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2017年03月22日
脳の「酸化ストレス」が糖尿病を引き起こす 新たな治療法の開発へ
東北大学などの研究グループは、脳の酸化ストレスが増えると2型糖尿病や肥満の発症につながるメカニズムを解明したと発表した。
酸化ストレスによる糖尿病発症の仕組み解明
ヒトは体内でエネルギーを使うときに、酸素を利用する。呼吸によって体内に取り込まれた酸素の一部は、不完全に還元され、不安定で、多くの物質と反応しやすい「活性酸素」に変化する。この活性酸素が細胞を傷つけ、老化、がん、動脈硬化、その他の多くの疾患をもたらすのが「酸化ストレス」だ。
糖尿病の患者では酸化ストレスが増加することは以前から知られていたが、詳しいメカニズムはよく分かっていなかった。
特に、脳の視床下部は代謝調節の司令塔として重要な機能を果たしており、糖尿病との関連が注目されているが、視床下部での酸化ストレスの増加については解明が難しく、十分な知見が得られていなかった。
今回の研究で、東北大学などの研究グループは、脳に酸化ストレスが蓄積すると、2型糖尿病や肥満が引き起こされるメカニズムを解明するとともに、治療へのアプローチにつながる知見を得た。
研究は、東北大学大学院医学系研究科の宇留野晃講師(医化学分野)、柳下陽子研究員(医化学分野)、山本雅之教授(医化学分野、兼東北メディカル・メガバンク機構 機構長)らの研究グループが、筑波大学医学医療系の高橋智教授らと協力して行ったもの。
脳に酸化ストレスがたまるとインスリンやレプチンの作用が減弱
研究グループは、酸化ストレスを増加させるための方法として、酸化ストレスを抑えるために重要なセレンを含有する一群のタンパク質(セレノプロテイン群)に着目した。
以前の研究で遺伝子組換えにより作出した、セレノプロテイン群合成に必須の遺伝子の発現を特異的に低下させることのできるマウスを利用した。
その結果、脳に酸化ストレスが蓄積すると、特に、全身の代謝調節に重要な視床下部領域の神経細胞数が減少し、血糖を下げるホルモンであるインスリンや、肥満を抑制するホルモンであるレプチンの作用が減弱することが判明した。
さらに、脳の酸化ストレスを抑制することで、肥満や糖尿病を防ぐことが可能であることも明らかになった。
酸化ストレスを抑制し糖尿病の悪化を防ぐ
研究グループは、酸化ストレスから体を守るために働く転写因子である「Nrf2」に着目し、酸化ストレスにさらされたマウスの視床下部領域で「Nrf2」を活性化したところ、酸化ストレスは低下し、肥満や2型糖尿病の発症を予防できた。
これらの結果から、視床下部領域で酸化ストレスが増加すると、神経細胞の細胞死が増加し、代謝調節に重要な神経が減少して、肥満や2型糖尿病を引き起すことが分かった。一方、転写因子「Nrf2」を活性化することで、視床下部領域の酸化ストレスを抑制し、肥満や糖尿病の発症が抑制できることも明らかになった。
肥満や糖尿病には複数の原因が関与すると考えられているが、酸化ストレスがどのように糖尿病の発症や悪化に関わるか詳しくわかっていなかった。今回の研究成果は脳神経細胞の保護作用を介して、肥満や糖尿病の発症や悪化を防ぐことができることを示している。
「Nrf2」を標的とした脳の酸化ストレス抑制にもとづく、新しい予防・治療方法の開発が可能になるとしている。
東北大学大学院医学系研究科 医化学分野
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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