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2015年01月16日

タトゥー型のセンサーで血糖測定 ナノテクを応用し苦痛なしの測定

 タトゥーのように肌に貼り付けるだけで血糖値を測定できるナノテクノロジーを応用したセンサーを、米サンディエゴ大学が開発した。
肌に貼り付けるだけで血糖値を測定
 米サンディエゴ大学の研究チームが開発したタトゥー型の新型センサーは、電気化学とナノテクノロジーを組み合わせることで、血糖値と相関する細胞間質液のグルコース濃度を測定するというものだ。肌に貼り付けるだけで血糖値を測定でき、血糖自己測定のように指先を何度も穿刺する必要がなく、苦痛を伴わないという利点がある。

 タトゥー型の新型センサーは試作品が開発されている段階だが、柔軟な構造になっており、肌にシールのように貼り付けるだけで作動するようになっている。カリフォルニア大学サンディエゴ校が7人の糖尿病の罹病歴がない20〜40歳のボランティアを対象に行った試験では、実際に血糖値を測定できることが確かめられた。

 サンドウィッチと清涼飲料という炭水化物の多い食事をとった後で、タトゥー型の新型センサーを使用したところ、食後の血糖値の上昇を正確にはかることができたという。

 センサーはプラス極とマイナス極に分かれており、皮膚に微弱な電流を流す仕組みになっている。皮膚の細胞間質液に弱い電流を10分間流すと、ナトリウムイオンが電極へ移動する。すると電荷のかかったイオンは酵素反応を起こし、間質液グルコースを引き寄せる。センサーが電荷を測り、それをもとにブドウ糖レベルを算出する仕組みだ。

 血糖値の測定は現在は、主に「血糖自己測定」(SBGM)によって行われている。血糖自己測定の機器は改良が重ねられ、必要な血液量の量は0.6〜1μL(1μLは1000分の1mL)と微小の機器が治療に使われており、穿刺器具はより苦痛が少なく安全なものが開発されている。しかし、自分で指先などを穿刺するのは苦痛だという患者は少なくない。

 また、血糖値を連続して測定する「持続血糖測定」(CGM)も行われているが、対応している医療機関は限られ、治療を受けられる患者は多くない。タトゥー型の新型センサーは安価に生産できるので、実現すれば、医療費の負担も減らせる可能性があるという。

 実際にタトゥー型の新型センサーを使用してみると、肌に微弱な電流が流れる10秒間は刺激を感じるが、気にならない程度だという。過去に腕時計タイプの非侵襲の血糖測定器が開発され、皮膚炎などを起こすとして販売が中止になったという経緯がある。それに比べ、新たに開発されたセンサーははるかに弱い電流を利用するので皮膚への刺激が少ない。

 将来はセンサーにブルートゥースによる通信機能を加え、測定値をスマートフォンに送信し医師などと共有できるようにする仕組みが考えられている。センサーの開発は始まったばかりで1日しか使用できないが、改良を加え精度を高めると同時に、耐久期間を延ばすことを課題としている。

 研究成果は化学誌「journal Analytical Chemistry」に2014年12月12日付けで発表された。

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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