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2016年07月04日

地震に備えてインスリンと水を準備 糖尿病患者はうつ対策が必要

東京女子医科大学糖尿病センター「Diabetes News No.153」
 東京女子医科大学糖尿病センターは1985年より四半期毎に「Diabetes News」を発行しています。血糖コントロール、高脂血症・肥満、腎症、神経障害、フットケア、小児・ヤング糖尿病、妊娠など多岐に及ぶテーマを取り上げています。
Diabetes News No.153 2016年7月/8月

地震などの災害に備えて インスリン製剤と水を準備
東京女子医科大学糖尿病センター センター長 内潟安子 先生

 日本全体が地震活動期に入ったといわれています。熊本地方で発生した地震では、過去の教訓をいかし、発生後に大きな問題なく医療機関へ供給できました。ともに災害対策本部を早急に立ち上げた日本糖尿病学会と日本糖尿病協会が共働してスムーズに解決し、インスリンや注射針、血糖自己測定に大きな問題は発生しなかったということです。

 地震などの災害に備えて、お薬手帳をすぐに持ち出しておくように準備することが大切です。治療薬の名前や形を携帯電話やスマートフォンに画像で保存しておくのも一案です。

 使用中の経口薬やインスリン製剤に加えて、未使用のペン型インスリン製剤などを、かばんの中に、仕事場に保管しておきましょう。インスリンポンプ使用者もペン型インスリンをいつも携帯しましょう。そして、水と注射針を準備することも必要です。

東京女子医科大学糖尿病センター「Diabetes News No.153」
糖尿病患者さんはうつ病の合併頻度が高い うつへの対策が必要
東京女子医科大学糖尿病センター 助教 石澤香野 先生
東京女子医科大学糖尿病センター 准教授 馬場園哲也 先生

 糖尿病患者さんのうつ病合併頻度は、一般人口の約2倍といわれています。東京女子医科大学糖尿病センターは2012年に、8,000人を超える糖尿病患者にご協力いただき、糖尿病診療の実態を調査する前向き研究(DIACET)を開始しました。DIACETに参加された65歳以上の糖尿病患者さんの31%が軽度から中等度以上のうつ病を合併していることが分かりました。

 高齢糖尿病患者さんのうつが重症であるほど糖尿病合併症が深刻であることが明らかになりました。糖尿病患者さんのうつの早期発見、心身の負担の軽減が重要であることが改めて示されました。糖尿病センターでは、患者さんのうつが疑われる際、迅速に適切な対応が取れるよう、当院神経精神科と連携したうつへの対策を講じています。

東京女子医科大学糖尿病センター「Diabetes News No.153」
1型糖尿病に合併する稀な肝病変 Glycogenic hepatopathy
東京女子医科大学消化器病センター 内科 准講師 小木曽智美 先生
東京女子医科大学消化器病センター 内科 教授 徳重克年 先生

 糖尿病にはしばしば肝障害を合併しますが、ほとんどは脂肪肝です。肝細胞に主に中性脂肪が蓄積して、酸化ストレスやサイトカインにより、肝障害をきたすと考えられています。

 Glycogenic hepatopathyとは、主に血糖不良の1型糖尿病に合併し、中性脂肪ではなくグリコーゲンの過剰な蓄積によっておこる肝障害であり、脂肪肝とは異なる病態です。一過性で良好な経過をたどる肝疾患で、最近経験した4例は、全員若年1型糖尿病患者さんで、急な肝酵素の上昇を認め、HbA1c12.7%と不良でした。

 画像検査では肝腫大、CT検査で肝臓が脾のCT値より上昇して白く見える“Bright Liver”を認め、これらの所見は脂肪肝によるものと明らかに異なっていました。糖尿病の中でも1型糖尿病に合併しやすい稀な肝病変ですが、血糖のコントロールをしないと反復するため、認識する必要がある疾患であると言えます。

東京女子医科大学糖尿病センター「Diabetes News No.153」

東京女子医科大学糖尿病センター
  Diabetes News No.153
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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