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2015年07月03日

座ったままだと糖尿病リスクが上昇 立って過ごす時間を90分増やそう

 座ったまま過ごす時間が長い人は、2型糖尿病のリスクが2倍に上昇することが明らかになった。「意識的に立って過ごす時間をつくり、1日の座位時間を1時間30分減らそう」と、米国糖尿病学会(ADA)は注意を呼びかけている。
座らないで過ごす時間を1日に90分増やそう
 米国糖尿病学会(ADA)が2015年1月に発表した新しい治療ガイドラインでは、座らないで立ったまま過ごす時間を1日に1時間30分増やすことを奨励している。

 多くの人が1日の大部分の時間を座ったまま過ごしている。1日に8〜13時間をデスクワーク、パソコンやインターネット、テレビの視聴、車の運転などの座業中心の生活に費やしている。しかし、体を動かさないで座ったまま過ごすことが、健康に対する重大な障害を引き起こすおそれのあることに、多くの人が気付いていない。

 ADAは「糖尿病をストップしよう」(Stop Diabetes)というキャンペーンを2010年に開始した。そこでは、2050年までに米国の成人の3人に1人が糖尿病を発症するというショッキングな予測をしている。

 糖尿病の問題を解決する効果的な手段のひとつは、座業時間が長くなったら、意識して椅子から立ち上がって体を動かすことだ。

 昼食時間にはウォーキングをし、手足を伸ばしてストレッチをし、休憩時間には下の階まで階段を昇降し水を飲み、通勤には車ではなく公共交通を使い、移動はなるべく徒歩や自転車で行うなど、「1日の座位時間を1時間30分減らす工夫」が必要だ。

座ったまま過ごす時間が長いと糖尿病リスクが91%上昇
 座ったまま過ごす時間が長いと糖尿病リスクが上昇するという研究結果を、トロント大学の研究チームが「米国内科学会紀要」に今年1月に発表した。

 研究チームは、糖尿病と心臓血管疾患の関連を調べた14件の研究、がんとの関連を調べた14件の研究、総死亡率との関係を調べた13研究をメタ解析した。その結果、座っている時間が長いと、健康に障害がもたらされることが明らかになった。

 座位時間が長い人は、あまり座らない人に比べ、総死亡リスクが24%、心臓発作や脳卒中などの心血管疾患による死亡リスクが18%、がんのよる死亡リスクが17%、がんの発症リスクが13%、それぞれ上昇することが分かった。

 1日の中で座ったまま過ごす時間が長いと、2型糖尿病のリスクが91%上昇することが明らかになった。座位時間が長いほど、運動レベルが低下することも判明した。

 「座ったまま過ごす時間をなるべく減らし、体を動かし運動をする時間を増やすことは重要です。1日に30分間の運動をしても、残りの23時間30分をじっとして過ごしていたら、あなたの健康状態と活力を改善するためには不十分なのです」と、トロント大学のデビッド アルター氏は言う。

座位時間を減らせば糖尿病やがんのリスクが低下
 ADAは5月6日に、全米規模で「立ち上がって、体を動かそう」(Get Fit Don't Sit)というキャンペーンを展開した。

 立ったまま過ごす時間を少しでも増やすという単純な変化を、仕事やライフスタイルで実行することで、数百万人を救うことができ、10億ドルの医療費を削減できます」と、ADAのジャネル ライト氏は述べている。

 また、英国公衆衛生局(Public Health England)の研究グループが発表した研究では、座位時間を減らすことが、2型糖尿病やがんのリスク低減につながると強調している。

 「座ったまま過ごす時間が長いと、健康を損なうリスクになることを意識するべきです」と、ロンドン大学のチェスター レスター氏らは強調している。

仕事中も立ち上がって体を動かそう
 内勤で事務作業をしている人にとっては、業務時間の65~75%を座ったまま過ごしており、うち50%を超える時間は座業中心の時間が持続するような作業で占められる。

 座位時間が長いと、肩こりや背中の痛み、首の痛みの原因になるだけでなく、運動不足が促され、血行が悪くなり心臓に負担がかかり、肥満や2型糖尿病、がんなどの深刻な病気の発症が増えるおそれがあると、研究グループは指摘している。

 こうした病気を予防するために必要なことは、単純に立ち上がって身体活動をすることだという。勤務時間の1時間以上を立位で過ごすと効果的だ。

 英国公衆衛生局の研究グループは、スタンドデスクを入れるなどして、立ったまま仕事ができるようにワークステーションのデザインを変え、休憩時間にウォーキングをして過ごすなど、オフィスの環境を整える必要があると指摘している。

 研究グループは次の点をアドバイスしている――

長時間座ったまま過ごすことが健康に悪影響をもたらすことを意識する。立ち上がってウォーキングなどの運動をする必要性についての認知を拡げる。

長時間の座位が中心の仕事に従事している労働者は、定期的に休憩をとり、ウォーキングなどの運動をするよう奨励する。

座位時間の長い人は、勤務中に立位で過ごす時間を2時間以上設け、軽いウォーキングなどの運動を挟む。デスクベースで仕事をしている人ほど、立位時間を定期的に設ける必要がある。

快適で機能的な労働環境が座位中心であるという、オフィスのデザインに関する現在の考え方を見直す必要がある。スタンドデスクを導入しやすくするなど、オフィス環境を変えることが勧められる。

喫煙や飲酒を減らしたり、栄養バランスの良い食事、ストレスの低減など、健康増進につながる生活スタイルを奨励すると同時に、職場や家庭で、じっと座ったまま過ごす時間が長いと潜在的なリスクが拡大することを広く認知させる。

American Diabetes Association: Prevent type 2 diabetes, join inaugural National "Get Fit Don't Sit(米国糖尿病学会 2015年5月4日)
Sitting for long periods increases risk of disease and death, regardless of exercise(トロント大学 2015年1月21日)
Sedentary Time and Its Association With Risk for Disease Incidence, Mortality, and Hospitalization in Adults(Annals of Internal Medicine 2015年1月20日)
The sedentary office: a growing case for change towards better health and productivity(British Journal of Sports Medicine 2015年6月1日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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