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2019年08月13日

たった12週間のウォーキングで自分は変えられる 運動が糖尿病リスクを下げる

 これまでスポーツや運動をした経験がなく、運動不足が日常化している。運動する必要があることは理解しているが、実行するのは億劫だ――そんな人でも少しの工夫で、運動を効果的に続けられるという研究が発表された。
 ウォーキングなどの運動を、12週間は頑張って続ける必要がある。でもその後は、運動をすることが楽しくなり、自然に続けられるという。
たった12週間のウォーキングで自分を変える
 ロンドン大学セントジョージ医学校が実施した「PACE-UP」研究に、運動不足が習慣化している45~75歳の働き盛り世代の男女1,001人が参加した。参加者のほとんどが、研究開始時に肥満か過体重だった。

 参加者の全員に、ウォーキングや日常での身体活動を計測する活動量計(フィットネストラッカー)が渡された。参加者は無作為に2つのグループに分けられ、1つのグループは試験の開始時に運動についてのレクチャーを受け、その後の12週間は活動量計を常に持ち歩いた。

 活動量計からパソコンに、計測した毎日の歩数などをダウンロードし、それをもとにプライマリケアの医療スタッフからのアドバイスを定期的に受け取った。もう1つのグループは従来の運動指導を受けただけだった。

 「今回の試験では、活動量計を使用した介入は、たったの12週間です。その後3〜4年にわたり追跡して調査しました。驚くことに12週間の介入により、多くの人が長期的に運動習慣を変えるのに成功したのです」と、ロンドン大学セントジョージ医学校のプライマリケア研究学部のテス ハリス教授は言う。
活動量計を持ち歩くだけで行動変容が
 活動量計を持ち歩き、医療スタッフから定期的なアドバイスを受けたグループでは、多くの人が介入が終了した後も運動を続けて、その後も数年間にわたり身体活動レベルを高められたことが分かった。中強度から活発なウォーキングのレベルが数年間で30%以上昇していた。

 運動を習慣として続けることで得られる効果は絶大であることも分かった。研究の参加者がウォーキングを3~4年間続けた結果、骨粗鬆症による骨折のリスクは44%減少し、心臓発作と脳卒中のリスクは66%減少した。

 「ただ活動量計を持ち歩くだけというシンプルな方法でも、中強度のウォーキングに費やす時間を増やせることが分かりました。少しの違いとお思いになるかもしれませんが、長期的には大きな健康への影響を生みだします。運動不足を解消するために、保健指導で運動指導をもっと積極的に行うべきです」と、ハリス教授は言う。

 フィンランドで行われた糖尿病予防研究でも、ウォーキングなどの身体活動を増やすことで、2型糖尿病のリスクを58%減少できることが示された。この研究は運動療法と食事療法を組み合わせたもので、ロンドン大学の研究は運動だけでもリスクを減少できることが示された点が画期的だ。
1日1万歩にこだわる必要はない
 日本で2017年に行われたスポーツ庁の調査では、日本人が1年間に行った運動の中でもっとも多いのはウォーキングであることが示されている。ウォーキングの目標は、「1日1万歩」を達成することだとされている。

 ただし、ハリス教授は「ウォーキングの歩数にはそれほどこだわる必要はない」とアドバイスしている。

 「ウォーキングにより健康増進の効果を得るために、ポイントとなるのは強度です。運動の強度を高めて、心拍数を上げることが重要です。ウォーキングにより少し息切れがして、体温が上がるのを感じるのを目安にすると良いでしょう」と、ハリス教授は言う。

 「ほとんどの人は、10分間におよそ1,000歩のペースで歩くことで、中強度の運動を達成できます。30分間では3,000歩になります。必ずしも1日1万歩にこだわる必要はありませんが、ウォーキングをなるべく毎日行うことをお勧めします」としている。

Short-term pedometer interventions produce significant health benefits several years later(ロンドン大学セントジョージ医学校 2019年6月26日)
Effect of pedometer-based walking interventions on long-term health outcomes: Prospective 4-year follow-up of two randomised controlled trials using routine primary care data(PLOS Medicine 2019年6月25日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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