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2016年09月17日

1型糖尿病患者が航空機パイロットに 空でも安全に血糖コントロール

 インスリン療法を行っている1型糖尿病患者が英国ではじめて航空機のパイロットとして採用され、安全に航空機を操縦できることが実証された。
 「1型糖尿病であってもパイロットになれることがはじめて示されました。糖尿病患者を勇気付ける快挙です」と研究者は述べている。ドイツで開催されている第52回欧州糖尿病学会(EASD)で発表された。
糖尿病でも何でもできる 安全性を実証
 インスリン治療を行っている1型糖尿病のバイロットが、英国の商用航空会社の路線で航空機を操縦し、ほとんどの時間帯で血糖値を安全なレベルにコントロールできており、安全に操縦できることを証明した。詳細はドイツのミュンヘンで開催されている第52回欧州糖尿病学会(EASD)で発表された。

 英国では2012年にカナダに次いで、インスリン治療を行っている糖尿病患者が航空機の事業用操縦士(CPL)のライセンスを取得できるようになった。血糖自己測定と血糖コントロールを良好に行えることを条件として、医師の診断によりクラス1健康診断書が発行されるようになった。

 現在までにおよそ70人がCPLを取得している。今回の調査ではそのうちの26人について、実際に安全に航空機を操縦できているかを、英国のロイヤルサレイ郡病院が調査した。対象となった患者の85%が1型糖尿病で、全員が男性で平均年齢は41歳、糖尿病の治療歴の平均は8年だった。

 その結果、ほぼ2年間の観察期間に、操縦している時間帯の95%以上で、血糖値を正常にコントロールできていることが分かった。危険な低血糖や高血糖を起こさず、血糖値を90~270mg/dLの範囲内に収められることが判明した。

 「調査を始める前は、糖尿病であることで安全性が損なわれることが懸念されていましたが、実際にはパイロットは血糖値を安全にコントロールできることが実証されました。このことは、インスリンによって治療を行っている糖尿病患者は、適正な治療を行っていれば、複雑な安全管理が要求される職務をこなせることを示しています」と、同病院のジュリア ハイン氏は言う。

 「今回の調査は、全ての糖尿病患者に希望を抱かせるものです。糖尿病患者がそうでない人と同じように、あらゆる職業に就き、余暇もスポーツや趣味を楽しめるようにする社会を実現することが望まれます」と、英国糖尿病学会(Diabetes UK)は見解を公表した。

 「今回の調査は対象となった患者は全て男性で、糖尿病の治療歴も一定でした。たとえば小児期に1型糖尿病を発症した患者にも同じことがあてはまるかを確かめるために、さらに調査が必要です」と、発表の司会を務めたスウェーデンのヨーテボリ大学のソフィア グッドションスダティア教授は言う。
全ての糖尿病患者に希望を抱かせる快挙
 パイロットの資格を取得するために、英国民間航空局(CAA)医療部が求めた条件は、▽血糖コントロールが良好であること、▽低血糖に対し自覚的で、適切な対処ができること、▽血圧値が80/140mmHgにコントロールされていること、▽腎機能が正常なこと、▽治療が必要な糖尿病網膜症や神経障害などの合併症がないことなどだ。

 パイロットはフライトの2時間前、少なくとも1時間前に血糖値を測定し正常域にあることを確認し、さらにフライトの30分前にふたたび血糖値を測定することを義務付けられた。

 フライト中も1時間に1回以上、血糖測定を行った。低血糖を起こす可能性があるSU薬やグリニド系薬といった経口薬を服用しているパイロットの場合は、2時間に1回以上血糖測定を行った。

 CAAは血糖コントロールの目安として、血糖値が90~270mg/dLにコントロールされている場合は安全色である「グリーン」、72~90mg/dLの低血糖や270~360mg/dLの高血糖になっている場合は注意を要する「アンバー」、72mg/dL未満か360mg/dLを超えている場合は危険な「レッド」に分類した。

 もしも血糖コントロールが「レッド」の領域にあるなら、パイロットは航空機を操縦することができない。飛行中にレベルが「レッド」を示した場合は、糖尿病のパイロットは航空機の操縦を副操縦士に渡さなければならないことになっている。

 CAAによるとサーベイランス(調査監視)は、通常であれば12ヵ月ごとに更新されるが、糖尿病のあるパイロットについては6ヵ月こどに更新されるという。

 1型糖尿病のパイロットは、インスリンポンプやCGM(持続グルコース測定)を使うこともできる。その場合は補助として、インスリン注射とSMBG(血糖自己測定)の用意も必要となる。

Study shows UK commercial pilots with diabetes and treated with insulin can fly with no safety concerns(Diabetologia 2016年9月12日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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