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2015年10月16日

バターや肉の脂肪は心臓に悪い 代わりに食べると良い食品が判明

 食事で飽和脂肪酸の摂取量を減らす代わりに、不飽和脂肪酸や、玄米や全粒粉を増やすと、心筋梗塞などの冠動脈疾患の発症を減らせることが、13万人近くを24年間追跡して調査した研究で明らかになった。
飽和脂肪酸を減らした分を何で補うかが課題
 バターやチーズ、赤身の肉、ベーコンやハムなど、動物性の脂に多く含まれる飽和脂肪酸は、体内で悪玉のLDLコレステロールを増やす作用がある。

 食事で飽和脂肪酸の摂取量を減らすのは心臓の健康に良いことが広く知られており、米国の調査によると、飽和脂肪酸の摂取量は1970年代に比べおよそ10%減少した。

 しかし、飽和脂肪酸を減らす食事を実行していても、減らした分のカロリーを何で補うかで、心筋梗塞などの心臓疾患のリスクが変わってくることが、ハーバード大学公衆衛生大学院が13万人近くを24年間追跡して調査した研究で明らかになった。

 多くの人は、飽和脂肪酸の摂取量を減らした代わりに、炭水化物を多く摂る傾向がある。つまり、肉や卵、チーズの代わりに、パンやパスタ、穀物のような炭水化物の多い食品を摂っているという。

 「心臓疾患を予防するために勧められるのは、多価不飽和脂肪酸や一価不飽和脂肪酸、精製されていない全粒粉などの炭水化物です」と、ハーバード大学公衆衛生大学院のフランク フー教授(栄養疫学)は言う。

●推奨される食品

野菜や果物:さまざまなビタミン、ミネラルや食物繊維が含まれており、高血圧、心臓病や脳卒中などのリスクを下げる。

全粒穀物:全粒穀物とは、全粒小麦、玄米、雑穀など、未精製の穀物のこと。精製の過程で失われる食物繊維、ビタミンやミネラルなどの栄養素を豊富に含む。

ナッツ・大豆:これらの食品に含まれる植物性タンパク質には、コレステロールの吸収を抑える働きがある。不飽和脂肪酸も豊富に含まれる。

:質の良い動物性タンパク質と、EPAやDHAなどの多価不飽和脂肪酸が多く含まれる。タンパク質と脂質をバランス良く摂ることができる。

適量の乳製品:牛乳やヨーグルト、チーズなどの乳製品には、カルシウムを多く含まれる。ただし、取り過ぎは飽和脂肪酸の過剰になるので、低脂肪や無脂肪のものを選ぶと効果的。

●推奨されない食品

精製された炭水化物:白米、白パン、小麦粉などの精製された炭水化物は血糖値を急激に増加させるので、過剰な摂取には注意が必要。

赤身肉、加工肉:赤身肉や加工肉は飽和脂肪酸を多く含む。飽和脂肪酸から摂取するカロリーは総カロリー摂取量の10%以下に抑えることが推奨される。

食塩:食塩の摂取は、1日6g未満が推奨されている。塩分控えめのだしと食材のうまみを活用する日本食は健康食と評価されている。欧米食ではハーブ、スパイスに置き換えることで使用を減らすことができる。

不飽和脂肪酸や全粒穀物を増やすと冠動脈疾患の発症リスクは低下
 研究チームは、米国で実施された大規模前向きコホート研究である「看護師健康調査」(1980~2010年)に参加した女性8万4,628人と、「医療従事者追跡調査」(1986~2010年)に参加した男性4万2,908人を対象に解析した。

 参加者は、研究開始時に糖尿病や心疾患、がんを発症していなかった。研究チームは、参加者の食生活について24~30年間にわたって4年ごとにアンケート調査を行った。

 食事に関するアンケートでは、過去1年間に食べた食品の量や種類、頻度などに加えて、調理やドレッシングに使用する食用油の種類などを尋ねた。また、血液検査を行い、コレステロール値などを調べた。

 調査期間中に7,667人が心筋梗塞などの冠動脈疾患を発症した。飽和脂肪酸の摂取量を5%減らして、その分のカロリーを他の脂肪や炭水化物に置き換えたときに、冠動脈疾患の発症リスクは低下することが判明した。

 発症リスクは、飽和脂肪酸を「多価不飽和脂肪酸」に置き換えると25%減少し、「一価不飽和脂肪酸」に置き換えると15%減少し、全粒穀物に置き換えると9%減少した。

 多価不飽和脂肪酸は、αリノレン酸、DHA(ドコサヘキサエン酸)、IPA(イコサペンタエン酸)、リノール酸などがあり、動脈硬化や血栓を防ぎ、血圧を下げるほか、LDLコレステロールを減らすなど、さまざまな作用をもっている。

 また、一価不飽和脂肪酸としてよく知られているオレイン酸はオリーブ油に多く含まれ、血液中のLDLコレステロールを下げる効果がある。

 一方で、飽和脂肪酸を白パンや白米など精製された炭水化物に置き換えた場合、発症リスクは減少しないことが判明した。

玄米や雑穀、全粒粉が勧められる理由
 ごはんやパン、イモ類などの炭水化物はブドウ糖に分解される。食事によって血中のブドウ糖が増える(血糖値が上がる)と、膵臓のβ細胞からインスリンが分泌される。インスリンの働きによって体は血糖をとり込んでエネルギーとして利用したり、蓄えたり、さらにタンパク質の合成が促される。

 精製されていない穀物は、ゆっくり消化・吸収さけ、食後の血糖値の上昇を抑える。玄米や全粒粉のパスタ、全粒粉のオートミール、野菜やフルーツは、赤身肉や卵、ベーコンばかりの食事よりも健康的だ。

 「バター以外にも、ラードやクリーム、チーズ、肉といったものにも飽和脂肪酸は含まれます。これらの食品の過剰な摂取には注意が必要です。パンや米も、精製されたものではなく全粒粉や玄米などが勧められます」と、フー教授は述べている。

Butter is not back: Limiting saturated fat still best for heart health(ハーバード大学公衆衛生大学院 2015年9月29日)
Saturated fat as compared to unsaturated fats and sources of carbohydrates in relation to risk of coronary heart disease: A prospective cohort study(Journal of the American College of Cardiology 2015年9月28日)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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