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2020年03月17日

糖尿病の人が朝食を抜くと血管硬化が進みやすくなる 朝食をしっかりとることが重要

 2型糖尿病の人が朝食を欠食すると、血管硬化が進行しやすくなることが、順天堂大学の研究で明らかになった。朝食を欠かさず摂ることで、動脈硬化を抑制できる可能性がある。
動脈硬化の抑制が糖尿病治療の課題
 研究は、順天堂大学大学院医学研究科代謝内分泌内科学の三田智也准教授、綿田裕孝教授らの研究グループによるもの。研究成果は、英国の医学誌「BMJ open Diabetes Research& Care」に掲載された。

 血管が厚く硬くなる「動脈硬化」は、心筋梗塞や脳梗塞など、命に関わる深刻な病気のリスクを高める。糖尿病の人では心血管イベントの発症が多いことが知られている。動脈硬化を予防し進展しないようにすることが、治療の課題となっている。

 研究グループは、生活習慣が血管の硬化に与える影響を明らかにするために、心血管イベントを発症していない2型糖尿病患者を対象に、さまざまな生活習慣と血管硬化の指標との関連について調査した。

 血管硬化の指標として用いたのは、「baPWV(上腕-足首脈波伝播速度)」と呼ばれるもの。

 心臓からの血液が押し出される際に生じる動脈の脈動が末梢へと伝播する波である脈波は、血管が硬いほど速く伝わる。この原理を利用して、血管の硬さを簡便に検査できるのが脈波伝播検査。両上腕、両足首に血圧測定カフ(腕帯)を巻いて、血管を流れる血液の脈動の速さ測定する。
朝食の欠食の多い人で動脈硬化の値が上昇
 研究グループは、順天堂医院などの外来に通院中で心血管イベントを発症していない2型糖尿病患者736人を対象に、質問紙などを使用して生活習慣について尋ね、研究開始時、2年後、5年後にそれぞれbaPWVを測定することで、動脈硬化との関連について解析した。

 生活習慣に関しては、朝型あるいは夜型などの生活パターン、睡眠時間、睡眠の質、うつ状態、食事のカロリー、身体活動量、飲酒量、喫煙の有無、朝食の欠食や夕食の時間などを尋ねた。

 その結果、朝食の欠食回数が多い人は、毎日朝食を摂る人に比べ、血管の硬さの指標であるbaPWV値が、5年にわたり高く出続けることが判明した。

 年齢、性別、血糖コントロールや血圧など動脈硬化の因子を調整して調べても、朝食の欠食回数はbaPWVの高値が続くことと関連していた。

朝食の欠食が多い人は生活習慣が不健康
 1週間の朝食の回数によりグループに分けて、各群の特徴を比べたところ、朝食の回数が4回未満のグループの患者では、夜型の生活パターン、睡眠の質が不良、うつ傾向、アルコールの摂取量が多い、夕食時間が遅い、中食や外食の頻度が多いなど、他の不健康な生活習慣が多くみられた。

 そうした患者では、5年にわたり、BMI(体格指数)が高く、HDL(善玉コレステロール)が低く、尿酸値が高く、さらにはbaPWVが高値であることが明らかになった。

 これらから、朝食の欠食が多い患者では、他の悪い生活習慣や動脈硬化の危険因子が集積することで、動脈硬化が進行しやすくなっている可能性があることが示された。
朝食の欠食そのものが動脈硬化に悪影響をもらたす
 さらに詳しく解析したところ、これらの因子とは独立して、朝食の欠食が多い患者では血管の硬化が続くことが分かり、朝食の欠食そのものが2型糖尿病患者の動脈硬化に悪影響をもらたすことが明らかになった。

 血管の硬化が進行し、心血管イベントを起こしてしまうと、寿命が短くなったり、生活の質が大きく損なわれることになるだけでなく。医療費の負担も増してしまう。

 日本の健常人を対象としたコホート調査では、朝食の欠食が脳卒中の増加に関連することが報告されているが、今回の研究では、心血管イベントのリスクが高い2型糖尿病患者でも、朝食の欠食が血管の硬化をさらに促進させることが示された。

 「朝食の回数が少ないほど血管の硬化が続くことがわかりました。したがって、心血管イベント発症の予防策として、朝食をしっかり摂ることが重要な可能性があります。今後は、血管イベントを引き起こす生活習慣を明らかにしたいと考えております。さらに、その生活習慣を改善させることが、動脈硬化や心血管イベントの抑制に繋がるかを検証する予定です」と、研究チームは述べている。

順天堂大学大学院医学研究科代謝内分泌内科学
Breakfast skipping is associated with persistently increased arterial stiffness in patients with type 2 diabetes(BMJ open Diabetes Research& Care 2020年2月24日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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