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2016年05月17日

ウォーキングで食欲を抑える 運動後に食べ過ぎないための6つの方法

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運動療法 食事療法
 ウォーキングなどの運動で汗を流した後は、食欲が増しおいしく食べられる――多くの人がこんな経験をしているだろう。しかし、運動は食欲を抑える効果の方が強いという研究が発表された。食べ過ぎを抑えるために食事と運動を上手に組み合わせると効果的だ。
運動には食欲を抑える効果がある

 運動は食欲を増進させて、減量効果を下げるのではないかと心配している人が少なくないが、それは間違いだ。むしろ運動後は食欲が抑えられ、運動をしなかった場合に比べ摂取カロリーが300kcal程度減ることが、英国のラフバラー大学の研究で明らかになった。

 「ウォーキングなどの運動を習慣として続けると、食欲を抑えられ、体重の増加を防げることが分かりました。体重を減らすために食事の摂取カロリーを減らすことを考える人が多いのですが、運動を加えた方が効果は高いことがあらためて示されました」と、英国立スポーツ運動医療センターのデイビッド ステンセル氏は言う。

 12人の女性が参加し行われた1つめの研究では、食事制限によって摂取カロリーを減らした場合と、運動によってカロリーを消費させた場合に分けて、それぞれその直後に参加者にブッフェ形式で好きなだけ食べ物を取ってもらい、食べる量に差が出るかを調べた。

 その結果、食事制限をした女性の摂取カロリーは944kcalだったのに対し運動をした女性では660kcalで、運動をした方が摂取量が減ることが分かった。

 2つめの研究には10人の男性と10人の女性が参加した、参加者は活発なウォーキングなど運動を60分間行い、7時間後にブッフェ形式の食事をした。その結果、運動量が多いほど食欲が抑えられ、摂取カロリーが減ることが明らかになった。

運動が食欲を抑えるホルモンを活発に

 研究では、ウォーキングなどの運動は食欲を強めるホルモンである「グレリン」を減らし、食欲を抑えるホルモンである「ペプチドYY」を増やすことが明らかになった。

 「グレリン」は胃などから分泌され脳の視床下部に働きかける、食欲を増進させるホルモン。胃の消化機能やエネルギー代謝に作用し、肥満や摂食障害などにも影響を与えている。「グレリン」を減らすと食欲を抑えられ、食事の量が減少できる。

 一方、腸管から分泌されるホルモンである「ペプチドYY」は、血糖や中性脂肪、体重のコントロールに重要な役割を果たしていると考えられている。「ペプチドYY」は、視床下部の受容体に作用して食欲を抑え食事の量を減らす。

 「運動の効果は運動の直後だけでなく、7時間が経った時点でも続くことが明らかになりました。この効果は男性でも女性でもみられます。今後は運動の効果をより長期的に調べる予定です」と、ステンセル氏は言う。

運動後に食べ過ぎないための6つの対策

 体重コントロールを目的に運動をしている人は多い。ダイエットに成功するためのポイントは、摂取カロリーを適正に管理し、運動による消費カロリーを増やすことだ。

 食事と運動は互いが密接に関わり合っている。米国栄養士会は、健康的な食事と運動を上手に両立させるために次のことをアドバイスしている。

1 朝食を必ず食べる

 朝食を抜くと、食欲を抑えている脳の反応に変調が起こり、結局その日の食事量が増えるという報告がある。朝食を食べることで高カロリー食品に対する欲求を抑えやすくなる。

 痩せようと思って朝食を食べないのは逆効果で、かえって太りやすくなる。朝食を抜くと体温が上昇しにくくなり運動能力も低下し、集中力が欠けてイライラしやすくなる。1日の活力を得るためにも朝食を必ず食べよう。

2 精製された穀類を減らす

 白米や白パンなどの精製された穀類を摂取すると血糖値が急激に上がりやすく、食欲を増進させる。玄米や雑穀、全粒粉など、生成されていない穀類をとると、体に消化吸収されるまでに時間がかかる。食物繊維も多く含まれるので、満腹感が持続しやすい。

3 ゆっくりよく噛んで食べる

 ゆっくり食べることで、食欲を抑えるホルモン「レプチン」が効果的に働くようになる。よく噛んでゆっくり食べると、満腹感を得やすくなり、食事の満足感が向上しやすい。「レプチン」は交感神経を活性化させて脂肪を燃やし、エネルギーの消費を促し肥満を抑制する働きもする。

 レプチンが脳にある受容体に届き満腹中枢を刺激するまでに、およそ20~30分かかる。食べるのが早いとレプチンが十分に伝わらない。ゆっくり食べることは食べ過ぎの防止につながる。

4 運動の前後に水を飲む

 運動すると汗をかき、体内の水分量が減少し脱水を起こしやすくなるので、運動の前後に水分補給をすることが重要だ。加えて、水を飲むことでダイエット効果を得られる。1日3回の食事の30分前にコップ1杯の水を飲むだけで、胃が膨れて体重コントロールをしやすくなるという研究が発表されている。

 ただし、高カロリーのスポーツ飲料などではこの効果は得られないのでご注意を。運動の前後には必ず水を1杯飲むようにしよう。

5 インターバル運動を取り入れる

 インターバル運動は「サッサカ歩き」と「ユックリ歩き」を数分間ずつ交互に繰り返すウォーキング法。筋肉に負荷をかける「サッサカ歩き」と、負荷の少ない「ユックリ歩き」を合わせることで、筋力・持久力を無理なく向上させることができる。

 インターバル運動を続けている人では、通常のトレーニングをした人よりも、食後のカロリー摂取が少ないという報告がある。低負荷の運動を取り入れることで、血中の乳酸と血糖が上昇するのを抑えられ、食欲を刺激する「グレリン」の分泌を抑えられると考えられている。

6 ウォーキングは楽しんで続けると効果的

 運動を義務と思って続けている人は、運度後に“ご褒美”として高カロリーの食品を食べがちになる。「頑張った自分にご褒美としてアイスクリームをあげよう」といった具合に。

 逆に運動を“楽しみ”と思えれば、ご褒美を欲しがらなくなるはずだ。実際にウォーキングを楽しいと思っている人ほど、間食やジャンクフードを食べる頻度が少ないという調査結果がある。

Study shows exercise DOES curb your hunger(ラフバラー大学 2016年3月7日)
6 Healthy Ways to Manage Weight for Sports(米国栄養士会 2015年9月16日)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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