャリティーや患者団体が活動し、昨年10月に共同で立法を提出していたもので、1型糖尿病以外に喘息やてんかんなどの疾患にも適用される。 　英国糖尿病学会は「子供にとって家庭と学校が生活の大部分を占めるといっても過言ではありません。従来の制度では、1型糖尿病をもっている多くの子供が、学校で必要なケアを得られず、不健康な経験を強いられていましたが、それらの多くは回避できるものです。1型糖尿病の子供が学校の健全な活動に参加できない事態を防ぐべきです」と、コメントを発表した。

　家庭と学校は、1型糖尿病の子供にとって、医療と同じように生活の基本となる。学校には、子供の自立を促し、社会への積極的な参加をサポートする役割が求められる。インスリン注射、血糖測定、運動、食事など糖尿病の療養を行うためのセルフケア行動が、毎日の生活の中で行われる。1型糖尿病はインスリンを注射で補う治療が中心となる疾患だが、これができれば普通に生活することができ、慣れていくと生活の一部になっていく。

　治療がスムーズにできるようになり、血糖コントロールが良好に維持できるようになると、特別な制限は必要ではなくなる。血糖を上手にコントロールするために必要な日常生活の中での治療のポイントを患者が自分で見出すことが重要だが、そのためには周囲のサポートが必要となる場合もある。

　「糖尿病とともに生きる子供たちにとって、現状では学校のサポートは必ずしも十分に整備されていません。1型糖尿病は、患者だけでなく、家族にとっても負担を強いる病気です。発症して間もない子供が療養生活を続けられるように、仕事をやめてしまう親も少なくありません。しかし、適切なケアを施せば、学校生活と療養の両立は可能です」と、英国糖尿病学会の政策部長のロビン ヒューイング氏は言う。

　「学校は1型糖尿病についての適正な知識をもち、子供が必要とする医療的なニーズを理解し、安全にコンディションを管理できるようにすることが望まれます。今回の法律施行が、糖尿病の子供たちに必要なサポートを提供できる環境づくりのきっかけになると期待しています」としている。

　今回の法律施行について、シンガー・ソングライターのアメリア リリーさんがコメントを公表した。リリーさんは3歳のときに1型糖尿病と診断され、それ以降インスリン治療を続けている。

　リリーさんは、20歳のときに英国のオーディション番組「Xファクター」に出演し入選したのをきっかけに、シンガーとしてデビューした。圧倒的な歌唱力が評価され、シングルチャートで1位を獲得するなど、歌手として人気を得ている。

　「学校で給食が終わった後に、低血糖になったことがありますが、周囲には低血糖について理解している人がいませんでした。運良く同じ学校に通う従姉が低血糖の症状だと察知し、先生に医療的な対応を求めましたが、先生はどうしたら良いか分かっていませんでした。最後には救急車が呼ばれました」と、リリーさんは言う。

　「1型糖尿病の子供に私と同じ経験をして欲しくありません。しかし残念なことに、こうした経験は1型糖尿病患者にはよくあることです。学校が1型糖尿病の子供をどのようにサポートすれば良いのかを知ることが重要です。適切なサポートを得ることで、子供達は積極的な学校生活をおくることができます」。

　英国では、1型糖尿病の子供が学校生活を制限されることのないよう、適切な知識とケアを普及させるためにキャンペーンが開始された。1型糖尿病の子供とクラスメートとのコミュニケーションをスムーズにして、保護者、教師、医療者がどのような配慮が必要なのかについて、相互に連携し話し合うことが求められている。

　「糖尿病であるから、やりたいことや必要なことから阻害されるという考えは間違いです。子供の夢を実現させるために、学校には健康な成長を守る役割があります。アメリア リリーは、1型糖尿病とともに生きる子供たちにとって良いインスピレーションを与えてくれます」と、ヒューイング氏は指摘している。

New law marks landmark in school support for children with Type 1 diabetes(Diabetes UK　2014年3月13日)
Amelia Lily backs new schools support for children with diabetes(Diabetes UK　2014年9月4日)