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2016年12月16日
腸内デザインで血糖コントロールを改善 便をみれば腸内が分かる
腸内環境の乱れがさまざまの病気の発症に関わることが、最新の「メタボロゲノミクス」の技術で明らかになりつつある。便にはその人の健康状態を表す情報が隠されているという。腸内環境を改善するためのプロジェクトが開始された。
人の腸には100兆個の腸内細菌が生息している
人の体には多くの細菌が住みついていて、さまざまな作用をしている。体を構成する体細胞の数はおよそ37兆個なのに対し、大腸内に生息している腸内細菌の総数は100兆個にもなる。
「善玉菌」「悪玉菌」という言葉はよく知られているが、腸内環境についてはまだ分かっていないことも多い。次世代シーケンサーの登場などの影響を受け、腸内細菌全体のバランスやそこでつくられる物質に着目した研究が増えている。
「メタジェン」(山形県鶴岡市)は、慶応義塾大学先端生命科学研究所の福田真嗣特任准教授らが立ち上げた腸内細菌に関わるベンチャー企業だ。腸内環境から人の健康状態を科学的に評価する便解析システムなどを開発している。
メタジェンは、慶應義塾大学と東京工業大学とのジョイントベンチャーとして2015年に設立された。腸内細菌の最先端の研究で世界から注目されている。
「腸内エコシステム」が全身のコンディションに影響
腸内フローラの乱れが血糖コントロール悪化の原因
便には健康状態を示す情報が眠っている
福田真嗣氏らはこれまでに、腸内フローラの遺伝子地図と代謝動態に着目した「メタボロゲノミクス」を基盤とする統合オミクス解析技術を構築し、腸内フローラから産生される酢酸や酪酸が腸管感染症を予防することや、免疫応答を抑制する制御性T細胞の分化を促し、大腸炎を抑制することを明らかにしてきた。
メタジェンは、腸内エコシステムが体にどのような影響を与えるのかを、腸内環境の解析、すなわち便の分析から解明しようとしている。これまで、腸内細菌の研究は培養法を用いて細菌を単離・培養して個々の機能を調べるのが主流だったが、次世代シーケンサーの出現や質量分析計の感度の高度化により、便そのものを高い精度で解析できるようになった。
無菌マウスと呼ばれる、腸内に細菌がいないマウスに、肥満の人の腸内フローラを移植するとマウスは太り、逆にやせている人の腸内フローラを移植するとマウスは太らないことが報告されている。つまり、腸内フローラは宿主である人間の体質や健康をコントロールしているという。
「便にはその人の健康状態をあらわす情報が眠っている。この情報を抽出し、還元することができれば、人々の健康長寿に貢献できる」と、福田氏は言う。
「腸内デザイン応援プロジェクト」を始動
メタジェンは、腸内細菌叢の遺伝子情報と腸内代謝物質情報を網羅的に統合解析する独自技術「メタボロゲノミクス」を開発した。
この技術をもとに、腸内環境改善による健康維持・セルフメディケーションを提案していく「腸内デザイン応援プロジェクト」を立ち上げた。
腸内細菌叢の遺伝子情報を解析するだけでは、人の体に与える影響を理解するのは難しいので、メタボロゲノミクス技術により、腸内細菌叢由来の代謝物質の情報も含めて統合解析することが、腸内環境評価による新たな健康維持・疾患予防技術の確立につながるという。
「食習慣の改善、適切なサプリメント開発や創薬など、腸内エコシステムをコントロールするのは可能だ。"腸内デザインによる病気ゼロ社会"の実現を目指したい」と、福田氏は言う。
同プロジェクトには、江崎グリコ、サン・クロレラ、サントリー、ダイセル、日本ユニシス、はくばく、ビオフェルミン製薬、平田牧場、マルヤナギ小倉屋、森下仁丹、森永乳業、ユーグレナ、ロート製薬、CPCC、UHA味覚糖が、「腸内デザイン応援企業」として参加している。
メタジェン腸内デザイン応援プロジェクト
慶應義塾大学先端生命科学研究所
腸内フローラがインスリン抵抗性の原因 腸内細菌が炎症を起こす
腸内細菌が糖尿病リスクに影響 腸内環境が血糖値コントロールに関与
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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