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2017年11月02日

「炭水化物は最後まで残しておくべき」 食べる順番で血糖上昇を抑える

 「糖尿病の人は、食事でご飯やパンを最初に食べるのは待った方が良いです。食事の順序を調整し、炭水化物を最後に食べると、食後の血糖値の上昇を抑えられます」――ご飯、パン、ポテト、パスタなどの炭水化物を食べるのを最後にし、野菜や肉などから食べ始めると、食後の血糖値の上昇(血糖値スパイク)を抑えられるという研究が発表された。
食事の終わりまで炭水化物を残す食べ方
 食事でご飯やパンなどの炭水化物を摂る前に、野菜や肉などのタンパク質性の食品を摂るという簡単な方法で、食後の血糖値やインスリン値の上昇を抑えられる可能性があることが、コーネル大学医学部の研究で明らかになった。

 3大栄養素(炭水化物、タンパク質、脂肪)の中で、血糖を上昇させるのは炭水化物だ。食後の血糖値の上昇を抑えるために、玄米や全粒粉など食物繊維が豊富に含まれる精製されていない穀類を摂る方法や、炭水化物をタンパク質や脂肪と同時に摂り、炭水化物の消化・吸収を遅くする方法などが効果的だと考えられている。

 しかし、今回の研究では、食事の順序を調整するという簡単な方法で、食事で摂取する炭水化物による血糖値の上昇を抑えられることが判明した。

 「肉などのタンパク質が含まれる食品や野菜から食べ始め、食事の終わりまで炭水化物を残し、胃が空になるのを遅らせることが、血糖値スパイクを防ぐのに役立ちます。実際には、空腹時にはパンやご飯などの炭水化物から食べ始めてしまうことが多いのです。これは血糖値の変動からみると、良い食べ方とは言えません」と、コーネル大学医学部の内分泌代謝・糖尿病内科の体重コントロールセンターのアルポナ シュクラ氏は言う。

食べる順序を変えれば食後血糖上昇を抑えられる
 研究チームは、35歳~65歳の2型糖尿病患者16人を対象に、3日間にわたり食事をしてもらうランダム化比較試験を行った。食事の内容は炭水化物(パン)、タンパク質(皮なしの鶏胸肉のグリル)と野菜(レタス、トマトとキュウリ)と、3日間変わらなかったが、食べる順番を日によって変えた。

 食事で食べる順番は次の3タイプに分けられた。
・ 最初に炭水化物を摂り、10分後にタンパク質と野菜を摂る
・ 最初にタンパク質と野菜を摂り、10分後に炭水化物を摂る
・ すべての栄養素を一緒に摂る

 血糖値および血糖上昇曲線下面積(AUC)を比較したところ、血糖値の上昇やインスリン分泌をもっとも抑えられたのは、炭水化物を最後に食べた時であることが判明した。同じ栄養量の食事でも、食べる順序を変えることで食後血糖の上昇は緩やかにできることが示された。食事の最後に炭水化物を食べると、最初に炭水化物を食べた時に比べ、血糖値の上昇を53%抑えられ、インスリン分泌も25%低下した。
血糖値を下げるインクレチンの分泌を刺激
 食事の開始時にタンパク質を摂ることで、血糖値を下げるインクレチンの分泌を刺激できると考えられている。今回の実験では、食事で最初にタンパク質を摂ることで、GLP-1の分泌が上昇することも明らかになった。

 インクレチンは、食事をして糖などが吸収されると小腸から出てくるホルモンで、膵臓のβ細胞に作用してインスリンの分泌を増やす。このうちGLP-1は、血糖を上げるホルモンであるグルカゴンの分泌を抑えたり、胃の動きをゆるやかにすることで食後の血糖上昇を抑制する。

 今回の研究について英国のNHS(国民保健サービス)では、「大変に興味深い研究ですが、研究の規模が小さいので、現在の食事ガイドラインを変更するには至りません。糖尿病の食事療法の基本は、エネルギー摂取量を管理し、栄養バランスを適正に調整することです。これにより体重をコントロールでき、糖尿病の病状を改善できます」「今回の研究は2型糖尿病患者を対象としているもので、1型糖尿病にはあてはまらないことに注意する必要があります」と述べている。

People with type 2 diabetes should 'save carbs for last', study claims(NHS 2017年10月2日)
Carbohydrate-last meal pattern lowers postprandial glucose and insulin excursions in type 2 diabetes(BMJ Open Diabetes Research & Care 2017年8月14日)
Food Order Has Significant Impact on Glucose and Insulin Levels(コーネル大学医学部 2015年6月23日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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