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2017年11月17日

早食いが原因で糖尿病や肥満に よく噛んで食べるための6つの対策

 仕事などで毎日が忙しく、十分に咀嚼せず、食物を早く飲み込み、食事のスピードが速いという人は少なくない。しかし、早食いが体がもたらす影響は大きいので、注意が必要だ。早食いが原因で肥満になったり、血糖変動が大きくなり2型糖尿病を発症しやすくなる。
食事に15分以上かけることが必要
 早食いをすると肥満になりやすいのは、脳の満腹中枢が関係しているからだ。満腹中枢は、脳の視床下部にある器官のひとつで、摂取した食物に反応して体に満腹感を知らせる。

 食べ物を摂取すると血液中のブドウ糖(血糖)の量が増加し、血糖値が上昇する。満腹中枢がこれを感知し、「これ以上食べる必要ない」と体に伝える。もしも満腹中枢が正常に機能しないと、どれだけ食べても満腹感を得られなくなる。

 満腹中枢は、交感神経の中枢でもあるので、よく噛んで食べることで脳のヒスタミン神経系が活性化されると、交感神経を経由して内臓脂肪が燃焼しやすくなる。

 早食いの人は体が満腹を感じる前に、食べる量が多くなりがちになる。満腹中枢が血糖値の上昇を感知するまでに約15分かかるとされている。食べ過ぎを改善するためには、最低でも15分以上かけて食事をすることが大切だ。

早食いは糖尿病や肥満のリスクを高める
 早食いは2型糖尿病のリスクも高める。食物を摂取すると血中のブドウ糖が増え、血糖値が上昇する。すると、血糖値を抑制しようと、膵臓からインスリンが分泌される。

 早食いをすると、食後の血糖値が上昇しやすくなる。すると、膵臓は短時間で必要なインスリンを分泌しなくてはならなくなる。これにより膵臓に負担がかかり、膵臓が疲弊しやすくなる。

 その結果、インスリンの分泌量が減少したり、分泌されても十分に機能しなくなったりなどの問題が生じて、やがて血糖値をコントロールできなくなる。

 血糖値を下げるためには、インスリンが必要不可欠だが、日本人を含むアジア人は欧米人に比べ相対的にインスリンの分泌量が少ないことが知られる。糖尿病を防ぐためには、早食いに注意し、膵臓への負担を軽減するよう努めることが大切となる。
ゆっくりと食べると糖尿病リスクが低下
 ゆっくりと食べる人は、肥満になる可能性が低く、2型糖尿病、心臓病、脳卒中などの危険性を高めるメタボリックシンドローム(メタボ)を発症する可能性も低いことが、広島大学による1,000人以上を対象とした調査で明らかになった。

 この研究は、研究者と臨床医のために心臓血管医療の最新の成果が発表される米国心臓学会(AHA)の科学会議で報告された。

 メタボは、内臓脂肪の蓄積、空腹時血糖値の上昇、高血圧、高中性脂肪、低HDLコレステロールなどのリスク要因が3つ以上重なる場合に判定される。

 研究者らは、2008年にメタボと判定されなかった642人の男性と441人の女性(平均51.2歳)を対象に調査。ふだんの食事をとる速さによって、参加者を3つのグループに分けた。調査は5年間継続して行われた。

 その結果、早食いの習慣のある人がメタボを発症した割合は11.6%で、ゆっくり食べる人の2.3%、普通の人の6.5%よりも高いことが判明した。早食いは、体重の増加、血糖値の上昇、腹囲周囲径の増加と関連していることも判明した。

 「メタボリックシンドロームを予防するために、ゆっくりと食事をするよう、生活スタイルを変えていくことが大切です」と、広島大学の山路貴之氏は言う。

 「早食いをすると、満腹感を得にくくなり、食べ過ぎてしまう可能性があります。早食いをすると、血糖変動が大きくなり、インスリンの効きの悪くなるインスリン抵抗性につながるおそれがあります」と指摘している。
噛む回数を増やすための6つの対策 目標はひと口30回以上
 ゆっくり食べるために、ひと口で30回以上噛むことを目標にすると良い。ただし、ひと口食べるごとに30回数えるのは大変だ。下記の工夫をすると、自然に噛む回数を増やすことができる。

1 ひと口の量を減らす

 多くの人はひと口で噛む回数は量によって変わらないという研究結果がある。ひと口の量を減らせば、噛む回数を増やせる。

2 食事の時間に余裕をもつ

 忙しい毎日、時間に追われると、つい早食いになってしまいがちだ。食事の時間をゆっくりとれば、噛む回数を増やせる。

3 まずは噛む回数を5回増やす

 ひと口の噛む回数をいきなり30回に増やすのは大変なので、まずは5回増やしてみる。慣れてきたら少しずつ増やしていく。

4 食材は大きく、厚めに切る

 食材を一口大に切ると、飲み込める大きさになるまで噛むようになるので、自然に噛む回数も増える。みじん切りや千切りよりは、乱切りなどのように大きめに切ったほうが良い。

5 歯ごたえのある食材を選ぶ

 ゴボウやレンコンなどの根菜類や、きのこ、コンニャク、海藻類、ナッツ類(アーモンド、クルミ)など、食物繊維が豊富に含まれ、噛み応えのある食品を副菜に取り入れる。調理で野菜や肉を硬めに仕上げるのも効果がある。

6 薄味にする

 薄味にすると、食材本来の味を味わおうとして、よく噛むようになる。

Gobbling your food may harm your waistline and heart(米国心臓学会 2017年11月13日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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