ニュース

2015年03月17日

運動を行う時間は食後がベスト 血糖値と中性脂肪値が低下

キーワード
運動療法
 食後に運動をすると、食前に運動した場合に比べ、血糖値や中性脂肪値をより効果的に下げられることが判明した。
運動を夕食後に行うともっとも効果的
 運動は、2型糖尿病の人にとって馴染み深い治療だが、夕食の前にするか後にするかで、効果が異なることが米ミズリー大学の研究で明らかになった。運動はいつ行っても血糖コントロールを改善する効果を得られるが、食後に行うとより効果的であることが判明した。

 「運動を行うとき、運動の強さ(強度)や持続時間に注意をとられがちですが、それに加えて運動をするタイミングも重要であることが分かりました。今回の研究では、運動を夕食後に行うともっとも効果的であることが分かりました」と、ミズリー大学のジル カネリー教授(栄養・運動生理学)は言う。

 研究には肥満のある2型糖尿病患者13人が参加した。参加者は、太股の筋肉を鍛える「レッグカール」、ふくらはぎの筋肉を鍛える「カーフレイズ」、腹筋を鍛える「アブドミナルクランチ」といった筋力トレーニングに取り組んだ。

 日を変えて、▽まったく運動をしない、▽夕食前に運動を45分行う、▽夕食後に運動を45分行うという、3つの条件で運動に取り組んだもらった。

 血糖値や中性脂肪値などの上昇の程度を調べるために、「曲線下面積」(iAUC)を求める方法がある。血糖値の変動をグラフで描き、曲線(血糖値の変動)と横軸(時間軸)によって囲まれた部分の面積を比べる方法だ。

 食後に運動をすると、運動をしなかったり食前に運動した場合に比べ、中性脂肪のiAUCが92%に抑えられることが判明した。また、まったく運動しなかった場合に比べ、食後の血糖値の上昇は、食前の運動をした場合は18%、食後の運動をした場合は30%、それぞれ抑えられていた。やはり食後に運動した方が有利であることが示された。

運動をすると血糖値や中性脂肪値を下げられる
 2型糖尿病の人は、脳卒中や心筋梗塞などの心血管疾患のリスクが上昇している。主な原因は、食後に血糖値や中性脂肪値が上昇することだ。運動によりこれらを抑えることができれば、心血管疾患のリスクをより効果的に減らすことができる。

 今回の研究で、運動をしない日に比べて、食前に運動をすると血糖値を下げられるが、夕食後に運動をすると血糖値と中性脂肪の両方を下げられることが明らかになった。「毎日運動していても、あまり効果を得られない患者は、運動をする時間を変えてみると良いかもしれません」と、カネリー教授は語っている。

 ただし、参加者の血糖値と中性脂肪値の改善効果は長く続かず、次の日には元に戻っていた。効果を維持するためには、夕食後の運動を毎日続けた方が良いことが示唆された。運動の効果を最大限に活用するために、運動をするのに最適な時間は食後であるという知識は、ヘルスケアの専門家が運動処方箋をつくるときに役立つという。

 「午前中に空腹のまま運動をすると、血糖値の変動に悪影響があらわれる可能性があります。また、運動するのに最適な時間は人によって異なる可能性もあります。血糖値の日内変動を細かく調べれば、食事の何分後に運動を始めれば良いかも分かるようになるでしょう」と、カネリー教授は言う。

 今回の研究は肥満のある2型糖尿病患者を対象に行ったもので、レジスタンス運動が中心になったが、研究チームはウォーキングなどの有酸素運動を含めさまざまな条件で運動の効果を調べる予定だという。

Individuals with Type 2 Diabetes Should Exercise After Dinner(ミズリー大学 2015年2月17日)
Post-dinner resistance exercise improves postprandial risk factors more effectively than pre-dinner resistance exercise in patients with type 2 diabetes(米国生理学会 2014年12月24日)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

play_circle_filled 記事の二次利用について

このページの
TOPへ ▲